白鳥踊り 歌詞
参考:奥美濃 白鳥おどり「白鳥踊り保存会五十年史ぎふ・奥美濃「白鳥おどり」(カセットテープ)歌詞カード
《源助さん》
○ハァー
 源助さん源助さんと 言うて鳴く鳥は(ア源助さんコラショ)
 小さな鳥だよチョイト色鳥よ 小さな鳥だよチョイト色鳥よ(ア源助さんコラショ)
 ヨイヤヨイヤマカドッコイサノサ(ホラ源助さん源助さん)
                                                                 ※以下、唄ばやし、返し省略
○ハァー貴方はたちで 私は十九 月も朧の チョイト浴衣がけ
○ハァー二人寄り添い 月影踏んで そぞろ歩きの チョイト粋なこと
○ハァーわしと貴方は 羽織の紐で 固く結んで チョイト胸にある
○ハァー浴衣姿に 髪結い上げて 見せてやりたや チョイトあの人に
○ハァー恋に身を焼く 蛍じゃないが 私ゃ源助さんに チョイト身を焦がす
○ハァー右と左の 手と手をつなぎ 人目忍んだ チョイト夜も更ける
○ハァー貴方源助さんで わたしはお小夜 ともに恋した チョイト二人仲
○ハァー燃えて散りゆく 花火じゃないが 私ゃ源助さんに チョイト燃えて散る
○ハァー源助さん源助さんと 言うて鳴く鳥は 八千八声のチョイト ほととぎす 恋に身を焼く チョイトほととぎす
○ハァーわしとお前は 小藪の小梅 なれど落ちれと チョイト人知らず
○ハァー一夜おいでと 言いたいけれど まんだかかまの チョイトそばに寝る
○ハァー来るか来るかと 切子の下で わしの待つ人 チョイトまだ来ない
○ハァー踊る娘の 腰つき見やれ 抱いて寝たよな チョイト夢を見た
○ハァーよいと思えば あの君様の おそば吹きくる チョイト風もよい
○ハァー若い盛りは 二度とはないで 親も目永に チョイトしておくれ
○ハァーお前百まで わしゃ九十九まで ともに白髪の チョイトはえるまで
○ハァー毎夜毎晩 お門に立ちて とがめられては チョイトおくれるな
○ハァー恋しやさしや 雪駄の音は 主はどなたか チョイト知らねども
○ハァー桑の中から 小唄がもれる 小唄聞きたや チョイト顔見たや
○ハァーわしの若い時ゃ 五尺の袖で 道の小草も チョイトなびかせた
○ハァー郡上の白鳥 住みよいところ 水も清いが チョイト人も良い
○ハァー鳥も通わぬ 奥山なれど 住めば都よ チョイトわがさとよ
○ハァー様となら行く わしゃどこまでも しだれ柳の チョイトうらまでも

○ハァー馬は三歳 馬方二十歳 手綱取る手の チョイト粋なこと
○ハァー惚れたお前に 恋い口説かれて 弾む踊りに チョイト下駄の音
○ハァー来るか来るかと 待つ夜は来ずに 待たぬ夜さきて チョイト門に立つ
○ハァー心細いは 奥飛騨街道 川の鳴瀬が チョイト鹿の声
○ハァー昔馴染みと 去年の暦 あれど今年は チョイト間に合わぬ
○ハァー鶯でさえ 初音はよいに 様と初寝は チョイトなおよかろ
○ハァー恋にこがれて 鳴く蝉よりも 鳴かぬ蛍が チョイト身をこがす
○ハァー高五郎通れば おまむの石碑 おまむ小源治 チョイトすすり泣き
○ハァー高い山には霞がかかる 若い娘にゃ チョイト気がかかる
○ハァー惚れたお前に 恋口説かれて はずむ踊りの チョイト下駄の音
○ハァー鶯が鳴く 春かと思や 夏の世やそうで チョイト蝉が鳴く
○ハァー昔語るや 数ある民話 伝え行きたい チョイト後の世に
○ハァー唄の文句で 知らせた主に わたしゃおどりの チョイト手で知らす
○ハァー思い出しては くれるか様よ わたしゃ忘れる チョイト暇がない
○ハァー殿を見る目は 糸より細い 親を見る娘は チョイト猿まなこ
○ハァー盆に踊ろよ 踊らせましょう 老いも若きも チョイト皆踊る
○ハァー色が黒うて 惚れ手がなけりゃ 山のからすは チョイト後家ばかり
○ハァー信州信濃の 新蕎麦よりも わたしゃあなたの チョイトそばがよい
○ハァー色で身を売る 西瓜でさえも 中にや苦労の チョイト種がある
○ハァーお前正宗 わしゃさび刀 あなた切れても チョイトわしゃ切れぬ
○ハァー声はすれども 姿は見えぬ 様は草場の チョイトきりぎりす
○ハァー抱いて寝もせず いとまもくれず つなぎ舟かよ チョイトわしが身は
○ハァー竹に雀は 品よくとまる とめてとまらぬ チョイト色の道
○ハァー娘島田に 蝶々がとまる とまるはずだよ チョイト花じゃもの
○ハァーよそに妻持ちゃ 川端柳 水の流れに チョイト苦労する
○ハァー今宵別れて いつ逢いましょうか いとしあなたは チョイト旅の方
○ハァー汽車は出て行く 煙は残る 残る煙は チョイトしゃくの種
○ハァー天気よければ 大垣様の 城の太鼓の チョイト音(ね)のよさよ
シッチョイ
(アーシッチョイシッチョイ)
○一にゃヨーホイ石徹白(いとしろ)のソーリャ(アーシッチョイシッチョイ) 威徳寺様よ
  一にゃ石徹白の威徳寺様よ(アーシッチョイシッチョイ) 
 ※以下、唄ばやし省略
 二にゃヨーホイ西坂のソーリャ 正法寺様よ 二にゃ西坂の正法寺様よ
 三にゃヨーホイ西円寺はソーリャ 二日町のお寺 三にゃ西円寺は二日町のお寺
 四ではヨーホイ白鳥のソーリャ 来通寺様よ 四では白鳥の来通寺様よ
 五ではヨーホイ小駄良のソーリャ 円覚寺様よ 五では小駄良の円覚寺様よ 
 六にゃヨーホイ六ノ里のソーリャ 善勝寺様よ 六にゃ六ノ里の善勝寺様よ
 七つヨーホイ中西のソーリャ 円徳寺様よ 七つ中西の円徳寺様よ
 八つヨーホイ山本のソーリャ 養林寺(ようれんじ)様よ 八つ山本の養林寺様よ
 九つヨーホイ越佐のソーリャ 専竜寺様よ 九つ越佐の専竜寺様よ
 十でヨーホイ処のソーリャ お寺へ詣る 十で処のお寺へ詣る
○さてもヨーホイこれからソーリャ 文句にかかる さてもこれから文句にかかる
  ここにヨーホイ過ぎにしソーリャ その物語 ここに過ぎにしその物語
  国はヨーホイどこよとソーリャ 尋ぬるなれば 国はどこよと尋ぬるなれば
  ここはヨーホイ濃州ソーリャ 郡上の里に ここは濃州郡上の里に
  世にもヨーホイ名高きソーリャ 長滝村の 世にも名高き長滝村の
  おまむヨーホイ桜のソーリャ 由来を問えば おまむ桜の由来を問えば
  時はヨーホイ元禄ソーリャ 半ばの頃に 時は元禄半ばの頃に
  数あるヨーホイ寺のソーリャ 天台宗に 数ある寺の天台宗に
  そのやヨーホイお寺にソーリャ 一人の娘 そのやお寺に一人の娘
  年はヨーホイ十四でソーリャ その名はおまむ 年は十四でその名はおまむ
  近隣ヨーホイ所のソーリャ 評判娘 近隣所の評判娘
  他所やヨーホイ在所のソーリャ 若い衆達が 他所や在所の若い衆達が
  我もヨーホイ我もとソーリャ おまむを目指す 我も我もとおまむを目指す
  ある日ヨーホイ一人のソーリャ 若侍が ある日一人の若侍が
  歳のヨーホイ頃ならソーリャ 十九か 二十歳の頃なら十九か二十
  今にヨーホイ伝わるソーリャ 花奪(ば)い祭り 今に伝わる花奪い祭り
  その日ヨーホイおまむをソーリャ 見初めてからは その日おまむを見初めてからは
  魚ヨーホイ売りにとソーリャ 姿を変えて魚売りにと 姿を変えて
  今日もヨーホイ明日もとソーリャ お通いなさる 今日も明日もと お通いなさる
  月はヨーホイ流るるソーリャ 水より速く月は流るる 水より速く
  もはやヨーホイ五年のソーリャ 年月積もり もはや五年の 年月積もり
  いつかヨーホイ二人のソーリャ 心は通う いつか二人の 心は通う
  示しヨーホイ合わせてソーリャ 人目を忍び 示し合わせて 人目を忍び
  今宵ヨーホイ巳の刻ソーリャ 高五郎谷の 今宵巳の刻 高五郎谷の
  春にヨーホイ花咲く 桜の根元 春に花咲く 桜の根元
  ここにヨーホイ逢い引きソーリャ 約束いたす ここに逢い引き 約束いたす
  それはヨーホイ長滝ソーリャ 祭りの夜で それは長滝 祭りの夜で
  雪のヨーホイ降る中ソーリャ 小源次こそは 雪の降る中 小源次こそは
  兼ねてヨーホイ約束ソーリャ 桜の下を 兼ねて約束 桜の下を
  行きつヨーホイ戻りつソーリャ おまむを待てど 行きつ戻りつ おまむを待てど
  ついにヨーホイおまむのソーリャ 姿は見えず ついにおまむの 姿は見えず
  さてもヨーホイ哀れやソーリャ 小源次こそは さても哀れや 小源次こそは
  待てどヨーホイ来ぬ人ソーリャ おまむを胸に 待てど来ぬ人 おまむを胸に

