○ヤァー沖で見たときゃ 鬼島と見たが 来て見りゃ八丈は 情け島 (ショメーショメ)
※以下、唄ばやし省略
○ヤァーついておじゃれよ 八丈ケ島へ 荒い風にも あてやせぬ
○ヤァー黒い髪の毛 長さは背丈 可愛いあの娘は 島育ち
○ヤァー八丈八重根の バラバラ松は 誰が伐るやら 薄くなる
○ヤァー八丈女童(めならべ) 五尺の髪に 主の心が つなぎたい
○ヤァーはかばはかせん ただ殿まかせ 赤い鼻緒の 投げ草履
○ヤァー回り親様 大目に見やれ 今宵来る人 わしの夫(つま)
○ヤァー私ゃ八丈の 茅葺き屋根よ(育ち) 瓦 ( 変わら ) ないのが わしの棟
( 胸 )
○ヤァーわしの心と 底土の浜は 恋し ( 小石 ) 恋し( 小石 ) と 待つ
( 松 ) ばかり
○ヤァーわがな想いは 八幡山の 落つる木の葉の 数よりも
○ヤァー主と住むなら 乙千代ガ浜の 雨の岩屋 ( 岩の屋形 ) も いとやせぬ
○ヤァー八丈底土の バラバラ( 緑の ) 松は 枯れて落ちても 二人連れ
○ヤァー八丈島から 来いとの便り 行かざなるまい 顔見せに
○ヤァーこんな恋しい 八丈捨てて どこへなにしに おじゃるやら
○ヤァー八丈末吉 灯台あれど 恋の闇路は 照らしゃせぬ
○ヤァー沖は時化だと 鴎の便り 聞けば涙の 黄八丈
○ヤァー明日は出船か その出たあとで わたしゃアブキの 片思い
○ヤァーどうせ行くなら やらねばならぬ せめて波風 おだやかに
○ヤァー来たら寄りやれ 寄りゃぬぶりやれ ぬぶりゃその夜にゃ 泊まりやれ
○ヤァーわがな思いは 八幡山の 落つる木の葉の 数よりも
○ヤァー南風だよ 皆出ておじゃれ むかい草履の 紅緒鼻
○ヤァーなぶれ隠れに おじゃらっち様も 今じゃ足駄で 提灯で
○ヤァー雨の降る日にゃ おじゃるな様よ 下駄の跡見て 思わるる
○ヤァー東京宵出す 夜中は三宅 明けりゃ八丈の 灘を乗る
○ヤァー思い出すよじゃ 惚れよが薄い 思い出さずに 忘れずに
○ヤァーお江戸おじゃらば 口伝て頼む まめでいるよと 云うてくれ
○ヤァー木履(ぼっくり)ひん直(なぶ)して 袖ひっちかめいて お前(みゃ)はぞどうか(おじゃろか) この雨に
○ヤァー山(畑)できんぼかみゃ いも葉を御器に 桑(か)の木の小枝を 箸に折る
○ヤァー後家と鶏ゃ 死のまで泣こに 死んでから泣く 法螺の貝
○ヤァー月夜闇夜と いわずにおじゃれ いつも椿の 下は闇
○ヤァー連れて行くとて まただまされた わたしゃ底土の 捨て小舟
○ヤァーおめいやか くれ 思わぬ門に 誰かこのあしょ はこぼうし
○ヤァー五尺丈なす 緑の髪に 椿花散る 八丈島
○ヤァーなぶれかぶれに おじゃらち様が 今じゃ足駄で 提灯で
○ヤァー今の踊りの 輪になるように あなたと私も 丸くなる
○ヤァーそろたそろたよ 踊り子がそろた 秋の出穂より よくそろた
○ヤァーここで踊らば しなよく踊れ しなのよい子を 嫁にとる
○ヤァー踊る中にも あの子が一人 あの子生んだる 親見たい
○ヤァー踊りゃ音頭がら 雪駄は緒から 嫁と姑は 心がら
○ヤァー月見ょ楽しめ 勉強しやれ ぜんえみ稲葉で 会うように
○ヤァー下駄と草履は 鼻緒がら 沖の白波ゃ 風ゆえに
○ヤァー去年おととしゃ おどらっち様も 今年ゃ灯籠の ふさとなる
○ヤァー盆の十三日が 二度来るならば 親の墓場へ 二度参る
○ヤァー月とどうしの 約束だろが 月は早出て 松のかげ
○ヤァーちょいとしょめ節ゃ かしかみそらで 雨も降ろじゃな ショボショボと
【字余り】
○ヤァー奥山の 滝に打たれる あの岩(ゆわ)でさえ いつ掘れるともなく 深くなる
○ヤァー竹の一本橋ゃ 細くて長くて しなしなしのうて 危ないけれど 様と渡るにゃ 怖くない
【二段節】
○ヤァー筆を柱に 硯を船に 書いた文をば 帆に巻き上げて 実と誠を 荷物に積んで
愛の港へ そよそよと
○ヤァー奥山で 一人米搗く あの水車 誰を待つやら ただくるくると 来ぬか来ぬかで 苦労はすれど
やがて世に出て ままとなる
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