富山県魚津市小川寺/千光寺/
【火祭り】1月第4日曜日 【春祭】3月12日 【秋祭】10月12日
14:00〜16:00

 六角形の神輿が行道する

 富山県東部の魚津市小川寺は魚津市でも山手の集落です。小川寺とは地名で、祭りは千光寺観音堂と隣接する白山神社で行われる、神仏混交時代の名残を留めた祭りで、獅子舞が行われてきました。千光寺はかつて16坊あったのだそうです、天文20年(1551年)、長尾景虎の魚津城を攻めの際に13坊が焼失したといい、存続しているのは観音堂の他に心蓮坊、光学坊、蓮蔵坊の3坊であるそうです。

 獅子は二人立ち、そして天狗1人、ばば面2人、あねま面1人からなります。当地の獅子は行道系で、激しい動きの舞があるタイプではありません。獅子頭を低めに構え、左右にカクカクと振りながら進んでいきます。先導役の天狗はピョンピョンと跳ねるような振りで、手と足を同時に出すナンバで進みます。ばば面は手を前後に突き出したり戻したりして進みます。着物姿のあねま面はしずしずと進んでいきます。ばば面とあねま面は宝暦年間に実在した人物で、森木三右ヱ門、十王堂(じょうど)六兵衛の豪傑と、鬼神のお松という女傑だそうです。

 祭りは午後2:00頃、まず白山神社での神事か始まります。神職による祝詞奏上等があり、その後、午後2:30頃からは観音堂で読経が聞こえてきます。そして白山社下の神輿堂前に準備された六角の神輿に、神職が鏡を遷し、修祓を行います。午後3:00頃になると、獅子等の諸役が白山社の石段を上がってきます。その後、白山社から行列が観音堂に進みます。獅子舞とともにカラフルな旗を持つ役の後を面や獅子が賑々しく進んでいきます。

 神輿が本堂前まで進むと、舞の諸役は時計回りに観音堂周り、あるいは観音堂の回廊を4周回ります。その後、一度観音堂前に下り、神輿の脇に待機、神職の修祓を受け、再び3周します。これで全部で「七度半」回るということになります。すべて済むと、再び観音堂前で修祓、ふたたび白山社前まで移動し、そこでも修祓、拝礼を済ませ、行事がすべて終わりとなります。こうした行事は、神仏混交の祭礼には見かける独特なもののようです。 

 越中獅子の分類としては下新川獅子になるようすがで、複数の天狗が出たり、酒樽を扱うような舞ではありません。しかし舞の囃子の音楽は周辺のものと似ています。楽器は横笛の篠笛と太鼓のみですが、氷見あたりのような太鼓台はな、く大人2人が吊るした鋲留め太鼓を運び、太鼓役が歩きながら打つというスタイルです。獅子頭は小振りの二人立ち、独特な獅子あやしがつく、神仏混交の名残を示すという特徴から、他地区の獅子とは雰囲気が異なります。富山の多くが、町回りをしながら行われる青年団による花の口上、祝儀の舞、獅子殺しといったものはありません。古式をたたえた独特な獅子舞です。

2014年3月13日、魚津市小川寺千光寺観音堂境内