  恋のヨーホイともしびソーリャ 雪にと消える 恋のともしび 雪にと消える
  遂にヨーホイかえらぬソーリャ あの世とやらへ 遂にかえらぬ あの世とやらへ
  闇にヨーホイまぎれてソーリャ お寺を出でて 闇にまぎれて お寺を出でて
  心ヨーホイせくままソーリャ 桜の根元 心せくまま 桜の根元
  呼べどヨーホイ答えずソーリャ 姿も見えず 呼べど答えず 姿も見えず
  そこでヨーホイおまむはソーリャ 途方にくれる そこでおまむは 途方にくれる
  泣いてヨーホイ泣きぬれソーリャ 桜にもたれ 泣いて泣きぬれ 桜にもたれ
  待つもヨーホイ哀れやソーリャ おまむの姿 待つも哀れや おまむの姿
  雪にヨーホイ凍えてソーリャ おまむもここに 雪に凍えて おまむもここに
  花のヨーホイはたちもソーリャ そのまま散りて 花のはたちも そのまま散りて
  伝えヨーホイ聞く人ソーリャ 涙を誘う 伝え聞く人 涙を誘う
  後のヨーホイ世までもソーリャ おまむの桜 後の世までも おまむの桜
  今のヨーホイ世までもソーリャ 話に残る 今の世までも 話に残る
  さてもヨーホイ哀れやソーリャ 小源次おまむ さても哀れや 小源おまむ
○あまりヨーホイ長いはソーリャ 先生まの邪魔じゃ あまり長いは 先生まの邪魔じゃ
 さてもヨーホイここらでソーリャ 止めおきまする さてもここらで 止めおきまする
《八ツ坂》
(ア ヤッサカ ヤッサカ)
○アーリャ今度哀れな 炭焼き口説(くどき)(ア ヤッサカ ヤッサカ)
       今度哀れな 炭焼き口説(ア ヤッサカ ヤッサカ)                    
※以下、唄ばやし、省略
  アーリャ一つ人目にや 楽そに見えて 一つ人目にや 楽そに見えて
  アーリャ二つ再び こんな商売せまいと 二つ再び こんな商売せまいと
  アーリャ三つ見る間に 釜の火はおこる 三つ見る間に 釜の火はおこる
  アーリャ四つヨナキタ 研がねばならぬ 四つヨナキタ 研がねばならぬ
  アーリャ五ついつもかも 油断はならぬ 五ついつもかも 油断はならぬ
  アーリャ六つ無理やきゃ 炭ゃ細(こま)こうなる 六つ無理やきゃ 炭ゃ細(こま)こうなる
  アーリャ七つ泣き泣き 釜の火を寄せて 七つ泣き泣き 釜の火を寄せて
  アーリャ九つこの山 株代が高い 九つこの山 株代が高い
  アーリャ十でとっくり 勘定したら 十でとっくり 勘定したら
  アーリャ女房のもんぺも 買う金も無い 女房のもんぺも 買う金も無い
  アーリャ誰も何方も 踊り子様よ 誰も何方も 踊り子様よ
  アーリャここらあたりで 文句やにかかる ここらあたりで 文句やにかかる
  アーリャかかる文句は 何よと問えば かかる文句は 何よと問えば
  アーリャここに過ぎにし その物語り ここに過ぎにし その物語り
<郡上義民伝>の上巻
○アーリャ聞くも哀れな義民の話 聞くも哀れな義民の話
  アーリャ時は宝暦五年の春よ 時は宝暦五年の春よ
  アーリャ所は濃州(のうしゅう)郡上の藩に 所は濃州郡上の藩に
  アーリャ領地三万八千石の 領地三万八千石の
  アーリャその名金森出雲の守は その名金森出雲の守は
  アーリャ時の幕府のお奏者(そうじゃ)役で 時の幕府のお奏者役で
  アーリャ派手な勤めにその身を忘れ 派手な勤めにその身を忘れ
  アーリャすべて政治は家老に任せ すべて政治は家老に任せ
  アーリャ今日も明日もと栄華にふける 今日も明日もと栄華にふける
  アーリャ金が敵か浮世の習い 金が敵か浮世の習い
  アーリャお国家老の粥川(かゆかわ)仁兵衛 お国家老の粥川仁兵衛
  アーリャお江戸家老と心を合わせ お江戸家老と心を合わせ
  アーリャここに悪事の企ていたす ここに悪事の企ていたす
  アーリャ哀れなるかな民百姓は 哀れなるかな民百姓は
  アーリャあれもこれもと課税が増える あれもこれもと課税が増える
  アーリャわけて年貢の取りたてこそは わけて年貢の取りたてこそは
  アーリャい やが上にも厳しい詮議 いやが上にも厳しい詮議
  アーリャ下 (しも)の難儀は一方(ひとかた)ならず 下の難儀は一方ならず

  アーリャか かる難儀に甚助殿は かかる難儀に甚助殿は
  アーリャ上( かみ)の噂をしたとの科(とが)で 上の噂をしたとの科で 
  アーリャすぐ に捕らわれ水牢の責め苦 すぐに捕らわれ水牢の責め苦
  アーリャ責めた挙げ句が穀見ケ原(こくみがはら)で 責めた挙げ句が穀見ケ原で
  アーリャ哀れなるかな仕置きと決まる 哀れなるかな仕置きと決まる
  アーリャかくて苦しむ百姓衆を かくて苦しむ百姓衆を
  アーリャ見るに見かねた名主の者が 見るに見かねた名主の者が
  アーリャ名をば連ねて願い出すれど をば連ねて願い出すれど
  アーリャ叶うどころか詮議は荒く 叶うどころか詮議は荒く
  アーリャ火責め水責め算盤(そろばん)責めに 火責め水責め算盤責めに
  アーリャ悶え苦しむ七十余人 悶え苦しむ七十余人
  アーリャ餓え死にする者日に増すばかり 餓え死にする者日に増すばかり
  アーリャ最早堪忍これまでなりと 最早堪忍これまでなりと
  アーリャ誰が出したか回状が廻る 誰が出したか回状が廻る
  アーリャ廻る回状が何よと問えば 廻る回状が何よと問えば
  アーリャ北濃(ほくのう)一なるアノ那留ケ野(なるがの)に 北濃一なるアノ那留ケ野に 
  アーリャ心ある衆皆集まれと 心ある衆皆集まれと
  アーリャ事の次第が記してござる 事の次第が記してござる

<郡上義民伝>中の巻
○アーリャ時が来かよ三千余人 時が来かよ三千余人
  アーリャ蓆旗(むしろばた)やら竹槍下げて 蓆旗やら竹槍下げて
  アーリャ百姓ばかりが雲霞のごとく 百姓ばかりが雲霞のごとく
  アーリャ既にお城へ寄せんず時に 既にお城へ寄せんず時に
  アーリャ待った待ったと人押し分けて 待った待ったと人押し分けて
  アーリャ中に立ったは明方村の 中に立ったは明方村の
  アーリャ気良(けら)じゃ名主の総代勤め 気良じゃ名主の総代勤め
  アーリャ人に知られた善右衛門(ぜんねもん)殿で 人に知られた善右衛門殿で
  アーリャ江戸に下りて将軍様に 江戸に下りて将軍様に
  アーリャ直訴駕籠訴(かごそ)を致さんものと 直訴駕籠訴を致さんものと
  アーリャ皆に図れば大勢の衆が 皆に図れば大勢の衆が
  アーリャ我も我もと心は一つ 我も我もと心は一つ
  アーリャわけて気強い三十余人 わけて気強い三十余人
  アーリャ道の難所と日数を重ね 道の難所と日数を重ね
  アーリャやがてついたが品川面(しながわおもて) やがてついたが品川面
  アーリャされど哀れや御用の縄は されど哀れや御用の縄は
  アーリャ疲れ果てたるその人々を 疲れ果てたるその人々を
  アーリャ一人残らず獄舎に繋ぐ 一人残らず獄舎に繋ぐ
  アーリャ聞くも涙よ語るも涙 聞くも涙よ語るも涙

  アーリャここに哀れな孝女の話 ここに哀れな孝女の話
  アーリャ名主善右衛門に一人の娘 名主善右衛門に一人の娘
  アーリャ年は十七その名はおせき 年は十七その名はおせき
  アーリャ父はお江戸で牢屋の責め苦 父はお江戸で牢屋の責め苦
  アーリャ助け出すのは親への孝行 助け出すのは親への孝行
  アーリャそっと忍んで家出をいたし そっと忍んで家出をいたし
  アーリャ長の道中もか弱い身とて 長の道中もか弱い身とて
  アーリャごまの蠅やら悪者どもに ごまの蠅やら悪者どもに
  アーリャ既に命も危ういところ 既に命も危ういところ
  アーリャ通り合わした天下の力士 通り合わした天下の力士
  アーリャ花も実もある松山関と 花も実もある松山関と
  アーリャ江戸屋親分幸七殿が 江戸屋親分幸七殿が
  アーリャ力合わせて娘を助け 力合わせて娘を助け
  アーリャ江戸に連れ行き時節を待てば 江戸に連れ行き時節を待てば
  アーリャ神の力か仏の業(わざ)か 神の力か仏の業か
  アーリャ幸か不幸か牢屋が焼ける 幸か不幸か牢屋が焼ける
  アーリャそれに紛れて善右衛門殿は それに紛れて善右衛門殿は
  アーリャ逃れ逃れて墨田の土手で 逃れ逃れて墨田の土手で
  アーリャ巡り会うのも親子の縁よ 巡り会うのも親子の縁よ
  アーリャ時節到来御老中様が 時節到来御老中様が

  アーリャ千代田城にと御登城と聞いて 千代田城にと御登城と聞いて
  アーリャ名主善右衛門はじめといたし 名主善右衛門はじめといたし
  アーリャ同じ願いに五人の者は 同じ願いに五人の者は
  アーリャ芝で名代の将監橋で 芝で名代の将監橋で
  アーリャ恐れながらと駕籠訴をいたす恐れながらと駕籠訴をいたす 
  アーリャかくて五人はその場を去らず かくて五人はその場を去らず
  アーリャ不浄縄にといましめられて 不浄縄にといましめられて
  アーリャ長い間の牢屋の住まい 長い間の牢屋の住まい
  アーリャ待てど暮らせど吟味はあらず 待てど暮らせど吟味はあらず
  アーリャもはや最後の箱訴なりと もはや最後の箱訴なりと
  アーリャ城下離れし市島村の 城下離れし市島村の
  アーリャ庄屋孫兵衛一味の者は 庄屋孫兵衛一味の者は
  アーリャ江戸に下りて将軍様に 江戸に下りて将軍様に
  アーリャ箱訴なさんと出で立つ間際 箱訴なさんと出で立つ間際

<郡上義民伝>下の巻
○アーリャ話かわりて孫兵衛宅の 話かわりて孫兵衛宅の
 アーリャ妹お滝は利発な生まれ 妹お滝は利発な生まれ
 アーリャ年は十六つぼみの花を 年は十六つぼみの花を

 アーリャ水仕奉公と事偽りて 水仕奉公と事偽りて
 アーリャ二年前から間者の苦労 二年前から間者の苦労
 アーリャ今日も今日とて秘密を探り 今日も今日とて秘密を探り 
 アーリャ家老屋敷をこっそり抜けて 家老屋敷をこっそり抜けて 
 アーリャ家へ戻って語るを聞けば 家へ戻って語るを聞けば
 アーリャ下る道中太田の渡し 下る道中太田の渡し
 アーリャそこに大勢待ち伏せなして そこに大勢待ち伏せなして 
 アーリャ一人残らず捕らえるたくみ 一人残らず捕らえるたくみ
 アーリャそこで孫兵衛にっこり笑い そこで孫兵衛にっこり笑い 
 アーリャでかした妹この後とても でかした妹この後とても
 アーリャ秘密探りて知らせてくれよ 秘密探りて知らせてくれよ
 アーリャ言うてその夜に出立いたす 言うてその夜に出立いたす
 アーリャ道の方角からりと変えて 道の方角からりと変えて 
 アーリャ伊勢路回りで桑名の渡し 伊勢路回りで桑名の渡し
 アーリャ宮の宿から船にと乗りて 宮の宿から船にと乗りて
 アーリャ江戸に着いたは三月半ば 江戸に着いたは三月半ば
 アーリャ桃の節句はのどかに晴れる 桃の節句はのどかに晴れる
 アーリャ四月三日に箱訴いたし 四月三日に箱訴いたし
 アーリャすぐにお裁き難なく終わり すぐにお裁き難なく終わり

 アーリャ悪政露見で金森様は 悪政露見で金森様は 
 アーリャついにお家も断絶いたす ついにお家も断絶いたす
 アーリャそれに連なる重役達も それに連なる重役達も
 アーリャ重いお仕置きまた島流し 重いお仕置きまた島流し 
 アーリャ名主お庄屋その他の者は 名主お庄屋その他の者は
 アーリャ願い主とて皆打ち首と 願い主とて皆打ち首と 
 アーリャここに騒動も一段落し ここに騒動も一段落し
 アーリャ宝暦九年は青葉の頃に 宝暦九年は青葉の頃に
 アーリャ郡上藩へは丹後の宮津 郡上藩へは丹後の宮津
 アーリャ宮津城主の青山様が 宮津城主の青山様が 
 アーリャ御高四万八千石で 御高四万八千石で
 アーリャ御入城とは夢見る心地 御入城とは夢見る心地 
 アーリャ政治万端天地の変わり 政治万端天地の変わり
 アーリャ長の苦しみ一時に消えて 長の苦しみ一時に消えて
 アーリャいつものどかに郡上の里 いつものどかに郡上の里
 アーリャめでためでたの若松様か めでためでたの若松様か
 アーリャ枝も栄える葉も茂る 枝も栄える葉も茂る 
 アーリャこれぞ義民の賜ぞとて これぞ義民の賜ぞとて
 アーリャともに忘るなその勲し(いさおし)を ともに忘るなその勲しを
 アーリャともに伝えん義民の誉れ ともに伝えん義民の誉れ
猫の子
○アハーヨーホオーイ ヨーヨーイ
誰もどなたも猫の子にしよまいか(猫の子にしよまいか)
猫は良いものヨッコラ鼠捕る
(鼠捕る 良いもの猫は 猫は良いものヨッコラ鼠捕る)                                
※以下、返し唄省略
○猫が鼠捕りゃいたちが笑う いたち笑うなヨッコラわれも捕る
○いとし殿まの草刈る山に 笹や茨がヨッコラなけにゃよい

