長久保甚句 歌詞
○長久保よいとこ(ヨーヨー) いつ来てみても(キーサー)
  かかあ天下に 屋根の石(ハーイサッサー)  ※以下、唄ばやし同様

○青葉(または 若葉)隠れに 浅間が見える 笠取越え行く 馬子の唄

○長い長久保 板屋根続き(または 造り) 瓦(変わら)ないから 来ておくれ

○長い長久保 いつ来てみても 三味や太鼓の 音がする

○長い長久保 流れど焼けど 可愛い主さん(または あの娘が)残りゃよい

○流れ星見りゃ 気になるものを 松尾神社へ 宵参り

○急げ飛べ飛べ 有坂田んぼ(または 長久保新道) 飛べば長久保 近くなる

○長久保通いは 止めよとしたが お出でお出でと 文が来る

○長久保お女郎に 身も世も捨てた 未練残して この始末

○和田の峠が 海ならよかろ 可愛い主さんと 船稼ぎ

○行こか長久保 帰ろか家へ ここが思案の 山の鼻

○川は浅いが 情けは深い のぞいてご覧よ 簀の子橋

○簀の子渡れば 三味の音響く 心いそいそ 草鞋解く

○浅い川なら 膝までまくり 深くなるほど お裾まで

○松になりたや 峠の松に 諸国大名を 下に見る

○松になりたや 峠の松に 上り下りの 手掛け松

○三里笹山 二里松林 娘よく来た 五里の道

○依田川河原に 葦なら二本 思い切るよし 切らぬよし

○今宵一夜は 浦島太郎 開けて悔しや 玉手箱

○こぼれ松葉を 手でかき集め 主の帰りを 焚いて待つ

○来たら寄っとくれよ あばら家だけど ぬるいお茶でも 熱くする

○遅い帰りを 待つ身につけて 止めた昔を 思い出す

○わたしゃ奥山 一重の桜 八重に咲く気は 更にない

○鮎は瀬に住む 鳥ゃ木に止まる 人は情けの 下に住む

○人に情けと 青田の水は かけておきなよ 末のため

○粋な小唄で 桑摘む主の お顔見たさの 回り道

○桑の中から 小唄がもれる 小唄聞きたや 顔見たや

○蚕飼ったり 糸取りしたり 主に木綿は 着せられぬ

○送りましょうか 送らせましょか せめてよね屋の 角までも

○逢うて嬉しさ 別れの辛さ 逢うて別れが なけりゃよい

○見ても見飽きぬ 千度見ても 合わせ鏡に 主の顔

○忘れていたのに また顔見せて 二度の想いをさせる気か

○来るか来るかと 待たせておいて 他所へ逸れたか 夏の月

○叩かれながらも その手にすがり あなた危ない 髷の針

○馬子よ叱るな 長閑じゃないか 馬の眠いも 無理はない

○鳴いた松虫 鳴かずに語れ 泣いちゃ理も非も 分かりゃせぬ

○蝉の抜け殻 身のないわたし 遅れ取るよな わしじゃない

○ガラガラ飴屋は 往還通りゃ わたしゃカラカラで 世を通る

○ガラガラ飴屋は 往還通り ヨカヨカ飴屋は 庭通る

○ヨカヨカ飴屋は 頭でヨカヨカ わたしゃお腹で あなたとヨカヨカ

○お名はささねど この座の中に 命あずけた 人がある

○年は三十 その名はささぬ 命あずけた 人がある

○日陰住まいに 身は落ちつけど 解けぬ思いの 雪だるま

○たずね来るなら 霜枯れ三月(みつき) 花の三月 誰も来る

○月に一声 山ほととぎす おらも聞きたや 今一度

○顔見りゃ苦労も 忘れるような 人がありゃこそ 苦労する

○主が死んでも 墓にはやらぬ 焼いて粉にして 白湯で飲む

○じっとこらえて 別れてみたが 思い直して 会いに来た

