〜愛媛県宇和島市〜
◆宇和島城

四国でも九州に近く宇和海に面したところ、愛媛県宇和島市に伝承される民謡が《宇和島さんさ》です。

格調高く、またしっとりと歌われるこの唄は味わい深いものですが、宇和島市を中心とした「盆踊り唄」だそうです。

ところで「さんさ」と聞くと、名曲《さんさ時雨》(宮城県仙台市)をどうしても連想したくなります。
と言うのも、ここ宇和島は、元和元年(1615)に奥州仙台から、伊達藩62万石の城主・伊達政宗の子・秀宗が、わずか10万石で移封となったところであるからです。

◆和霊神社


実際、伊達藩領の「鹿踊り」などといった民俗芸能を伝えた「八つ鹿踊り」などが残っていますので、そうした民俗文化の移動もあったことは事実のようです。

ただこの唄については、山口の瀬戸内海沿岸から島々にかかけて《さんさ小島》という、古風な「口説」調の「盆踊り唄」があって、どうやらこれが宇和島に伝わったもののようです。

歌詞は宇和島独特のものになり、「竹に雀の仙台様も…」で歌い出されることが多いです。また詞型は一見「7・7・7・5調」のようですが、上の2句の後に「ションガイナ」が入ります。また、最後の4句目の5文字はすべて「諸共に」で、前後に入る字を含めると「エエー諸共にヨー」で納められた形になっています。ですから、各唄の違いは、7・7・7の部分だけが変化し、「諸共に」で終わる珍しい型式の唄といえます。

ちなみに、元となった《さんさ小島》という盆踊り唄は、わたくし聴いたことはありませんが、7・7・7・7調を繰り返す「口説」であるといいます。それが宇和島化して《宇和島さんさ》になるのですが、わたくし共が耳にできる歌詞は「口説」のものではないです。あるいはかつては口説で歌われていたのか、現在でも地元では「口説」で歌われているのか、知りたいところです。

現在、地元・宇和島では、4月第1土、日曜日の「宇和島お城祭り」で、大名行列、郷土芸能などの催しの中で「宇和島さんさ大会」が実施されているそうです。