○馬は三歳馬方二十歳 付けたつづらのヨッコラ品の良さ
○西の山から東の山へ お前さ訪ねてヨッコラ北の山
○郡上の白鳥踊りにござれ 爺も婆さもヨッコラ孫連れて
○若い娘と新木の船は 人が見たがるヨッコラ乗りたがる
○桜三月あやめは五月 菊は九月のヨッコラ土用に咲く
○山は焼けても山鳥ゃ立たぬ 子ほど可愛いヨッコラものはない
○来るか来るかと切子の下で わしの待つ人ヨッコラまだ来ない
○滝を見るなら阿弥陀ヶ滝よ 滝の飛沫にヨッコラ虹の橋
○唄も続くが踊りも続く 月の明るいヨッコラ夜も続く
○郡上の白鳥お宮の森に 木陰吹く風ヨッコラ夏知らず
○おらが在所で自慢なことは 夏の夜に咲くヨッコラ盆踊り
○様と別れて松原越せば 松の露やらヨッコラ涙やら
○来るか来るかと待つ夜は来ずに 待たぬ夜さきでヨッコラ門に立つ
○わしが歌えば向かいでつける 余所に殿まはヨッコラ持つも良い
○山へ来て見りゃ草刈る衆の 歌う唄声ヨッコラ声の良さ
○馬に乗るのが大名なれば 夏の草刈りゃヨッコラみな大名
○草が刈りたやあの西坂で 花の白鳥ヨッコラ見下ろして
○良いと思えばあの君様の お側吹きくるヨッコラ風も良い
○寝たか寝ないか枕に問やれ 枕正直ヨッコラ寝たと云う

○若い盛りは二度とはないで 親も目永にヨッコラしておくれ
○お前鴬わしゃ時鳥(ほととぎす) 山を隔ててヨッコラ啼かまいか
○山は焼けても山鳥ゃ立たぬ 子ほどかわいいヨッコラものはない
○明日の天気は良いぞな殿ま 鳩が啼きますヨッコラ夕鳩が
○花が蝶々か蝶々が花か 来てはチラホラヨッコラ迷わせる
○嫁が憎いかよ舅の婆さ 可愛い我が子にヨッコラ添う嫁が
○一夜一夜に枕が変わる かかる枕がヨッコラ定めたや
○赤い襷は伊達には掛けん これも殿まのヨッコラ目印に
○蝉は可愛いや七日の寿命 食わず飲まずにヨッコラ鳴き暮らす
○米のなる木で作ったわらじ 歩きゃ小判のヨッコラ跡がつく
○切れてしまえばまた新しく かけて楽しむヨッコラ三味の糸
○踊る娘の腰つき見やれ 抱いて寝たよなヨッコラ夢を見た
○おまん桜に今宵も花が 悲しおまんのヨッコラ恋心
○六日祭りの五つの花輪 神に届けとヨッコラ人櫓
○滝があれどもその音を聞けず 虹の無効の霧ヶ滝
○藤路桜か泰澄梅か 花が舞い散るヨッコラ長良川
○春の白鳥雪解けともに 桜咲いてよヨッコラわが祭り
○腕も強いが頭も切れる 男伊達ならヨッコラ甚九郎
○唄で聞いたか踊りで見たか 美濃の白鳥良い所
○音頭取りめが取りくたぶれて さいた刀をヨッコラ杖につく 
神代(ドッコイサ)
(アドッコイサーノドッコイサ)
○ア踊り子様よ ちょいと出ましてソーリャ(アドッコイサーノドッコイサ)
アべんこそなけれど 四角四面のソーリャ(アドッコイサーノドッコイサ)
アやぐらの上で 音頭取るとはソーリャ(アドッコイサーノドッコイサ)
アおおそれながら わたしゃ山家のソーリャ(アドッコイサーノドッコイサ)
ア山中(さんちゅう)や住めば 声も立たなきゃソーリャ(アドッコイサーノドッコイサ)
ア文句さも知らぬ 知らぬながらもソーリャ(アドッコイサーノドッコイサ)
ア一つは口説く 暗い夜道にゃソーリャ(アドッコイサーノドッコイサ)

ア提灯が頼り 船に乗るならソーリャ(アドッコイサーノドッコイサ)
ア船頭さんが頼り 痩せた畑にゃソーリャ(アドッコイサーノドッコイサ)
ア肥やしが頼り 村の娘さんはソーリャ(アドッコイサーノドッコイサ)
ア若い衆が頼り そして若い衆はソーリャ(アドッコイサーノドッコイサ)
ア娘さんが頼り 下手な音頭取りソーリャ(アドッコイサーノドッコイサ)
ア囃子が頼り 誰もどなたもソーリャ(アドッコイサーノドッコイサ)
ア囃子を頼む 囃子あるならソーリャ(アドッコイサーノドッコイサ)
ア暫く話す 一にゃ乙(きのと)のソーリャ(アドッコイサーノドッコイサ)
ア大日如来 二にゃ新潟のソーリャ(アドッコイサーノドッコイサ)
ア白山様じゃ 三にゃ讃岐のソーリャ(アドッコイサーノドッコイサ)
ア金比羅様よ 四にゃ信濃のソーリャ(アドッコイサーノドッコイサ)
ア善光寺様じゃ 五つ出雲のソーリャ(アドッコイサーノドッコイサ)
ア大社の宮よ 六にゃ六角堂のソーリャ(アドッコイサーノドッコイサ)
ア六地蔵様よ 七つ七尾のソーリャ(アドッコイサーノドッコイサ)
ア天神様じゃ 八つ八幡のソーリャ(アドッコイサーノドッコイサ)
ア八幡様よ 九つ高野のソーリャ(アドッコイサーノドッコイサ)
ア弘法大師 十じゃところのソーリャ(アドッコイサーノドッコイサ)
ア氏神様よ こんなひょうひゃくソーリャ(アドッコイサーノドッコイサ)
ア文句さの外よ さてもこれからソーリャ(アドッコイサーノドッコイサ)
※以下、唄ばやし同様
○ア文句さにかかる おらが住む町ソーリャ
アこの白鳥は 飛騨と美濃とのソーリャ
ア御国の境 水を分かちしソーリャ
ア大日岳 峰の小笹にソーリャ
ア溜まりし露が 落ちて流れてソーリャ  
ア泉となりて 谷と谷とがソーリャ
ア寄り集まりて 川と流れてソーリャ  
ア滝ともなりて ここに名高きソーリャ
ア阿弥陀ケ滝は 清き長良のソーリャ
ア源(もとい)となりて 滝の飛沫でソーリャ 
ア夏寄せつけぬ 右の坂路ソーリャ
ア曲りて登る 行けば程なくソーリャ
ア桧の峠 ここを下ればソーリャ 
ア石徹石(いしとろ)村で 音に聞こえしソーリャ
ア加賀白山を 伐りて開きしソーリャ
ア泰澄(たいちょう)大師 高き石段ソーリャ
ア登りて行けば ここに貴きソーリャ
ア虚空蔵菩薩 祀る社をソーリャ
ア過ぎゆくならば ここに威徳寺ソーリャ

アさて円周寺 上(かみ)の在所のソーリャ
ア中居の宮居 神の鎮まるソーリャ
ア社(やしろ)の彫りは 粟や鶉(うずら)のソーリャ
ア見事なものよ 国は信濃のソーリャ 
ア諏訪なる村の その名立川ソーリャ
ア昌啓(まさたか)殿の 技のかぎりのソーリャ
ア名作物よ ここの村にはソーリャ
アその昔より 秘めし幾多のソーリャ
ア咄もあれど 奥の大杉ソーリャ
ア観て帰るなら ここは前谷ソーリャ
ア村間が池や 千田野 歩岐島ソーリャ
ア忘れてならぬ 昔義民のソーリャ
ア百姓達の 聞くも語るもソーリャ
ア涙の種よ 寺のその名はソーリャ
ア悲願寺様じゃ 前を流るるソーリャ
ア長良の川を 橋を渡ればソーリャ
ア平家が平 さてもこれからソーリャ
ア長滝村へ 行けば程なくソーリャ
ア白山様と 音に聞こえしソーリャ

ア長滝寺様と 共に貴きソーリャ
ア宝を残す 年の始めのソーリャ
ア六日の祭り 六日祭りのソーリャ
ア延年こそは 世にも希なるソーリャ
ア尊き舞よ 今も昔もソーリャ
ア受け継がれける 銀杏坂をばソーリャ
ア下りて来れば ここは名に負うソーリャ
ア高五郎谷で 過ぎし昔のソーリャ
アその物語 おまむ小源治ソーリャ
ア悲恋の桜 おまむ小源治ソーリャ
ア蕾のままで 散りてその名をソーリャ
ア後の世まで 今に伝えてソーリャ
ア聞く人々の 袖に涙のソーリャ
アしずくが光る 散りて悲しきソーリャ
ア桜の下を 通り過ぎればソーリャ
アここ二日町 村に三社のソーリャ
ア鎮守の宮居 秋の祭りのソーリャ
ア八幡の踊り 笛や太鼓にソーリャ
ア薙刀(なぎなた)奴(やっこ) もぐら取り喰うソーリャ

ア神楽の獅子よ 寺に詣りてソーリャ
ア坂をば下る 足を速めてソーリャ
ア北条が原 此処を過ぎればソーリャ
ア小駄良(こだら)と云うて 美濃と越前ソーリャ
アお国の境 向小駄良のソーリャ
ア牛の仔見やれ 親が黒けりゃソーリャ
アその子も黒い 春は藤路のソーリャ
ア番所の桜 尋ね聞くならソーリャ
ア武蔵の手植え ここのお寺はソーリャ
ア円覚寺様で 宮は白山ソーリャ
ア御明神様よ その名気高きソーリャ
ア名も白鳥と 飛騨や越前ソーリャ
ア八幡町へ 路を分岐しソーリャ
ア要の町よ 人の行き交いソーリャ
ア賑わいければ 今も昔もソーリャ
アこの後までも 伸びて栄ゆるソーリャ
アこの白鳥は 水も清いがソーリャ
ア人情も厚い 人は死してもソーリャ
アその名を残す 今に讃えてソーリャ

ア義民の太鼓 春は三月ソーリャ
ア桜が咲いて 四方の山々ソーリャ
ア若葉が繁る 夏は長良にソーリャ
ア鮎釣る人や 夜は名に負うソーリャ
ア白鳥踊り 音頭取る子はソーリャ
ア櫓の上よ 三味や太鼓にソーリャ
ア合わせて踊る 踊るあの娘のソーリャ
ア浴衣や下駄も 笛の音色にソーリャ
ア浮かれて踊る 吹けて夜長にソーリャ
ア蛍も舞えば 川の瀬音にソーリャ
ア河鹿も鳴きて さてもこれからソーリャ
ア氏神様へ 行けば程なくソーリャ
ア大きな鳥居 くぐり登ればソーリャ
アお庭も広く 広いお庭にソーリャ
ア神鎮まれる 神を祀れるソーリャ
アお社こそは 志比の工匠(たくみ)のソーリャ
ア作かに想う 蛙又やらソーリャ
ア海老高梁の あまた数あるソーリャ
アお彫りの内で 中で優れしソーリャ
アその彫りこそは かめの中なるソーリャ