○夢で見るよじゃ 惚れよが薄い ほんに惚れたじゃ 寝られない

○君を思えば 照る日も曇る 晴れた月夜も 闇となる

○すまし顔して たがいにいても いつかたがいに 出るえくぼ

○黄菊 白菊 根も菊葉 わたしゃあなたの 胸をきく

○今宵別れりゃ また逢うまでは 繭の糸ほど 身が細る

○竹に雀は 科良くとまる 止めて止まらぬ 恋の道

○待たるる身になり 待つ身になるな 待つは憂いもの 辛いもの

○来たで顔見せ 帰るで泣かせ ほんにあなたは 罪な人

○雨は天から 降れども晴れる わしの心は いつ晴れる 

○暗い夜道も 明かりは要らぬ 主と二人で 越す山路

○乳母に出雲の 方角聞いて 枕返した 初恋慕

○止めたい思いが 天まで届き 主を返さぬ 今朝の雪

○恋にゃ名誉も お金も要らぬ 当てにするのは 主ばかり

○君がニッコリ わたしもニコリ それでしこりが 出来た中

○人の恋路を 邪魔する奴は 犬(豚)に食われて 死ねばよい

○遠く離れりゃ 手紙が便り 配達さん(郵便箱)でも 見りゃ可愛い

○逢いたいときには 逢わせておくれ 誰しも恋路は 同じこと

○噂浮名の 立とうとままよ どうせこうした 仲じゃもの

○笠の印は ちがっていても はてなよく似た 歩き振り

○清き流れの わたしの心 濁るもそなたの 心から

○清き流れの お前の心 曇る私の 心から

○思い出しては 恋しさ増して 違わぬ辛さに 焦れ泣く

○好いちゃおれども 好かれちゃいない 磯の鮑の 片想い

○お前さんとならば どこまでも サイカチ茨の 中までも

○主と添われる 縁談話 聞かぬ振りして つく手毬

○可愛い男に 苧環付けて 寄せておきたや 我が側へ

○嫌でならない かの主さんは 好いていながら もたせぶり

○連れて行くなら 今宵のうちに 心変わりの せぬうちに

○惚れたわいなと 芝居のように いえるものなら 嬉しかろ

○今度こそはと 思案はすれど 逢えば思案も どこへやら

○浅黄染めでも 度重なれば 末は色あげ 紺となる

○おさん何する 行燈の陰で 愛し男の 帯くける

○知らぬ顔して わたしはおれど 噂聞くだび 気がもめる

○逢いたい見たいの わたしの病 世界に薬は 君ばかり

○浮気立てられ 無いこと言われ 意地でも添わずば なるものか

○わたしゃ紅梅 恋ゆえ燃える 様は白梅 他所心

○月を嫌いな 情なし蛍 見やれ優しき 月見草

○嫌で添う人 ある世の中に 好いて好かれて なぜ添えぬ

○野暮なお方の 情あるよりも 好いたお方の 意地がよい

○主は正宗 わしゃ錆び刀 あなた切れても わしゃ切れぬ

○冷えちゃ悪いと 座布団出すは 熱いわたしの 心意気

○馬は痩せ馬 重荷に小駄に 案じられます 山坂が

○馬よいななけ もう家ゃ近い かかあ裾上げ 湯で待ちる

○馬よいななけ もう家ゃそこだ かかや子どもも 出て待ちる

○馬よ辛かろ 一日小荷駄 疲れなおしの お裾上げ

○たらい湯使って 裾上げすれば 愛しお馬の 目も細る

○乙女摘む桑 食べては蚕 機嫌直さにゃ おられまい

○主と二人で 朝草刈りに お前二把刈りゃ わしゃ三把

○葛葉の山の口 明日から明ける 馬よ千駄の 葛葉取り

○止せばいいのに 舌切り雀 一寸舐めたが 身の辛さ

