〜富山県黒部市生地〜
 《しばんば》の歌碑(黒部市新治神社境内)

富山県の東部・黒部市生地は名水の里として知られています。かつて新治(にいはる)村という村がありましたが、1185年に発生した「文治地震」の大津波によって、村が流されたという伝説があります。その後、1262年に村の再興を図り、海中に沈んだ八幡宮(新治神社)を復興したそうです。そして、付近一帯は、新たに生まれた町という意味で生地という地名となったのだそうです。

《しばんば》の踊り(富山県民謡民舞大会より)

その生地で盆踊り唄として伝わってきたのが《しばんば》です。「しばんば」の意味はよく分かりませんが、燃料の柴を刈り運ぶ仕事のことで、柴を刈る老女のことであると言われています。また、新川木綿の糸繰りの唄としても歌われていたといいますにおで、もとは仕事唄であったのでしょうか。

歌詞は基本的に甚句調の7775調ですが、唄ばやしやリフレイン、独特な返し方をします。

○私ゃ生地の 荒磯育ち 女波男波に 群れて咲く

とい歌詞でも、実際には、
○イヤーエ私ゃ生地の (ヨーイヨイト) 荒磯育ち(ドッコイドッコイ)
  女波男波に群れて(ドッコイドッコイ) 群れて咲くイヤー


と歌われます。

この唄の源流はよく分からず、同系の曲は見つかってないようです。生地地区周辺の地区でも同様な盆踊り唄は歌われていません。とても独特な曲で、生地ならではの唄なのでしょう。また、音階的に大変に特徴的な感じがします。いわゆる民謡音階ではなく、四七抜き音階(呂音階変種?)に聞こえ、古調の印象を感じさせます。

素朴な唄というよりも古風をたたえた盆踊り唄という印象です。個人的にもお気に入りの北陸民謡の1曲です。