ア酒酌み上げて 受ける盃ソーリャ
ア両手に捧げ 見上げ見下ろすソーリャ
ア猩々こそは 世にも希なるソーリャ
ア名作物で 広くその名をソーリャ
ア世に知られたり 社の欅はソーリャ
ア往時のままに 今に聳えてソーリャ
ア池に影映す 少し離れてソーリャ
ア欅の下に 赤き鳥居のソーリャ
ア稲荷を祀る ここの社をソーリャ
ア作りし工匠 その名白石ソーリャ
ア地元の人よ 秋は稔りのソーリャ
ア黄金の波に 吹くや微風(そよかぜ)ソーリャ
ア日和もよくて 村の祭りのソーリャ
ア太鼓が響く ほんに良いとこソーリャ
ア俺等の町は さても西坂ソーリャ
ア越え行くなれば ここは牛道ソーリャ
ア中西村で 寺はその名がソーリャ
ア円徳寺様で 屋根が二重でソーリャ  
ア見事なお寺 ここのお庭のソーリャ

ア松枝こそは 雪を降らしてソーリャ
ア眺めて見たや 池に緋鯉やソーリャ
ア真鯉も浮いて ほんにこの寺ソーリャ
アよいお寺様 少し登りてソーリャ
ア右手の方に 村の鎮守のソーリャ
アお宮がござる さても左へソーリャ
ア過ぎ行くならば ここは原口ソーリャ
ア仏乗寺様よ 見地右手ソーリャに
ア眺めて登る 冷水をばソーリャ
ア過ぎ行くなれば ここは村名をソーリャ
ア阿多岐というて 宮居二つにソーリャ
アお寺もござる ここのお寺ソーリャは
ア値誓寺様で 御拝柱のソーリャ
ア木鼻の竜は 他所に見られぬソーリャ
ア見事なもので 志比の工匠のソーリャ
ア作かに想う 村の家数はソーリャ
ア九十と有余 路も開けてソーリャ
ア平和な村よ さても横平ソーリャ
ア越え行くならば ここは六の里ソーリャ

ア折(おり)高宮(こうきゅう)で 川の向こうソーリャに
ア位山(いやま)と云うて 神の鎮まるソーリャ
ア社もござる またも曲がりてソーリャ
ア羽根戸を渡る ここはその名もソーリャ
ア藤林とて 此処のお宮ソーリャの
アお祭りこそは 撓い四本でソーリャ
ア見事な踊り 声が自慢のソーリャ
ア音頭が響く さても六の里ソーリャ
ア長閑な里よ 朝日昇れるソーリャ
ア東に向かい 畑が谷へソーリャと
ア差し掛かるなら 高き石段ソーリャ
ア左に登る ここのお寺はソーリャ
ア善勝寺様で ここのお堂はソーリャ
ア寄棟造り 類い希なるソーリャ
アお寺でござる 名残惜しみてソーリャ
ア栃洞村へ 宮に詣りてソーリャ
ア柏手打てば あたり静けくソーリャ
ア谺し響く ほんに栃洞ソーリャ
ア静かなところ 此処は白尾のソーリャ

ア麓の村で 清き流れのソーリャ
ア水豊かにて 鱒やあまごがソーリャ
ア川面に踊る 杉や檜ソーリャが
ア峰まで続く 川を渡りてソーリャ
ア向かいに越せば 寺の名に似たソーリャ
ア源蔵寺村よ 下は橋詰ソーリャ
アお寺が二か所 上は光連ソーリャ
ア下光雲寺 鐘を吊るせしソーリャ
ア御堂の彫りは 志比か信濃のソーリャ
ア工匠の作か さても橋越えソーリャ
ア渡りてくれば 野添村へとソーリャ
ア足踏み入れる 右に牧戸をソーリャ
ア眺めて通り 行けば程なくソーリャ
ア貴船のお宮 景色眺めてソーリャ
ア木陰で休む 猛き流れはソーリャ
ア牛道川よ 絵にも描けないソーリャ
ア自然の姿 波は岩噛みソーリャ
ア飛沫を上げる 眺めつきないソーリャ
ア貴船のお宮 別れ六つ城ソーリャ

ア跡登るなら 在りし昔のソーリャ
ア強者達の 井戸や石垣ソーリャ
ア名残をとどめ 尽きぬ名残のソーリャ
ア六つ橋渡り 羽土を過ぎゆきソーリャ
ア恩地へ寄れば 元は陰地とソーリャ
ア書いたる村の 昔懐かしソーリャ
ア恩地の郷は 那留の鳴る石ソーリャ
ア倖せうすく 振られ振られてソーリャ
ア世間を渡る 此処は那留が野ソーリャ
ア張〆谷と 今も義民のソーリャ
ア咄に残る さてもお寺とソーリャ
アお宮へ詣り 下り行くならソーリャ
ア日枝洞過ぎて 川の流れにソーリャ
ア沿い下るなら かじや洞とてソーリャ
ア中津屋村よ ここは大和とソーリャ
ア境の村で あまた古墳のソーリャ
ア残れるところ ここに応仁のソーリャ
ア帝を祀る 祀るお宮はソーリャ
ア八幡様よ 上り来るならソーリャ

ア白山様で 何故かその名はソーリャ
ア十禅寺とて 世にも名高きソーリャ
アあの嘉喜(かき)踊り 県の無形のソーリャ
ア文化財なり 講堂洞にはソーリャ
ア城址もありて 厩返しのソーリャ
ア千人塚や 幾多古墳のソーリャ
ア中津屋過ぎて 野里村なるソーリャ
ア大中駅を 過ぎて通りてソーリャ
ア大島村の 村の守護のソーリャ
ア白山様よ 村の祭りのソーリャ
ア御伊勢の神楽 見るも哀れなソーリャ
ア葛の葉舞いて 島にあらねどソーリャ
アこの大島は 昔県立ソーリャ
ア種畜場ありて 数多名馬もソーリャ
ア生み育てたり 今は名残のソーリャ
ア松並木かな 北へ登りてソーリャ
ア川越え下る 越佐村へとソーリャ
ア立ち寄るならば 上と下とのソーリャ
ア部落に分かれ 上の部落のソーリャ

ア専龍寺様 庭に植えたるソーリャ
アこの桜こそ 昔泰澄(たいちょう)ソーリャ
ア大師の手植え 清き長良のソーリャ
ア流れの川を 川の渡りてソーリャ
ア東へ越せば ここはその名はソーリャ
ア為真村で 村の中をばソーリャ
ア牛道川が 川が流れてソーリャ
ア部落を分けて 北に白山ソーリャ
ア鎮守の杜よ 頃は天保のソーリャ
ア終わりの頃に 始められたるソーリャ
アこのおまつりは 鼓太鼓にソーリャ
ア薙刀(なぎなた)奴 天狗おかめやソーリャ
ア坊主も居れば 吹くや横笛ソーリャ
ア音色も良けりゃ 田打ち加えてソーリャ
ア揃えて踊る さても東をソーリャ
ア眺むるならば ここに小高きソーリャ
アお山がござる これのお山にソーリャ
アその頂上に 祀る秋葉のソーリャ
ア社も在りて ここのお山はソーリャ

ア飯盛山と 昔朝倉ソーリャ
ア砦となせし 村に三ケ寺ソーリャ
ア正円坊や 上に登ればソーリャ
ア正法寺とて 北に行くならソーリャ
ア曽部知の川の 川の畔のソーリャ
ア養林寺とて 響く明六つソーリャ
ア七つの鐘が 鐘が鳴るまでソーリャ
ア白鳥おどり 最早夜明けもソーリャ
ア間近いければ ここらあたりでソーリャ
アとめおきまする 想い残せしソーリャ
ア事もあろう 足らぬところはソーリャ
アお許しなさりよ 誰もどなたもソーリャ
アご苦労様よ ほんによいとこソーリャ
ア俺等の町は 
○唄の続きはソーリャ
アこの後あれど あまり長いのはソーリャ
アおもしろけれど 私ゃここらでソーリャ
ア止めおきますで 

老 坂
(アラヨイサカサッサイ)
○一にゃ朝顔ヨイ二にゃかきつばた(アラヨイサカサッサイ) 朝顔ヨイ二にゃかきつばた(アラヨイサカサッサイ)
三にゃ下がり藤ヨイ四にゃししぼたん(アラヨイサカサッサイ) 下がり藤ヨイ四にゃししぼたん(アラヨイサカサッサイ)
五つ位山のヨイ千本桜(アラヨイサカサッサイ) 位山のヨイ千本桜(アラヨイサカサッサイ)
六つ紫ヨイ桔梗の花よ(アラヨイサカサッサイ) 紫ヨイ桔梗の花よ(アラヨイサカサッサイ)
七つ南天ヨイ八つ山桜(アラヨイサカサッサイ) 南天ヨイ八つ山桜(アラヨイサカサッサイ)
九では九月のヨイちゃぼ菊の花(アラヨイサカサッサイ) 九月のヨイちゃぼ菊の花(アラヨイサカサッサイ)
十で所のヨイ山吹の花(アラヨイサカサッサイ) 所のヨイ山吹の花(アラヨイサカサッサイ)
こんなひょうひゃくヨイ文句やの外よ(アラヨイサカサッサイ) ひょうひゃくヨイ文句やの外よ(アラヨイサカサッサイ)
さてもこれからヨイ文句にかかる(アラヨイサカサッサイ) これからヨイ文句にかかる(アラヨイサカサッサイ)

                                                          ※以下、唄ばやし省略
<鈴木主水白糸の口説>
○花のお江戸のヨイそのかたわらに お江戸のヨイそのかたわらに
世にも珍しヨイ心中話 珍しヨイ心中話
ところ何処よとヨイ尋ねて聞けば 何処よとヨイ尋ねて聞けば
ところ四谷のヨイ新宿町よ 四谷のヨイ新宿町よ
紺の暖簾にヨイ桔梗の紋は 暖簾にヨイ桔梗の紋は
音に聞こえしヨイ橋本屋とて 聞こえしヨイ橋本屋とて
幾多女郎衆のヨイあるその中で 女郎衆のヨイあるその中で
お職女郎のヨイ白糸こそは 女郎のヨイ白糸こそは
年は十九でヨイ当世の育ち 十九でヨイ当世の育ち
器量よければヨイ皆人たちは よければヨイ皆人たちは
我も我もとヨイ名指してあがる 我もとヨイ名指してあがる
わけてお客はヨイ殿方と聞けば お客はヨイ殿方と聞けば
春は花咲くヨイ青山辺の 花咲くヨイ青山辺の
鈴木主水(もんど)とヨイ云う侍よ 主水とヨイ云う侍よ
女房持ちにてヨイ二人の子供 持ちにてヨイ二人の子供
五つ三つはヨイいたずら盛り 三つはヨイいたずら盛り

二人子供のヨイあるその中に 子供のヨイあるその中に
今日も明日もとヨイ女郎買いばかり 明日もとヨイ女郎買いばかり
見るに見かねたヨイ女房お安 見かねたヨイ女房お安
ある日我が夫ヨイ主水に向かい我が夫ヨイ主水に向かい
これさ我が夫ヨイ主水様よ 我が夫ヨイ主水様よ
私ゃ女房でヨイ妬くのじゃないが 女房でヨイ妬くのじゃないが
二人の子供はヨイ伊達には持たぬ 子供はヨイ伊達には持たぬ
十九二十のヨイ身じゃあるまいし 二十のヨイ身じゃあるまいし
人に意見もヨイ云う年頃に 意見もヨイ云う年頃に
止めておくれよヨイ女郎買いばかりゃ おくれよヨイ女郎買いばかりゃ
金の成る木はヨイ持ちゃさんすまい 成る木はヨイ持ちゃさんすまい
どうせ切るならヨイ六段目には 切るならヨイ六段目には
連れて逃げるかヨイ心中をするか 逃げるかヨイ心中をするか
二つ一つのヨイ思案と見える 一つのヨイ思案と見える
しかし二人のヨイ子供が不憫 二人のヨイ子供が不憫
子供二人とヨイ私の身をば 二人とヨイ私の身をば
末はどうするヨイ主水様よ どうするヨイ主水様よ
いえば主水はヨイ立腹顔で 主水はヨイ立腹顔で
何を小癪なヨイ女房の意見 小癪なヨイ女房の意見