○この世渡らば 豆腐で渡れ 達者(豆)で四角で 柔らかで

○天狗高慢 蜂鼻を刺す お多福転んで 鼻突かず

○運だ運だと 言わんすけれど 運は寝てちゃ 来はせない

○運だ運だと 言わんすけれど 運はその身の 心から

○どうせこの世は 稼がにゃならぬ 奴凧さえ 水を汲む

○酒は酒屋に 牡丹餅ゃ棚に 金のなる木は 椀にある

○辛抱しゃんせよ 辛抱が金だ 辛抱する木に 金がなる

○時よ時節と あきらめしゃんせ 駕籠に乗る人 担ぐ人

○丸い卵も 切りよで四角 物も言いよで 角が立つ

○金がほしくば 働きしゃんせ 貧乏したけりゃ 寝て暮らせ

○十二単の窮屈よりも 裸人形の 身がやすい

○唄は声より 節より文句 人は見目より 心意気

○色の黒いにゃ 憎まれはせぬ 烏口故 憎まれる

○知らぬ他国を いちゃつくよりも 家で田の草 取るがよい

○花を見られて 咲かぬは口惜し 咲けば実もなる 恥ずかしや

○帯は筑前 博多に限る 色は年増に とどめさす

○お前さんとならば 畑でも田でも 道の真ん中でも 構やせぬ

○下ろす肩上げ 二八の春に 袷恥ずかし 村娘

○駒にまたがり 両手に手綱 郭通いの 程の良さ

○遠けりゃ遠いで 諦めもするが わずか二里半 ままならぬ

○昔馴染みと つまずく石は 憎いながらも 振り返る

○親も教えず 師匠もとらず 覚えましたよ 色の道

○岡惚れしたのは わたしが先よ 手出ししたのは あなたから

○百姓止めても 炭焼きゃ止めぬ 合わせメンパの 味のよさ

○切れてみやがれ ただおくものか 藁の人形に 五寸釘

○浮世離れた 木樵の小屋に 暦代わり 降る桜

○蚕庭置き 知らない人に 蚕糞煎じて 飲ませたい

○心誠に 世間を渡りゃ いつか花咲き 実を結ぶ

○実と誠で 結んだ粽 勝負力じゃ 切れやせぬ

○芽を出しゃ摘まれ 葉を出しゃ摘まれ それでも茶の木にゃ 花が咲く

○今宵臼挽きゃ もう知れたもの 婆さ夜食の 鍋かけろ

○添うて余念も ない働きに 可愛い手にさえ 出る力

○今年ゃ豊年 しこたま穫れて 升はいらない 箕で計る

○お米育てた 黄金の草鞋 大判小判の 跡が付く

○米のなる木で 作った草鞋 歩きゃ小判の 跡が付く

○梅と桜と 両手にもって どちら梅やら 桜やら

○立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿は 藤の花

○女工女工と 軽蔑するな 家は金貸し その隣

○かぶり振るのも 聞かずに雪か 無理に寝かせる 庭の笹

○角力にゃ負けても 怪我さえなけりゃ 晩にゃわたしが 負けてやる

○盃ほしさに 言うのじゃないが 盃ゃ畳の 模様じゃない

○どうだ姐さん 糸目は出るか 糸目どころか 汗が出る

○米は南京 おかずは荒芋 何で糸目が 出るものか

○例え細くも 煙を立てて 一つかまどで 暮らしたい

○主は炭焼き わしゃ野良仕事 夫婦揃って 共稼ぎ

○焼野のきぎす 夜の鶴 子を愛しまぬ 親はない

○山は焼けても 山鳥ゃ飛ばぬ 可愛い我が子に ひかされて

○連れて行くから 髪結い直せ 島田じゃ世間は 渡れない

○お前松の木 わしゃ胡桃の木 便り梨の木 木は紅葉

○顔見たばかりで 気がすむならば 酒呑みゃ樽見て 酔うであろ

○唄は世に連れ 世は唄に連れ 変わる世相も 唄の中

