〜岡山県笠岡市北木島〜

北木島は岡山県笠岡市に属します。笠岡港から南へ15kmの笠岡諸島の中の最大の島です。
北木島と言えば「北木石」と呼ばれる花崗岩の産地であり、島全体が「石の島」であるといいます。そして大阪城の石垣、東京・靖国神社の大鳥居や大灯籠、日銀本店、そして明治40年に作られた日本橋など、北木石があちこちの有名な建造物に使用されているのだそうです。

かつて石屋職人を志す人々は、小僧修業を積み、「職人」「棟梁」と上がっていき、更に「親方」を目指したといいます。また作業を効率よく進めるための「石切唄」を上手に歌える職人には賃金が割増されたという話もあるそうです。そして切り出された「北木石」は船に積まれて、各地へ運搬されたのでした。

そうした丁場(=採石場)での作業唄がこの「石切唄」です。
こうした石切り作業の唄は、北木島を中心に瀬戸内島嶼地域には伝承されていたものといいます。

「石切唄」は2種類。まず石を切り出す「硝煙穴」=「ハッパ穴」を空けるための作業が、前仕事として行われますが、その時に歌われたのが「玄能(げんのう)節」とか「ハッパ大割節」という唄です。
そして「ハッパ」で割った石を更に鑿(ノミ)で小さく割る時には、「小割節(唄)」という唄が歌われました。

今では昔ながらの石切作業は見られません。そしてこの「石切唄」も幻になりつつあるようです。

わたくしがかつてテレビで見た民謡番組で、この「北木島石切唄」を昔ながらの作業で歌う様子を見ました。そしてその唄は、大変威勢良く、しかも鑿を打つ玄能のリズムに合わせた、景気のよい唄でした。

現在、わたくしの手元には「石切唄」の音源は、その時のテレビ番組での録音しかありません。地元発信の「石切唄」音源はあるのでしょうか。
北木島の石文化とも言える「石切唄」はぜひ残されていかれることを望みます。