己が心でヨイ止まないものを 心でヨイ止まないものを
女房伊達らのヨイ意見で止まぬ 伊達らのヨイ意見で止まぬ
愚痴なそちよりヨイ女郎衆が可愛い そちよりヨイ女郎衆が可愛い
それが嫌ならヨイ子供を連れて 嫌ならヨイ子供を連れて
そちのお里へヨイ出て行きゃさんせ お里へヨイ出て行きゃさんせ
愛想つかしのヨイ主水様よ つかしのヨイ主水様よ
そこで主水はヨイこやけとなりて 主水はヨイこやけとなりて
出でて行くのがヨイ女郎買い姿 行くのがヨイ女郎買い姿
あとでお安はヨイ聞く悔しさと お安はヨイ聞く悔しさと
如何に男のヨイ我が儘じゃとて 男のヨイ我が儘じゃとて
死んで見せよとヨイ覚悟はすれど 見せよとヨイ覚悟はすれど
五つ三つのヨイ子に引かされて 三つのヨイ子に引かされて
死ぬに死なれずヨイ嘆いておれば 死なれずヨイ嘆いておれば
五つなる子がヨイそばへと寄りて なる子がヨイそばへと寄りて
これさ母さんヨイ何故泣きゃさんす 母さんヨイ何故泣きゃさんす
気色悪けリャヨイお薬あがれ 悪けリャヨイお薬あがれ
どうぞ痛けりゃヨイさすりて上がる 痛けりゃヨイさすりて上がる
坊が泣きますヨイ乳下さんせ 泣きますヨイ乳下さんせ
云えばお安はヨイ顔ふりあげて お安はヨイ顔ふりあげて

どこも痛くてヨイ泣くのじゃないが 痛くてヨイ泣くのじゃないが
幼けれどもヨイよく聞け坊や けれどもヨイよく聞け坊や
あまり父様ヨイ身持ちが悪い 父様ヨイ身持ちが悪い
意見いたせばヨイ小癪な奴と いたせばヨイ小癪な奴と
たぶさ掴んでヨイちょうちゃくなさる 掴んでヨイちょうちゃくなさる
さても無念なヨイ夫の心 無念なヨイ夫の心
自害しよかとヨイ覚悟はすれど しよかとヨイ覚悟はすれど
あとに残りしヨイそち等が不憫 残りしヨイそち等が不憫
どうせ女房のヨイ意見じゃ止まぬ 女房のヨイ意見じゃ止まぬ
さらばこれからヨイ新宿町の これからヨイ新宿町の
女郎衆頼んでヨイ意見をしよと 頼んでヨイ意見をしよと
三つなる子をヨイ背中に負い なる子をヨイ背中に負い
五つなる子のヨイ手を引きまして なる子のヨイ手を引きまして
出でて行くのがヨイさも哀れなり行くのがヨイさも哀れなり
行けば程なくヨイ新宿町よ 程なくヨイ新宿町よ

店ののれんはヨイ橋本屋とて のれんはヨイ橋本屋とて
見れば表にヨイ主水の草履 表にヨイ主水の草履
それを見るよりヨイ小職を招き 見るよりヨイ小職を招き
わしはこちらのヨイ白糸さんに こちらのヨイ白糸さんに
どうか会いたいヨイ会わせておくれ 会いたいヨイ会わせておくれ
あいと小職はヨイ二階へ上がり 小職はヨイ二階へ上がり
これさ姉さんヨイ白糸さんよ 姉さんヨイ白糸さんよ
どこのお女中じゃヨイ知れない方が お女中じゃヨイ知れない方が
何かお前にヨイ用あるそうな お前にヨイ用あるそうな
会うてやらんせヨイ白糸さんよ やらんせヨイ白糸さんよ
言えば白糸ヨイ二階を下る 白糸ヨイ二階を下る
わしを尋ねるヨイお女中と言うは 尋ねるヨイお女中と言うは
お前さんかえヨイ何用でござる さんかえヨイ何用でござる
言えばお安はヨイは初めて会うて お安はヨイは初めて会うて
わしは青山ヨイ主水が女房 青山ヨイ主水が女房
お前見かけてヨイ頼みがござる 見かけてヨイ頼みがござる
主水身分はヨイ勤めの身分 身分はヨイ勤めの身分
日々の勤めをヨイおろかにすれば 勤めをヨイおろかにすれば
末はご扶持もヨイはなれる程に ご扶持もヨイはなれる程に

ここの道理をヨイよく聞き分けて 道理をヨイよく聞き分けて
どうぞ我が夫ヨイ主水様に 我が夫ヨイ主水様に
意見なされてヨイ白糸さんよ なされてヨイ白糸さんよ
せめてこの子がヨイ十にもなれば この子がヨイ十にもなれば
昼夜上げずめヨイさりよとままよ 上げずめヨイさりよとままよ
または私がヨイ去られた後で 私がヨイ去られた後で
お前女房にならんすとても 女房にならんすとても
どうぞこれからヨイ主水殿が これからヨイ主水殿が
三度来たならヨイ一度は上げて 来たならヨイ一度は上げて
二度は意見をヨイして下さんせ 意見をヨイして下さんせ
言えば白糸ヨイ言葉に詰まり 白糸ヨイ言葉に詰まり
わしは勤めのヨイ身の上なれば 勤めのヨイ身の上なれば
女房持ちとはヨイゆめにも知らず 持ちとはヨイゆめにも知らず
ほんに今までヨイ懇親にしたが 今までヨイ懇親にしたが
さぞや憎かろヨイお腹が立とうが 憎かろヨイお腹が立とうが
わしもこれからヨイ主水様に これからヨイ主水様に
意見しますよヨイお帰りなされ しますよヨイお帰りなされ
あとで二人のヨイ子供を連れて 二人のヨイ子供を連れて
お安我が家へヨイ早帰りけり 我が家へヨイ早帰りけり

ついに白糸ヨイ主水に向かい 白糸ヨイ主水に向かい
お前女房がヨイ子供を連れて 女房がヨイ子供を連れて
わしを頼みにヨイ来ました程に 頼みにヨイ来ました程に
今日はお帰りヨイ泊めてはまずい お帰りヨイ泊めてはまずい
言えば主水はヨイニッコと笑い 主水はヨイニッコと笑い
おいておくれよヨイ久しいものよ おくれよヨイ久しいものよ
ついにその日もヨイ居続けなさる その日もヨイ居続けなさる
待てど暮らせどヨイ帰りもしない 暮らせどヨイ帰りもしない
お安子供をヨイ相手にいたし 子供をヨイ相手にいたし
最早その日もヨイ早明けければ その日もヨイ早明けければ
支配方よりヨイお使いありて 方よりヨイお使いありて
主水身持ちがヨイほらつく故に 身持ちがヨイほらつく故に
扶持も何かもヨイ召し上げられる 何かもヨイ召し上げられる
あとでお安はヨイ途方に暮れる お安はヨイ途方に暮れる
思案しかねてヨイ当惑いたし しかねてヨイ当惑いたし
扶持にはなれてヨイ永らえおれば はなれてヨイ永らえおれば
馬鹿なたわけとヨイ云われるよりも たわけとヨイ云われるよりも
武士の女房じゃヨイ自害をしよと 女房じゃヨイ自害をしよと
二人子供をヨイ寝かしておいて 子供をヨイ寝かしておいて

硯引き寄せヨイ墨擦り流し 引き寄せヨイ墨擦り流し
落ちる涙がヨイ硯の水よ 涙がヨイ硯の水よ
涙ながらにヨイ書き置きいたし ながらにヨイ書き置きいたし
白き木綿でヨイ我が身を巻いて 木綿でヨイ我が身を巻いて
二人子供のヨイ寝たのを見れば 子供のヨイ寝たのを見れば
可愛い可愛いでヨイ子に引かさるる 可愛いでヨイ子に引かさるる
思い切り刃をヨイ逆手に持ちて 切り刃をヨイ逆手に持ちて
ぐっと自害のヨイ刃の下で 自害のヨイ刃の下で
二人子供はヨイ目を覚まし 子供はヨイ目を覚まし
三つなる子はヨイ乳にとすがりなる子はヨイ乳にとすがり
五つなる子はヨイ背なにとすがり なる子はヨイ背なにとすがり
これさ母さんヨイノウ母さんと 母さんヨイノウ母さんと
幼心でヨイ早泣くばかり 心でヨイ早泣くばかり
主水それとはヨイゆめにも知らず それとはヨイゆめにも知らず
女郎屋立ち出でヨイホロホロ酔いで 立ち出でヨイホロホロ酔いで
女房じらしのヨイ小唄にかえる じらしのヨイ小唄にかえる
表口よりヨイ今戻ったと 口よりヨイ今戻ったと
子供二人はヨイ駆け出しながら 二人はヨイ駆け出しながら
申し父さんヨイお帰りなるか 父さんヨイお帰りなるか

何故か母さんヨイ今日に限り 母さんヨイ今日に限り
ものも言わずにヨイ一日寝やる 言わずにヨイ一日寝やる
ほんに今までヨイいたずらしたが 今までヨイいたずらしたが
仰意に背かぬヨイノウ父さんよ 背かぬヨイノウ父さんよ
どうか許してヨイ下さりましと 許してヨイ下さりましと
聞いて主水はヨイ驚きながら 主水はヨイ驚きながら
あいの唐紙ヨイさらりと開けて 唐紙ヨイさらりと開けて
見ればお安はヨイ血潮に染まる お安はヨイ血潮に染まる
わしが心がヨイ悪いが故に 心がヨイ悪いが故に
自害したかよヨイ不憫なことよ したかよヨイ不憫なことよ
涙ながらにヨイ二人の子供 ながらにヨイ二人の子供
膝に抱き上げヨイ可愛いや程に 抱き上げヨイ可愛いや程に
言えば子供はヨイ死骸にすがり 子供はヨイ死骸にすがり
申し母さんヨイ何故死にました 母さんヨイ何故死にました
私二人はヨイどうなりましょう 二人はヨイどうなりましょう
嘆く子供をヨイ振り捨ておいて 子供をヨイ振り捨ておいて
檀那寺へとヨイ急ぎて行きゃる 寺へとヨイ急ぎて行きゃる
戒名貰うてヨイ我が家へ帰り 貰うてヨイ我が家へ帰り
哀れなるかやヨイ女房の死骸 なるかやヨイ女房の死骸

こもに包んでヨイ背中に背負って 包んでヨイ背中に背負って
三つなる子のヨイ手を引き連れて なる子のヨイ手を引き連れて
行けばお寺でヨイ葬りまする お寺でヨイ葬りまする
是非もなくなくヨイ我が家へ帰り なくなくヨイ我が家へ帰り
女房お安のヨイ書置き見れば お安のヨイ書置き見れば
あまり勤めヨイ放埒故に 勤めヨイ放埒故に
扶持も何かもヨイ召し上げられる 何かもヨイ召し上げられる
その上門前ヨイ払いを読みて 門前ヨイ払いを読みて
さても主水はヨイ仰天いたし 主水はヨイ仰天いたし
子供泣くのをヨイそのまま置いて 泣くのをヨイそのまま置いて
急ぎ行くのはヨイ白糸方へ 行くのはヨイ白糸方へ
これはお出でかヨイ主水様よ お出でかヨイ主水様よ
したが今宵はヨイお帰りなさい 今宵はヨイお帰りなさい
言えば主水はヨイその物語り 主水はヨイその物語り
襟に掛けたるヨイ戒名出して 掛けたるヨイ戒名出して
見せりゃ白糸ヨイ手に取り上げて 白糸ヨイ手に取り上げて
わしが心がヨイ悪いが故に 心がヨイ悪いが故に
お安さんにもヨイ自害をさせた さんにもヨイ自害をさせた
さればこれからヨイ三途の川も これからヨイ三途の川も
手を引きましょうヨイお安さん 引きましょうヨイお安さん