○散切り頭を 叩いてみれば 文明開化の 音がする

○入れておくれよ 痒くて困る わたし一人が 蚊帳の外

○俺も若い時ゃ 袖褄ひかれ 今じゃ孫子に 手をひかれ

○わしが若い時ゃ 五尺の袖で 道の小草を なびかせた

○親父ぐざるな ぐざると逃げる 後でくどくど たずねるな

○遠く海山 隔つるとても 文の便りは しておくれ

○万の蔵より 子は宝でも 思うことなら 子三人

○犬や猫さえ 子を育てるに 間引き心は 鬼じゃもの

○蝶よ花よと 育てたあの子 新ばちゃ他人の 手にかかる

○桶屋商売 わたしは好きよ 離ればなれを 丸くする

○桶屋商売 わたしは好きよ 足で絡んで 手で締める 

○嫌でならない 煙草の煙 次第次第に 薄くなる

○遠く離れて 逢いたいときは 月が鏡に なればよい

○いやで幸い 好かれりゃ困る 他によい人 たんとある

○人は嫁取る 婿取るなかで わたしゃ日向で しらみ取る 

○盆にゃお出でよ 何処にいても 死んだ仏も 盆にゃ来る

○わたしゃ唄好き 念仏嫌い 死出の山路も 唄で越す

○お盆お盆と 待つのがお盆 お盆過ぎたら 何待ちる

○達者で逢いましょ また来る年も 踊る輪の中 唄の中

○目出度目出度の 若松様よ 枝も栄えりゃ 葉も茂る

○目出度目出度が 度重なれば 鶴が御門に 巣をかける

○この家座敷は 目出度い座敷 鶴と亀とが 舞い遊ぶ

○差した盃 中見て上がれ 中は鶴亀 五葉の松

○年にお盆が 二度あるならば 親の在所へ 二度参る

○春だ春だと 油断はおよし またも来るぞえ 大晦日

○器用貧乏 ありゃ人宝 利巧は馬鹿の 使い者

○器用貧乏は 昔のことよ 利巧は馬鹿を ただ使う

○煮ても焼いても 食えないものは ぼろの煮付けと 口振舞い

○あるが恥かい ないが恥 色の二人や 二三人

○わしの願いは 五つの願い 二つ枕に 三つ布団

○飲まず食わずに 追われていても 泣く子と地頭にゃ 語れない

○山の中でも 三軒家でも 住めば都よ 我が里よ

○九尺二間の 侘び住まいでも 主と二人で 水入らず

○申し訳ない 二親様に 恩も返さず この始末

○わたしゃあなたに ホヤホヤ惚れた かさのあるとは 知らずして

○雨の夕べも 霞の朝も 花の笑顔が 美しい

○これさ泣かずに あちらを向きな 今のは気を引く 下心

○色気づいたよ あの鬼灯は 人目なければ ちぎられる

○頭病めても 鉢巻きおよし 身持ちしたかと 思われる

○可愛いがられて また憎まれて 可愛いがられた 甲斐がない

○主は炭焼き わしゃ野良仕事 ともに焼いたり 掘らせたり

○酒はよいもの 気を勇ませて 顔に錦の 色を増す

○お酒呑む人 花なら蕾 今日もさけさけ 明日もさけ

○お酒呑む人 心から可愛い 酔うた寝顔は なお可愛い

○お酒呑む人 心から可愛い 呑んでくだ巻きゃ なお可愛い

○呑めぬお酒と 知りつつ注いで 一口助けたい 下心

○酒の肴に いかはさまれて 食わじゃなるまい いか程か

○芸者買うよな 開けた方に 金のなる木を 持たせたい

○呑めや歌えや 今宵が限り 明けりゃ身請けの 金がくる

○またも来たかや 一文無しで 顔実りゃ不憫で 返されぬ

○さあさ皆様 お歌いなされ 唄で御器量 下がりゃせぬ

