〜秋田県雄勝郡羽後町〜
◆秋田県羽後町観光物産協会パンフレット◆

秋田県も山形県に近い県南の雄勝郡羽後町西馬音内(にしもない)に古くから伝わる盆踊り唄。
起源は、正応年間(1288〜93)に修行僧・源親が蔵王権現を勧請したときに、境内で始められた「豊年踊り」という説が知られます。また、慶長6年(1601)に滅びた、西馬音内城主・小野寺茂道一族の家臣達が、主君を偲んで踊った盆供養の踊りであるといい、旧盆に宝泉寺境内で行われた「亡者踊り」と前述の「豊年踊り」が合流したものともいいます。

現在は、毎年8月14〜16日の3日間、本町通りで行われています。


この盆踊りは、鳥追いのような編笠や「彦三(ひこさ)頭巾」を被って踊る姿でよく知られています。
特に「彦三頭巾」は覆面で、黒布で顔をすっぽり覆い、目の部分を開けて、手拭いで鉢巻をしますが、その姿は亡霊をなぞったとも言われるように、幻想的な雰囲気を醸し出しています。

また忘れられないのが「端縫い衣装」。女性の踊り手が着るもので、4〜5種類の絹布を端縫ったものです。この端縫いと編笠の装束で踊られる姿は、独特の美しさがあります。

盆踊りは芸能の分類では「風流」であり、いろいろな扮装をして踊られるものでした。この「彦三頭巾」や「端縫い衣装」は、古風な盆踊りの「扮装踊り」の一つと考えられます。

ここの盆踊りの囃子としては《寄せ太鼓》《音頭》《とり音頭》《願化(がんけ)》の4種類があります。使われる楽器は、篠笛、太鼓、鉦、鼓、三味線で、踊りの当日は、会場の櫓の上で奏されます。


中でも《音頭》と《願化》には、唄が着きます。

《音頭》は有名な《秋田音頭》と同様の曲で、音程のない「地口」です。冒頭に「ヤートーセ」から始まり、ほのぼのとした歌詞、おおらかな歌詞、艶やかな歌詞などが続きます。いわゆるステージの「秋田音頭とは若干リズム感が異なり、幾分緩やかなスィング感のある囃子にのって、「地口」が語られていきます。

《願化》は《甚句》ともいい、大変美しいメロディです。唄の感じは、秋田に数多く残る「甚句」と同系統かと思われます。7775調の近代歌謡形式ではありますが、下の句の最後の5句の前には「ササ」が挿入されるあたりも、秋田の甚句の特徴と思われます。

わたくし、まだ本物を見る機会がありません。独特な雰囲気を醸し出している西馬音内の盆踊りは、近年人気が高く、大混雑するとのこと。地元の大切な信仰に支えられていることを忘れないように、見学したいものです。

◆西馬音内踊りの紹介や踊りグッズの販売はから。編笠や彦三頭巾も買えます。