言えば主水はヨイしばしと止め 主水はヨイしばしと止め
わしとお前とヨイ心中をしては お前とヨイ心中をしては
親方さんへのヨイ言い訳が立たぬ さんへのヨイ言い訳が立たぬ
お前死なずにヨイ永らえさんせ 死なずにヨイ永らえさんせ
二人子供をヨイ成人さして 子供をヨイ成人さして
廻回頼むよヨイ主水様よ 頼むよヨイ主水様よ
言うて白糸ヨイ一間へ入りて 白糸ヨイ一間へ入りて
数多朋輩ヨイ女郎衆を招き 朋輩ヨイ女郎衆を招き
譲り物とてヨイ櫛こうがいを 物とてヨイ櫛こうがいを
やれは小春はヨイ不思議に思い 小春はヨイ不思議に思い
これさ姉さんヨイどうしたわけよ 姉さんヨイどうしたわけよ
今日に限りてヨイ譲りをいたし 限りてヨイ譲りをいたし
それにお顔もヨイすぐれもしない お顔もヨイすぐれもしない
言えば白糸ヨイよく聞け小春 白糸ヨイよく聞け小春
わしは幼いヨイ七つの年に 幼いヨイ七つの年に
人に売られてヨイ郭の里で 売られてヨイ郭の里で
辛い勤めもヨイ早十二年 勤めもヨイ早十二年
務めましたよヨイ主水様に ましたよヨイ主水様に
日頃三年ヨイ懇意にしたが 三年ヨイ懇意にしたが

今度わし故ヨイご扶持もはなれ わし故ヨイご扶持もはなれ
またも女房にヨイ自害をさせて 女房にヨイ自害をさせて
それに私がヨイ永らえおれば 私がヨイ永らえおれば
お職女郎のヨイ意気地が立たぬ 女郎のヨイ意気地が立たぬ
死んで意気地をヨイ立てねばならぬ 意気地をヨイ立てねばならぬ
早くそなたもヨイ身儘になりて そなたもヨイ身儘になりて
わしがためにとヨイ向花頼む ためにとヨイ向花頼む
言うて白糸ヨイ一間へ入りて 白糸ヨイ一間へ入りて
口の内にてヨイただ一言葉 内にてヨイただ一言葉
涙ながらにヨイノウお安さん ながらにヨイノウお安さん
私故にてヨイ命を捨てて 故にてヨイ命を捨てて
さぞやお前はヨイ無念であろが お前はヨイ無念であろが
死出の山路もヨイ三途の川も 山路もヨイ三途の川も
ともに私がヨイ手を引きましょう 私がヨイ手を引きましょう
南無と云う声ヨイ此の世の別れ 云う声ヨイ此の世の別れ
数多朋輩ヨイ皆立ち寄りて 朋輩ヨイ皆立ち寄りて
人に情けのヨイ白糸さんが 情けのヨイ白糸さんが
主水さん故ヨイ命を捨てる さん故ヨイ命を捨てる
残り惜しげにヨイ朋輩達が 惜しげにヨイ朋輩達が

別れ惜しみてヨイ泣くのも道理 惜しみてヨイ泣くのも道理
今は主水もヨイ詮方なしに 主水もヨイ詮方なしに
思いひそかにヨイ我が家へ帰り ひそかにヨイ我が家へ帰り
子供二人にヨイ譲りを置いて 二人にヨイ譲りを置いて
直ぐにそのままヨイ一間へ入りて そのままヨイ一間へ入りて
重ね重ねのヨイ身の誤りを 重ねのヨイ身の誤りを
我と我が身のヨイ一生捨つる 我が身のヨイ一生捨つる
二人子供はヨイ取り残されて 子供はヨイ取り残されて
西も東もヨイわきまえ知らず 東もヨイわきまえ知らず
幼心はヨイ哀れなものよ 心はヨイ哀れなものよ
数多情死はヨイあるとは云えど 情死はヨイあるとは云えど
義理を立てたりヨイ意気地を立つる 立てたりヨイ意気地を立つる
心合ったるヨイ三人共に 合ったるヨイ三人共に
聞くも哀れなヨイ話でござる 哀れなヨイ話でござる
○唄の続きはヨイこの後あれど 続きはヨイこの後あれど
ここらあたりでヨイ取り止めまする あたりでヨイ取り止めまする

世 栄
(ア ドッコイドッコイドッコイサ ドッコイサでドッコイショイ)
○アリャサここに過ぎにしその物語り(アドッコイショイ)ドウジャイナそのもの語り
(ア ドッコイドッコイドッコイサ ドッコイサでドッコイショイ) 
※以下、唄ばやし省略
アリャサ六十四州は 国広けれど ドウジャイナ国広けれど
アリャサ恋と無情は 不変なものよ ドウジャイナ不変なものよ
アリャサ明治二十一 旧三月の ドウジャイナ旧三月の
アリャサ中の五日に 西洞村に ドウジャイナ西洞村に
アリャサさても哀れな 心中の話 ドウジャイナ心中の話
アリャサ村でなにがし 徳左衛門の ドウジャイナ徳左衛門の
アリャサ一人娘に お梅とありて ドウジャイナお梅とありて
アリャサ小野小町か てるての姫か ドウジャイナてるての姫か
アリャサ顔は桜で その肌雪よ ドウジャイナその肌雪よ
アリャサ近所隣の 若い衆達が ドウジャイナ若い衆達が
アリャサお梅お梅と 恋する中に ドウジャイナ恋する中に
アリャサ大家伊平の 一人の息子 ドウジャイナ一人の息子

アリャサ年は二十五で 寅造とありて ドウジャイナ寅造とありて
アリャサ近いころまで 兵隊務め ドウジャイナ兵隊務め
アリャサ村に帰りて お梅を見初め ドウジャイナお梅を見初め
アリャサそこで二人は 契りを結び ドウジャイナ契りを結び
アリャサいとし恋しと その日を送る ドウジャイナその日を送る
アリャサそれはよけれど 踊り子様よ ドウジャイナ踊り子様よ
アリャサ花の盛りも 過ぎにし頃に ドウジャイナ過ぎにし頃に
アリャサ大家伊兵の 嫁取り話 ドウジャイナ嫁取り話
アリャサ村の庄屋の 重左衛門の ドウジャイナ重左衛門の
アリャサ一人娘に おたのとありて ドウジャイナおたのとありて
アリャサ年が二十二で 利発な者よ ドウジャイナ利発な者よ
アリャサそれが良かろと 相談決まり ドウジャイナ相談決まり
アリャサ伯父さ頼んで 寅造に意見 ドウジャイナ寅造に意見
アリャサそこで寅造は 伯父さに意見 ドウジャイナ伯父さに意見
アリャサ私も今年は 二十五の厄よ ドウジャイナ二十五の厄よ
アリャサ嫌でござると いろいろ言えど ドウジャイナいろいろ言えど
アリャサ伯父さ意見が 厳しき故に ドウジャイナ厳しき故に
アリャサはいと答えて その場を去りて ドウジャイナその場を去りて
アリャサそこで伯父さは 重左衛へ行きて ドウジャイナ重左衛へ行きて

アリャサここの嫁を 伊平が方へ ドウジャイナ伊平が方へ
アリャサ嫁に下され 仲人いたす ドウジャイナ仲人いたす
アリャサそこで重佐の 二親達も ドウジャイナ二親達も
アリャサ何かしゅうかい お任せいたす ドウジャイナお任せいたす
アリャサよろしゅう頼むと 挨拶いたす ドウジャイナ挨拶いたす
アリャサそこで祝儀の 日取りも決まり ドウジャイナ日取りも決まり
アリャサ日々に近づく 祝儀の日取り ドウジャイナ祝儀の日取り
アリャサそこで寅造は 思案に暮れて ドウジャイナ思案に暮れて
アリャサお梅方へと その夜に忍ぶ ドウジャイナその夜に忍ぶ
アリャサいとしお梅は 寅造に向かい ドウジャイナ寅造に向かい
アリャサわしを見捨てて 他から嫁を ドウジャイナ他から嫁を
アリャサ貰うお前は それでもよいが ドウジャイナそれでもよいが
アリャサわしのお腹は 早や五ヶ月よ ドウジャイナ早や五ヶ月よ
アリャサとてもこの身で 生きてはおれぬ ドウジャイナ生きてはおれぬ
アリャサわしが死んだら こう花立てて ドウジャイナこう花たてて
アリャサくる日命日 回向を頼む ドウジャイナ回向を頼む
アリャサ言えばお梅は寅造に向かい ドウジャイナ寅造に向かい
アリャサお梅よう聞け 私じゃがとても ドウジャイナ私じゃがとても
アリャサ好いて好んで 貰うでないが ドウジャイナ貰うでないが
アリャサ義理と義理とに 責め立てられて ドウジャイナ責め立てられて
アリャサ死なば諸共 心中をしようと ドウジャイナ心中をしようと
アリャサ言えばお梅も 顔振り上げて ドウジャイナ顔振り上げて
アリャサ嬉しゅうござるよ お前のお手に ドウジャイナお前のお手に
アリャサかけておくれりゃ わしゃ本望と ドウジャイナわしゃ本望と 
アリャサそこで二人は 忍んで出でて ドウジャイナ忍んで出でて
アリャサここよかしこと 探する内に ドウジャイナ探する内に
アリャサ夜明け近づく 人目にさわる ドウジャイナ人目にさわる
アリャサここが二人の 最期の場所と ドウジャイナ最期の場所と
アリャサ袂からして 酒取り出して ドウジャイナ酒取り出して
アリャサ娑婆の別れの 盃いたし ドウジャイナ盃いたし

アリャサお梅覚悟は よいかと言えば ドウジャイナよいかと言えば
アリャサさすがお梅は 片肌脱ぎて ドウジャイナ片肌脱ぎて
アリャサ首を差し出す 寅造が前に ドウジャイナ寅造が前に
アリャサ可愛いお梅の 首切り落とし ドウジャイナ首切り落とし
アリャサすぐに我が身も 自害をいたす ドウジャイナ自害をいたす
アリャサ最早明六つ 烏の声は ドウジャイナ烏の声は
アリャサ可愛い可愛いと 去り泣き渡る ドウジャイナ去り泣き渡る
アリャサさても哀れな 心中話 ドウジャイナ心中話
アリャサ後の世までも その名を残す ドウジャイナその名を残す
平井権八小紫>の口説
アリャサこれは過ぎにしその物語りドウジャイナその物語り
アリャサ国は中国その名も高きドウジャイナその名も高き
アリャサ武家の家老に一人の倅ドウジャイナ一人の倅
アリャサ平井権八直則こそはドウジャイナ直則こそは
アリャサ犬の喧嘩が遺恨となりてドウジャイナ遺恨となりて
アリャサ同じ家中の本庄氏をドウジャイナ本庄氏を
アリャサ打って立ち退き東をさしてドウジャイナ東をさして
アリャサ下る道にて桑名の渡しドウジャイナ桑名の渡し