○花が蝶々か 蝶々が花か 来てはチラチラ 迷わせる

○戀という字を 分解すれば いとしいとしと 言う心

○櫻という字を 分解すれば 二回(貝)女に 木(気)が残る

○松という字を 分解すれば 公(君)と別れりゃ ぼく一人

○わたしゃあなたに 火事場の馬糞 震えながらも 熱くなる

○わたしゃあなたに 時計の針よ 会うと思えば また離れ

○わたしゃあなたに 尺八の笛 ふうふ(夫婦)となるのも あなのため

○粋な夫婦と 塩煎餅は 程よく焼くほど 味がある

○夫婦喧嘩と 三日月様は 一夜一夜に 丸くなる

○何を小癪な 達磨でさえも 一人寝よとて 起きあがる

○月は丸いもの 雪は白いもの 惚れたお方にゃ 弱いもの

○寝ててお金が 出てくるならば 起きて働く 馬鹿はない

○家を出るときゃ ゴム輪の車 家に帰れば 火の車

○咲いた桜に なぜ駒つなぐ 駒が勇めば 花が散る

○家を出るとき 褌忘れ 長い道中 ぶらぶらと

○破れ褌ゃ 将棋の駒よ 角と踏ん張りゃ 金が出る

○山で伐る木は たくさんあれど 思い切る気は 更にない

○信州信濃の 新蕎麦よりも わたしゃあなたの 側がよい

○続く日和に つい騙されて うかうか咲いた 室の梅

○粋な刈萱 あだめく桔梗 それを風情な 女郎花

○君と別れて 松原行けば 松の露やら 涙やら

○鬼も十六 番茶も出花 娘盛りの 色の良さ

○お茶の新芽と 二八の娘 人に揉まれて 味が出る

○わたしゃ春雨 主ゃ野の花よ 濡れる度ごと 色を増す

○作り上手で 咲かせたよりも いっそ野末の 乱れ菊

○主の心と 田毎の月は どこに誠が 照らすやら

○裏の畑に 茄子植え込んで お前なる気か ならぬ気か

○わたしゃなる木で おるけれど 声(肥)かけられなきゃ なられない

○誰を待つやら あの水車 小糠小糠(来ぬか来ぬか)で くるくると

○皺は寄れども あの梅干しは 色気離れて 粋なやつ

○家の父さん 位がござる 何の位か 酒くらい

○可愛い主さんに 謎掛けられて 解かじゃなるまい 繻子の帯

○雁が帰れば 燕が通う お前ばかりが 客じゃない

○してもしたがる 年寄りのくせに 今朝もしてきた 墓参り

○死んでまた来る お釈迦の身なら 死んでみせます 今ここで

○好きと好きとで 添えないときは 主という字を 逆に読め

○金が逃げ出す 音かと聞けば 三味も太鼓も 嫌になる

○誰も踊らねば 俺三人で 四角三角 そばなりに

○踊り踊るなら 板の間で踊れ 板の響きで 三味いらぬ

○踊りましょうよ 踊らせましょよ 月の山の端に 限るまで

○踊りましょうよ 踊らせましょ今年 腹に子はなし 軽々と

○歌う場席で 歌わぬ人は 器量よいとの 御自慢か

○それじゃ出しましょ お恐れながら 唄の文句は 知らねども

○唄は下手でも 唄出すからは 程よくお囃し 願います

○歌え歌えと 責めかけられて 唄は出はせぬ 汗が出る

○踊る場席で 踊らぬやつは 木仏 金仏 石仏

○揃うた揃うたよ 足拍子手拍子 稲の出穂より まだ揃うた

○揃うた揃うたよ 踊り子が揃うた 稲の出穂よりゃ よく揃うた

○稲の出穂には 群穂もあるが 揃うた踊り子にゃ むらはない

○揃うた揃うたよ 踊り子が揃うた 笛や太鼓の 音も揃うた

○娘島田に 蝶々が止まる 止まるはずだよ 花だもの

