富山県氷見市地蔵町/6月24日に近い土曜日

氷見市は富山県西部、石川県に接する海沿いの町。獅子舞の多い富山県でも特に数多くの伝承があり、110ヶ所を越えるといいます。まさに「獅子の里」です。それぞれ独自の形式をもっていますが、基本的に胴幕に何人かの人が入る「百足獅子」、シシトリは採り物によって激しく舞う天狗というスタイルが「氷見獅子」と呼ばれます。氷見から各地へ伝承していって、広まっていったようです。

地蔵町は氷見市街地・JR氷見駅近くの古い集落で住宅地でもありますが、海にも面しています。かつて氷見の大火があったそうですが、この地蔵町のみが残されたのだといいます。

典型的な氷見系の獅子舞で、笛は縦笛、太鼓と鉦がつきます。獅子頭はかなり大きめのような感じ。歯打ちをすると特に迫力があります。印象的なのは、午後7:00頃から始まる「嫁花」では、「タルトリ」という演目があります。角樽の酒を飲み干してしまった獅子が天狗と絡みます。また町廻りが終わると、愛宕社へ移動し、ヨソブリになります。神社境内にある鳥居と拝殿の間に火を焚きます。その火と煙の中を天狗は行きつ戻りつします。相対して、獅子は鳥居のあたりにいます。それほど明るくない境内で、火の明かりと煙で包まれるあたりは幻想的な雰囲気。

そして、神社での舞のあと、団長宅へ移動します。一通りの舞が演じられたあと、「獅子殺し」となります。最初は天狗が素手で、パンチするような所作から始まりました。そしていろいろな採り物を替えて、獅子に迫っていくのです。最後、息の根をとめたあたりで、喜んで?手拍子をしながら、天狗が獅子にまたがり、担がれて団長宅内へ入っていきました。時刻は午前2:00過ぎ。

大抵この地域では、4月を中心とした春祭りや9〜10月を中心とした秋祭りに出されることが多いなかで、この地蔵町は6月。しかも祭礼は「秋季大祭」。不思議な位置づけとなっています。

◆獅子殺し
2008年6月21日、氷見市地蔵町区内