アリャサ僅かばかりの船銭故にドウジャイナ船銭故に
アリャサあまた船頭衆に取り囲まれてドウジャイナ取り囲まれて
アリャサすでに命の危なきところドウジャイナ危なきところ
アリャサこれを見かねて一人の旅人ドウジャイナ一人の旅人
アリャサ平井助けて我が家へ連れるドウジャイナ我が家へ連れる
アリャサこれは名に負う東海道にドウジャイナ東海道に
アリャサその名熊高山賊なるがドウジャイナ山賊なるが
アリャサそれと権八ゆめにも知らずドウジャイナゆめにも知らず
アリャサその家内には美人がござるドウジャイナ美人がござる
アリャサ名をば亀菊蕾の花よドウジャイナ蕾の花よ
アリャサ見れば見るほどおとなし顔でドウジャイナおとなし顔で
アリャサその夜権八の寝間へと忍びドウジャイナ寝間へと忍び
アリャサ申し若さん武士さんよドウジャイナ武士さんよ
アリャサこの家在主は盗賊なるかドウジャイナ盗賊なるか
アリャサ知って泊まるか知らいであるかドウジャイナ知らいであるか
アリャサ今宵お命危のうござるドウジャイナ危のうござる
アリャサわしも三州の富豪の娘ドウジャイナ富豪の娘
アリャサ去年の暮れからこの家へとられドウジャイナこの家へとられ
アリャサ永の月日を涙で暮らすドウジャイナ涙で暮らす

アリャサ故郷恋しやさぞ両親がドウジャイナさぞ両親が
アリャサ案じさんすであろうと思うドウジャイナあろうと思う
アリャサお前見かねて頼みがござるドウジャイナ頼みがござる
アリャサどうぞ情けじゃ後生じゃほどにドウジャイナ後生じゃほどに
アリャサわしを連れ立ちこの家を逃げてドウジャイナこの家を逃げて
アリャサ口説きたてられ権八こそはドウジャイナ権八こそは
アリャサさすがよしある侍なればドウジャイナ侍なれば
アリャサその訳柄を残らず聞いてドウジャイナ残らず聞いて
アリャサさらばこの家の主を始めドウジャイナ主を始め
アリャサ手下盗賊皆斬り殺しドウジャイナ皆斬り殺し
アリャサお前故郷へお連れ申すドウジャイナお連れ申す
アリャサ二人密かに約束固めドウジャイナ約束固め
アリャサ娘亀菊立ち出で行きゃるドウジャイナ立ち出で行きゃる
アリャサそれと知らずに熊高こそはドウジャイナ熊高こそは
アリャサ手下数多にささやきければドウジャイナささやきければ
アリャサ今宵とめたる若侍のドウジャイナ若侍の
アリャサ腰にさしたる一振りこそはドウジャイナ一振りこそは
アリャサ黄金作りで名作物よドウジャイナ名作物よ
アリャサ二百両から先なる物じゃドウジャイナ先なる物じゃ
アリャサ彼を欺き連れ来たりしはドウジャイナ連れ来たりしは
アリャサそれを奪わん我らが工面ドウジャイナ我らが工面

アリャサ最早時間も夜半の頃よドウジャイナ夜半の頃よ
アリャサ奥の一間へ切り込みければドウジャイナ切り込みければ
アリャサ兼ねて権八心得たりとドウジャイナ心得たりと
アリャサそれと見るより抜き手も見せずドウジャイナ抜き手も見せず
アリャサ主熊高手下の奴らドウジャイナ手下の奴ら
アリャサ遂に残らず皆斬り殺しドウジャイナ皆斬り殺し
アリャサそこで亀菊手を引き連れてドウジャイナ手を引き連れて
アリャサ慣れし三州矢萩の長者ドウジャイナ矢萩の長者
アリャサ一部始終の話をいたすドウジャイナ話をいたす
アリャサ長者夫婦は喜び勇みドウジャイナ喜び勇み
アリャサされば我が家の婿にもせんとドウジャイナ婿にもせんと
アリャサ勧められども権八殿はドウジャイナ権八殿は
アリャサ猶も士官の望みであればドウジャイナ望みであれば
アリャサ長者夫婦に断り云うてドウジャイナ断り云うて
アリャサ暇乞いして立たんとすればドウジャイナ立たんとすれば
アリャサ今は亀菊詮方涙ドウジャイナ詮方涙
アリャサ是非もなくなく金取り出してドウジャイナ金取り出して
アリャサ心ばかりの餞別なりとドウジャイナ餞別なりと
アリャサ云えば権八気の毒顔にドウジャイナ気の毒顔に

アリャサ志とて頂き納めドウジャイナ頂き納め
アリャサ花の東へ急れ下るドウジャイナ急れ下る
アリャサ行けば程なく川崎宿のドウジャイナ川崎宿の
アリャサ音に聞こえし万年屋とてドウジャイナ万年屋とて
アリャサここに暫くお休みなさるドウジャイナお休みなさる
アリャサさてもこれから品川までのドウジャイナ品川までの
アリャサ道は何里とお尋ねなさるドウジャイナお尋ねなさる
アリャサ道は僅かに二里ほどなれどドウジャイナ二里ほどなれど
アリャサ鈴ヶ森とて難所がござるドウジャイナ難所がござる
アリャサ夜毎夜毎の辻斬りあればドウジャイナ辻斬りあれば
アリャサ七ツ過ぎにも早なりければドウジャイナ早なりければ
アリャサ今宵我が家へお泊まりなれとドウジャイナお泊まりなれと
アリャサ云えど権八耳へも入れずドウジャイナ耳へも入れず
アリャサ大小さす身はそれしきごとにドウジャイナそれしきごとに
アリャサ恐れ泊まらは数多の人にドウジャイナ数多の人に
アリャサ臆病未練の侍なりとドウジャイナ侍なりと
アリャサ永く笑われ恥辱の種よドウジャイナ恥辱の種よ
アリャサそれは元より望みでござるドウジャイナ望みでござる
アリャサ勇み進んで品川指してドウジャイナ品川指して

アリャサさても平井の権八殿はドウジャイナ権八殿は
アリャサ同じ茶屋にて休んでいたるドウジャイナ休んでいたる
アリャサ花の東にその名も高きドウジャイナその名も高き
アリャサ男伊達にて幡随(ばんずい)長兵衛ドウジャイナ幡随長兵衛
アリャサ平井出て行く後見送りてドウジャイナ後見送りて
アリャサさすが侍天晴れものよドウジャイナ天晴れものよ
アリャサされば若衆の手並みを見んとドウジャイナ手並みを見んと
アリャサ後に続いて長兵衛こそはドウジャイナ長兵衛こそは
アリャサ鈴ヶ森にと早差しかかるドウジャイナ早差しかかる
アリャサその夜場所にて権八こそはドウジャイナ権八こそは
アリャサ兼ねて覚悟と山賊どもをドウジャイナ山賊どもを
アリャサ大勢相手に火花を散らしドウジャイナ火花を散らし
アリャサそれを見るより幡随長兵衛ドウジャイナ幡随長兵衛
アリャサさらば助太刀いたさんものとドウジャイナいたさんものと
アリャサげにや仁王のあれたる如くドウジャイナあれたる如く
アリャサ切って廻れば山賊どもはドウジャイナ山賊どもは
アリャサ雲を霞と逃げ行く後でドウジャイナ逃げ行く後で

アリャサそのや長兵衛は平井に向かいドウジャイナ平井に向かい
アリャサ年の若にも似合わぬ手並みドウジャイナ似合わぬ手並み
アリャサ恐れ入ったる働きなるぞドウジャイナ働きなるぞ
アリャサわしも江戸にて名を売る男ドウジャイナ名を売る男
アリャサお世話いたさんわが家へござれドウジャイナわが家へござれ
アリャサ云うに権八喜び入ってドウジャイナ喜び入って
アリャサさらば今より兄弟分とドウジャイナ兄弟分と
アリャサあれば長兵衛かくまいなさるドウジャイナかくまいなさる
アリャサさても助七助八その仇敵ドウジャイナその仇敵
アリャサ平井権八討ち果たさんとドウジャイナ討ち果たさんと
アリャサこれも東の花川戸にてドウジャイナ花川戸にて
アリャサ借家住まいで二人の者はドウジャイナ二人の者は
アリャサ花のお江戸を日毎に訪ねドウジャイナ日毎に訪ね
アリャサそれと権八早くも悟りドウジャイナ早くも悟り
アリャサ忍び狙って二人の者をドウジャイナ二人の者を
アリャサ何の苦もなく殺してしまいドウジャイナ殺してしまい

アリャサ今は権八安堵の思いドウジャイナ安堵の思い
アリャサ心ゆるみし若気の至りドウジャイナ若気の至り
アリャサ花のお江戸の新吉原にドウジャイナ新吉原に
アリャサ音に聞こえし花扇屋のドウジャイナ花扇屋の
アリャサ小紫にと心をかけてドウジャイナ心をかけて
アリャサ夜毎日毎にお通いなさるドウジャイナお通いなさる
アリャサこの家小紫素性を聞けばドウジャイナ素性を聞けば
アリャサ三州矢萩の長者の娘ドウジャイナ長者の娘
アリャサ今は長者も落ちぶれ果ててドウジャイナ落ちぶれ果てて
アリャサ娘の亀菊遊女に売られドウジャイナ遊女に売られ
アリャサ涙ながらに務めをいたすドウジャイナ務めをいたす
アリャサ平井権八それとは知らずドウジャイナそれとは知らず
アリャサ初会座敷のその始まりにドウジャイナその始まりに
アリャサどこか見たよな顔つきなりとドウジャイナ顔つきなりと
アリャサ思う心が先へも通じドウジャイナ先へも通じ
アリャサいっそ可愛い若衆さんとドウジャイナ若衆さんと
アリャサ思う座敷も早引け過ぎてドウジャイナ早引け過ぎて
アリャサ床になったるその睦事にドウジャイナその睦事に
アリャサさても互いに顔見合わせてドウジャイナ顔見合わせて
アリャサ思いついたる以前の話ドウジャイナ以前の話
アリャサさても亀菊権八さんがドウジャイナ権八さんが
アリャサ一度別れてまた逢うことはドウジャイナまた逢うことは
アリャサ先の世からの約束事とドウジャイナ約束事と
アリャサ二世も三世もその先までもドウジャイナその先までも
アリャサ変わるまいとの互いの契りドウジャイナ互いの契り
アリャサそれが悪事の起こりとなりてドウジャイナ起こりとなりて
アリャサ人を殺して金取ることがドウジャイナ金取ることが
アリャサ夜毎日毎に度重なればドウジャイナ度重なれば
アリャサ毒を喰らわば皿までなりとドウジャイナ皿までなりと
アリャサなおもつのりて中仙道のドウジャイナ中仙道の
アリャサ音に聞こえし熊谷土手でドウジャイナ熊谷土手で
アリャサ上州絹売り弥平を殺しドウジャイナ弥平を殺し
アリャサ百両余りの金子を取りてドウジャイナ金子を取りて
アリャサなおも郭へ忍びで通うドウジャイナ忍びで通う
アリャサ悪事千里で権八身分ドウジャイナ権八身分
アリャサそのや恵方はお尋ね者よドウジャイナお尋ね者よ
アリャサ忍び寄るとの厳しい詮議ドウジャイナ厳しい詮議
アリャサ今は天地に身の置き所ドウジャイナ身の置き所
アリャサ無きも泣かれず覚悟を決めてドウジャイナ覚悟を決めて
アリャサ御奉行所へと名乗りて出でてドウジャイナ名乗りて出でて
アリャサ哀れなるかや権八こそはドウジャイナ権八こそは