○この家座敷は 六畳に八畳 九畳(苦情)ないから 来ておくれ

○佐倉宗五郎 子別れよりも 主と別れが わしゃ辛い

○おもしろいぞえ 五月の田植え 蓑や笠着て 後しゃりに

○嫁に行くなら つかい場見て行きな 川端遠けりゃ 苦労する

○夏の麦打ちゃ 疫病神で するす田の草 かぶ団子

○明日は山の口 刈敷餅搗いて 餅は餅でも 地獄餅

○末は見上げた お方なになれの 謎も嬉しい 鯉幟

○箒片手に 箕をかい込んで 馬糞さらいも 飯の種

○馬糞さらいに 身をやつしつつこれも世のため 家のため

○馬糞さらいと 小馬鹿にするな 足も食うため 生きるため

○見てりゃ軽そだ おもしろそうだ 揃う足並み 送る杖

○起きて行かんせ 朝草刈りに 鳥の鳴き出す 裏山に

○溜めを担ぎゃこそ お米も育つ 畠百姓の 穀櫃だ

○今年ゃ豊年 穂に穂が咲いて 道の小草も 米がなる

○とのは灯心(とうすみ) 百姓は油 絞り取られる 殿様に

○五月五日は 刈敷始め 日陰紅葉の 落ち葉まで

○来ては冷やかす 数の子野郎メ どこの鰊が 生んだやら

○早く大きくなって お太鼓締めて のろま男を 迷わせろ

○あだな色香に 迷いはせぬが 実を情けにゃ つい迷う

○どうせこうなりゃ 山田の案山子 掛ける子もなきゃ 親もない

○赤い襷も 伊達には掛けぬ 愛し男の 目印に

○お前百まで わしゃ九十九まで ともに白髪の 生えるまで

○お前百まで わしゃ九十九まで ともに汁椀 剥げるまで

○君の田と また我が田と並ぶ 同じ田の水 畦の道

○どうせこうなりゃ 二足の草鞋 ともに履いたり 履かせたり

○どうせ土ン百姓に 惚れたが因果 よこせ小便桶 俺担ぐ

○二番息子は 宿無しだとて 夫婦二人は 水入らず

○腹が立つなら この子をお抱き 仲のよいとき 出来た子だ

○変わる世間に 変わらぬものは 人の情けと 色の道

○あの子育てて 花嫁貰って 早く隠居が してみたい

○花の笑顔も 移れば変わる 霜をいただく 翁草

○男ぶりもよし 気立てもよいが 金のないのが 玉にきず

○色は黒くも 愛想はなくも 人にもたれる 鍋のつる

○色は黒くも 赤髭にても 金のある人 色男

○ほしいもんだよ 金さえあれば 嫌でも自由の 通るもの

○金のうちでも 要らない金は かねかね気兼ね 明けの鐘

○お前一人と さだめておいて 浮気ゃその日の 儲けもの

○添いたい想いで 苦労に苦労 添えば世帯で また苦労

○添うて苦労は 覚悟のうえよ 添わぬうちから この苦労

○晴れて偲べば 桜の月よ 泣いた昔が 懐かしい

○義理と世間と 人目がなけりゃ たんと食べたい さつまいも

○焼き芋食い過ぎ 火事より怖い 胸が焼けたり 屁が出たり

○君と寝ようか 五千石取ろか 君と寝もする 五千石も

○文の便りは 千万本しても 逢わねばできない ことがある

○家のかかさん 洗濯好きで 夜の夜中に 竿探す

○かかもかかだよ 糸取り止めて とともととだよ 昼日中

○雷ゃ馬鹿だよ へそばか狙う 俺なら三寸 下狙う

○色の手加減 炬燵で覚え 今朝も嬉しい 新枕  

○男やごめと 南瓜のつるは 人の軒端に 這いたがる

○嫌なやごめと 障子の穴は 張ってやりたや 横張りに

○今宵来るなら 裏からお出で 表車戸 音がする

