〜長野県諏訪市/諏訪郡下諏訪町〜
◆諏訪大社春宮一之御柱◆
◆諏訪大社本宮一之御柱◆

天下の奇祭「御柱祭」は、大規模なまつり内容、豪快な行事の数々で知られます。そのまつりに欠かせない唄として、諏訪の人々に歌われてきたのが、この「木遣り唄」です。

 
◆木落とし坂◆ 
◆長持ち行列◆

諏訪大社は、諏訪湖を挟んで南部の諏訪市に上社・本宮、茅野市に上社前宮、北部の下諏訪町に下社春宮、秋宮に分かれ、4社からなっています。これらを総称して、信濃国一之宮諏訪大社といいます。

御柱祭は、信州・諏訪の地に鎮座する諏訪大社の「式年造営御柱大祭」といます。式年は寅年と申年で、7年目に1度=6年間に1度行われてきました。
式年だけでなく、そのための準備のためのまつりがいくつか続きます。

その起源ははっきりしません。4本の柱を建てるということで、四方を鎮護する神を象り、国家鎮護のためとか、東西南北の国堅めとか、風雨鎮祭とか、
御柱そのものを御神体とするとか、本殿のない諏訪大社の社殿の替わりにするとか…。

いずれにしても不思議なまつりであるとは思います。

御柱祭で歌われる木遣りとは、木を曳くときに威勢よく歌われ、曳き手の気持を統一するような役割を果たしてきました。よく知られたものには《江戸木遣り》があります。ただ、諏訪の木遣りは、江戸木遣りとはかなりおもむきがちがいます。

非常に高い声で歌われるのは、木遣りの特徴でしょうが、それにしても高音です。なお、諏訪の木遣りは「歌う」ではなく「鳴く」といいます。そもそも、大木を動かすための合図という意味合いがあるとも聞きますが、歌唱というよりは器楽的な音楽ともいえると思います。世界の民族音楽では、やはり合図のために高音で発声するものがあると聞いたことがありますので、案外こうした特徴と共通するのでしょうか。また、現在の祭りでは、消防による進軍ラッパが吹奏されますが、意外と同じような意図があるのでは?と勝手に想像します。

こうしてみていくと「木遣り」を民謡に分類できるのだろうかとも思います。神聖な御柱を動かすところで歌われるこの音楽は、酒盛り唄とはちがうのでしょう。しかし、この木遣りは御柱祭だけでなく、諏訪地方の数々の祭でも行われます。また、酒席でも「鳴く」ことはあります。いずれにしても、諏訪の人たちにはなくてはならないものであることは事実だと思います。

一方、メロディを聴くと、日本民謡の旋律の動きとは異なります。いわゆる民謡音階ではなく、独特な旋律ラインであると思います。そもそも諏訪の神は、出雲の神との関係が語られるほど、出雲との関係があるのは知られていますが、御柱祭と似たまつりがアジア大陸にもあるといいますので、この木遣りも案外大陸とのつながりがないかどうか…などと古代ロマンとともに妄想しています。

信州では諏訪の4社で盛大に行われるものがよく知られていますが、県内各地の諏訪神を祭る神社では大小様々な御柱祭が行われます。ただわたくし、諏訪の御柱祭は未体験です…。