○姉さ夕べ来た ありゃどこの人 妹何言う ありゃ猫だ

○いくら開けた この世だとても 猫が下駄履いて 来るものか

○十五夜お月が 闇ならよかろ 闇なら手も引く 足も引く

○嫌というのに 無理押し込んで 入れて泣かせる 籠の鳥

○お月ちょろり出て 横に雲抱きゃる わしも抱きたや お十七を

○抱いて寝てさえ 話が残る まして格子の 中や外

○竹に鴬 梅には雀 それは気ちがい とりちがい

○姐さこっち向け 簪ゃ落ちる 簪ゃ落ちない 顔見たや

○一人二人は しゃら面倒くさい どうせ待つなら 五六人

○嫌だら起きゃがれ うぬみた南瓜 一つ種蒔きゃ 千もなる

○五十銭銀貨なら 裾までまくり 一円札なら おへそまで

○腹が立つなら どうなとしゃんせ 主に任せた この身体

○ほれてほられて ほられてほれた ほれてほられた ことがない

○わたしゃあなたに ガッタリ臼よ 搗かれ搗かれて かったりと

○わたしゃ野中の カッタリ臼よ 小糠小糠(来ぬか来ぬか)で 夜もすがら

○拗ねてみせれば 心を変えて 機嫌取る気の いじらしさ

○粋な姿で 道行く主の お顔見たさの 咳払い

○お顔見るさえ 恥ずかしかった 恋の初めが 懐かしい

○紅も付けましょ 小袖も着ましょ みんな主への 心立て

○風呂に行く間も 逃さぬように 主の駒下駄 履いて行く

○あなた嫌だ人 金魚の性で 煮ても焼いても 食えやせぬ

○梅に鴬 科良く止まった 止めて止まらぬ 色の道

○高い山から 谷底見れば 瓜や茄子の 花盛り

○切れてしまえば バラバラ扇子 風の便りも 更にない

○七つ八つから お子守り奉公 十で飯炊き 十五でお女郎

○ままよままよで ままにはならぬ お女郎女の 身の辛さ

○闇に夜烏 迷うて鳴けば 月に夜烏 七不思議

○強情張るより 行燈張りな 遠慮はるより 頬はりな

○蛸に骨なし 海鼠に目なし 惚れたお方にゃ 実がなし

○吹けよ春風 吹くなじゃないが 花を散らさぬ 程に吹け

○誰か来たよだ 流しの外で 鳴いた松虫 音を止めた

○子育て地蔵に 団子あげ頼みゃ 団子じゃ駄目だぞ 餅あげろ

○せがれどこ行く 気質になって 生まれ在所へ 種付けに

○帰る帰ると 口には言えど 酔うた振りして 横になる

○決まり悪いの 恥ずかしいのと 見栄をするうちゃ 人も花

○妹が情に かりがみされて 小百合可愛いや 露と寝る

○家の爺は 狐か狸 夜の夜中に 穴探す

○濡れぬうちこそ 露をもいとい 毒を食らわば 皿までも

○わたしゃ天保でも 六部よりゃ偉い 三分引いても 当百だ

○わたしゃお天保 七厘にても 夫婦二人は 百までも

○天保天保と 小馬鹿にするな 丸く長くて 小判形

○天保天保と 小馬鹿にするな 人に持たれて 世を渡る 

○夏は木の下 寒は炬燵 離れともない 主の側

○お前行くなら わたしを連れて 世界いずこの 果てまでも

○とろりとろりと 眠気がさすは 夕べ殿御と 長ばなし

○年に一度の 七夕様も それも雨降りゃ 逢わずに帰る

○裾の通草は 何見て開く 峰の松茸 見て開く

○好きな馬方 止めろじゃないが 止めておくれよ 茶屋遊び

○可愛い主さに 馬方させて 鈴の鳴る度 逢いに出る

○島田真実 丸髷不実 銀杏返しは 二心

○想い思うて すがりし藤に 義理でやせなきゃ なるぬ松

○馬鹿にしゃんすな 枯れ木だとても 藤がからめば 花が咲く

○色は年増に とどめもさすが 年若可愛いや ありゃ不思議

○いくら上手な 大工といえど 人の口には 戸は立たぬ

○今年ゃお米を しこたま取って 買ってやりたや 孫の帯

○わたしゃ野に咲く 薊の花よ 誰も手を出す 人はない

○わたしゃ野に咲く 蒲公英の花よ 人に踏まれて 横に咲く

○あなた越後で あばらが足りぬ わたしゃ信州で 気が足りぬ

○信州信濃はお蚕処 娘やりたや 桑摘みに

○わたしの心と 浅間の山は 胸に煙は 絶えはせぬ

○浅間山さん なぜ焼けしゃんす 裾に追分(または 三宿) 持ちながら

○浅間山から 鬼ゃけつ出して 鎌でかっ切るような 屁をたれた

○浅間根越しの 焼野の中に あやめ咲くとは しおらしや

○碓氷峠の あの風車 誰を待つやら くるくると

○追分ます屋の 懸け行灯に 浮気御免と 書いてある

○障子開ければ 古町ゃ一目 なぜに武石は 山のかげ

○馬方さん どこで夜が明けた 武石峠の 笹平

○誰か行かぬか 武石の入りへ 独活や蕨の 芽を折りに

○わたしゃ武石の 山家の育ち 風も荒いが 気も荒い

○武石女は 気立てで知れる 伊達に襷は 掛けはせぬ

○和田の男は 宿場の育ち 武石女は 山育ち

○粋と情けと 真実こそは 武石女に 和田男

○武石山中 三軒家でも 住めば都よ 我が里よ

○わたしゃ武石で 炭引き家業 車引くせか 猫背中

○武石河原の あの月見草 夜の疲れで 昼寝する 

○嫁に取るなら 武石の娘 意気と情けの 心意気

○踊り踊る人 ありゃどこの人 あれは武石の 色男

○どうせ住むなら 武石の里よ 人にゃ実もある 花もある

○信州武石へ 来て見やしゃんせ 蚕育ての 桑畑

○武石よいとこ 女衆の夜這い 男後生楽 寝て待ちる

○武石田んぼの 泥田の中で(または 馬入小路) あやめ咲くとは しおらしや

○ままよ武石は 蚕の本場 娘やりたや 桑摘みに

○諏訪のおっしゃん 木胴乱下げて 大門峠を 唄で越す

○糸になりたや 蚕の糸に 愛しお方の 上田縞

○水戸の浪士は 峠を越えた 上田藩士は 陣屋詰め

○上田原町 海野町 鍛冶町かけての 大火事よ

○押し出す簑笠 百姓一揆 騒動頭は 十七歳

○十七以上は 皆簑笠で 出ねば焼き打つ 武石まで

○大屋渡し場に 堀忠がかけた 橋ははね橋 地獄橋

○ドっと一度に 押さねばよかろ 橋ははね橋 地獄橋

○泳ぎ悶える 川面は地獄 溺れ死ぬ人 沈む人


○高篠の ガラス障子に 写りし島田 あれ見ちゃ我が家に 帰らりょか

○朝飯を 抜きにするから お前も寝てな 起きるにゃあんまり 惜しい雨

○雉と狐と 猫と犬の 鳴く声聞けば ケンコンニャワンと 鳴いている

○あの声で とかげ食うかや 山ほととぎす 人は見かけによらぬもの

○遊郭の 梯子段をば ストトントンと 上がる心地で 暮らしたい

○唐傘の 骨の数ほど 苦労はすれど 元は一夜の 出来心

○先様の たとい姑が 鬼でも蛇でも 主を育てた 親じゃもの

○泥水に 育てられても 心は錦 咲いて見せます 蓮の花

○ほととぎす 聞くが嫌やに 山家に住めば またも聞こえる 鹿の声

○笠取の 松の並木も 長久保女郎も 松の心にゃ 変わりない