アリャサ平井権八さらした首をドウジャイナさらした首を
アリャサ願い貰うて目黒の寺へドウジャイナ目黒の寺へ
アリャサ埋め葬り回向をなさるドウジャイナ回向をなさる
アリャサそのや噂を聞く小紫ドウジャイナ聞く小紫
アリャサ人目忍んで郭を出でてドウジャイナ郭を出でて
アリャサひるむ心は目黒の寺のドウジャイナ目黒の寺の
アリャサ平井権八墓場の前にドウジャイナ墓場の前に
アリャサ乱れそめにしその黒髪にドウジャイナその黒髪に
アリャサ何と白無垢死装束のドウジャイナ死装束の
アリャサ姿懐剣喉へと当ててドウジャイナ喉へと当てて
アリャサ南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏ドウジャイナ南無阿弥陀仏
アリャサ二世を助けて賜れかしとドウジャイナ賜れかしと
アリャサ落ちる涙は千種の露とドウジャイナ千種の露と
アリャサ消えて浮名は比翼の塚とドウジャイナ浮名は比翼の塚と
アリャサ今の世までも咄に残るドウジャイナ咄に残る
○アリャサここら辺りで止め置きますでドウジャイナ止め置きますで
アリャサ誰かどなたか息継ぎを頼むドウジャイナ息継ぎを頼む
《場所踊り》
○ヤレそろりとヨ 輪をつくれ そろりやそろりと 輪をつくれ
○ヤレお月のヨ 輪のなりに 天のお月の 輪のなりに
○ヤレお月では 恐れ多い 天のお月では 恐れ多い
○ヤレ車のヨ 輪のなりに 王明車の 輪のなりに
○ヤレ揃うたらヨ ちとおろす お並び揃うたら ちとおろす

○ヤレ小栗のヨ 文の段 暫く小栗の 文の段
○ヤレ名付けてヨ ちとおろす 正歌と名付けて ちとおろす

○ヤレ一番のヨ 筆立てに 第一番の 筆立てに
○ヤレ雄鹿とヨ 書かれしは 峰の雄鹿と 書かれしは
○ヤレ砕いてヨ 読むなれば これを砕いて 読むなれば
○ヤレ女鹿ヨ 妻恋し 麓で女鹿よ 妻恋し
○ヤレ二番目のヨ 筆立てに 第二番目の 筆立てに
○ヤレ霰とヨ 書かれしは 小笹に霰と 書かれしは
○ヤレ落ちよとヨ これを読む 触れば落ちよと これを読む
○ヤレ三番目のヨ 筆立てに 第三番目の筆立てに
○ヤレ真菰(まこも)とヨ 書かれしは 池の真菰と 書かれしは
○ヤレ大師のヨ 一の筆 弘法大師の 一の筆
○ヤレなびけとヨ これを読む ひくになびけと これを読む
○ヤレ四番目のヨ 筆立てに 第四番目の 筆立てに
○ヤレ帯とヨ 書かれしは 永尺帯と 書かれしは
○ヤレ相模とヨ 常陸とは 例え相模と 常陸とは
○ヤレいかほどヨ 隔つとも 道ほどいかほど 隔つとも
○ヤレめぐりてヨ 結び逢う めぐりめぐりて 結び逢う
○ヤレ五番目のヨ 筆立てに 第五番目の筆立てに
○ヤレ漕ぐ舟と 書かれしは 沖漕ぐ舟と 書かれしは
○ヤレ知りつつヨ その人に 文を知りつつ その人に  
○ヤレつけよとヨ これを読む 急いでつけよと これを読む
○ヤレ六番目のヨ 筆立てに 第六番目の 筆立てに
○ヤレ紅葉とヨ 書かれしは 日陰の紅葉と 書かれしは
○ヤレこの文ヨ 読むとても 例えこの文 読むとても
○ヤレ出すなとヨ これを読む 色に出すなと これを読む
○ヤレ七番目のヨ 筆立てに 第七番目の 筆立てに
○ヤレ云う字をヨ 七つ書き 恋と云う字を 七つ書き
○ヤレ命がヨ 七と読む 恋路に命が 七と読む
○ヤレ八番目のヨ 筆立てに 第八番目の 筆立てに
○ヤレ無し弓にヨ 喰む鴨を 弦無し弓に 喰む鴨を
○ヤレ引きならぬ 恋の闇 たて引きならぬ 恋の闇
○ヤレ九番目ヨ 筆立てに 第九番目の 筆立てに
○ヤレお店とヨ 書かれしは 紅屋のお店と 書かれしは
○ヤレ返事をヨ 待つと読む 色よき返事を 待つと読む
○ヤレ十番目のヨ 筆立てに 第十番目の 筆立てに
○ヤレ落雁ヨ 取らすとは 狆に落雁 取らすとは
○ヤレかくしと これを読む めでたかしくと これを読む
○ヤレ正歌はヨ 出たけれど そろりと正歌は 出たけれど
○ヤレ若い衆が 見えたでよ 他所の若い衆が見えたでよ
○ヤレ正歌のヨ 切りを止めて 出(だ)いたる 正歌の 切りを止めて
○ヤレなされたヨ おしるしに おいでなされた おしるしに
○ヤレ盃を 想いさす 歌盃を 想いさす
○ヤレ静めてヨ 早よたのむ 踊りを静めて 早よたのむ
○ヤレ変わる 拍子様 歌節変わる 拍子様

<静め歌>
○お十七は濁り川渡る 我が妻なれば 引抱えて越えるに 人さの妻じゃで見て笑うよ
  人さの妻でも引抱えて越えやれ あの山陰に人さえなけにゃ この川越えて あの山陰で
  アー私ゃヨーお前さのナーヨー ソリャお前さの ままになる妻になるヨー
○ヤレ静めた 心じゃよ これも静めた 心じゃよ
○ヤレからしてヨ 他所たのむ この次からして 他所たのむ

<こもと受取歌>
○ヤレ御苦労 他所の殿 まずは御苦労 他所の殿
○ヤレでたさえも 御苦労じゃに おいでたさえも 御苦労じゃに
○ヤレ花をよな あつらえて 蕾の花を あつらえて
○ヤレ咲かせて 下された 見事に咲かせて 下された
○ヤレ御恩に 受けたぞえ ひとしお御恩に 受けたぞえ
○ヤレ恩とては 恩とては この恩とては 恩とては
○ヤレまいぞえ 草場まで 忘れまいぞえ 草場まで

<終り歌>
○ア目出度ヨー 目出度のナーヨ ソーリャ目出度のヨー 若松は 若松はヨー
  ア枝もヨー 栄えるナーヨ ソーリャ栄えるヨー 葉も繁る 葉も繁るヨー
  ア人がヨー 若松ナーヨ ソーリャ若松ヨー 様と云え お目出度ヤー
《さのさ》
○小夜更けて 裏の細道さのさで通る(トサッサイ) あれはたしかに主の声(ア ヨイショコリャ) 
  呼ぶに呼ばれぬネ客の前 ほんにつとめはつらいもの(アヨイショヨイショー)
                    ※以下、唄ばやし省略
○奥山で 一人米搗くあの水車 誰を待つやらくるくると くるかこぬかでネ日を送る やがて世に出てままとなる
○梅干しは 酒も呑まぬに赤い顔 年もとらぬにしわよせて 元をただせばネ梅の花 鶯鳴かせたこともある
○あの花は 粋な花だよあら余所の花 あの花野山に咲くなれば 一枝手折りて寝床に挿し あの花散るまで眺めたい
○花尽くし 山茶花桜に水仙か 寒中に咲くのは梅の花 牡丹芍薬ネ百合の花 あなたのことなら南天菊の花
○あの時は 別れが辛いと泣いたじゃないか 半年たたぬにこの始末 女心とネ秋の空 変わりやすいは人心
○それだから 僕が忠告したではないか 芸者の親切雪駄の裏金よ 金のある内はネチャラチャラと 金がなくなりゃ切れた中
○さし尽くし 毛虫ゃ毛でさす 蜂ゃ尻でさす 芸者おやまは金でさす 素人娘はネ義理でさす 家のおかかはただでさす
○切れるなら 切れてみやんせそのままおかぬ 藁の人形に五寸釘 頭にろうそくネむねかがみ 稲荷さんへと丑の刻詣り
○白鷺を 烏と言うたも無理はない 一羽の鳥でも二羽の鳥 葵の花でもネ赤く咲く 雪という字も墨で書く
○朝顔の 蕾の花は筆の先 参らせ候も縁の端 思う垣根にネ登りつめ 今じゃ苦労の種をまく
○白鳥の お稲荷様の仰せには 必ず妻子のある人と 二世の約束ネするじゃない 末は烏の泣き別れ
○あの花を 国の土産に一枚欲しや あげたい心はあるけれど 今は蕾でネあげられぬ 咲いたらあげます初枝を
○幡随院の 長兵衛覚悟で風呂の中 虎も千里の藪の中 お染久松ネ蔵の中 わたしとあなたは深い仲
○梅に惚れてもネ梅に惚れても 桜に惚れぬ 梅は寒に咲く寒さもいとわずに 四月半ばにネ咲くような そんな花にはわしゃ惚れぬ
○親が貧苦でネ親が貧苦で 十四の年に 売られましたよこの都へ やがてうれしやネ名を替えて 主のお側で針仕事
○鳥ならば 飛んで行きたや あの家の屋根へ 木の実かやの実食べてでも 焦がれて泣く声ネ聞かせたら よもや見捨てはなさるまい
○あなたそりゃ無理よ二三日ならば 辛抱もしようが 十日も二十日も三十日も 便りもせずにネいられましょか まして女心と秋の空
○今切れて 何であなたを恨みましょう 至らぬわたしの身を恨む 縁と時節をネ待つならば 岩に打つ波また返す
○松尽くし 松に唐松姫子松 広いお庭に五葉の松 門松立ててネ春を待つ わたしゃあなたの来るを待つ
○今しばし 文もよこすな便りもするな 僕の勉強のじゃまになる やがて卒業のネ暁にゃ 天下晴れての妻にする
○一年や 二年三年なんのその 君に心が変わらなきゃ 曽我の兄弟ネ十八年目に 本望遂げたじゃないかいな
○今切れて 末に添うよな薬はないが 薬は互いの胸にある 辛抱しやんせネ稼がんせ 稼ぐに追い付く貧乏なし
○惚れた時ゃ 金の茶釜もあるよに 言うたが来てみりゃ土瓶の欠けもない 山伏さんでもネあるまいし ほらを吹くのもほどがある
○私らに 惚れ手があるなら枯木に花よ 焼いた魚が泳ぎ出す 絵に描いたる達磨さんにネ手足が生えて のこのこさいさい飛脚する
○その声で とかげ取るかよ山時鳥 人は見かけによらぬもの ほんにあなたはネ薊の花よ 見ればやさしや寄れば刺す
○添うた時ゃさほどよいとは思わねど 度々重なる親切に 切るに切られぬネ仲となり 今じゃこちらから命がけ
○紺の法被にネ紺の法被に入れ文字見やれ 火消し小頭と書いてある いくら火消しのネ頭でも 恋の炎は消さりょうか
○主さんの 紺の法被の襟地の文字にゃ 消防の小頭と書いてある なんぼ火消しがネ役目でも 恋に燃え立つ火は消せぬ
○さのさ節 音頭取り目が取りくたぶれて 息も続かず声もかれました ここらあたりでネ品かえて ぼちぼちやろまいか時間まで
《よいとそりゃ》
○ハァーわしが出いても 合わせまけれど(ハ ヨイトソリャ) 合わぬところはーヨーオイ御免なさりょ
 (コイツァ御免なさりょ 合わぬところはーヨーオイ御免なさりょ)
※以下、唄ばやし、返し省略
○ハァー合わぬどころか よく合いました いつも頼むぞーヨーオイその声で
○ハァー御免なさりょと 腰折り曲げて 腰に御免はーヨーオイなるものか
○ハァー唄い負かそうと 思うては来たが ここは痩せ畑ーヨーオイ声(肥)がない
○ハァー様は良い声 細谷川の 鶯の声ーヨーオイ音(ね)に迷うた
○ハァー他所に蹴り込み はばかりながら 一つ出しますーヨーオイ御免なさりょ
○ハァー他所のお方よ よく来てくれた これでこの場がーヨーオイしゃんとした
○ハァー姉がさすなら 妹もさしゃれ 同じ蛇の目のーヨーオイ唐笠を
○ハァー同じ蛇の目の 唐傘させば どちが姉やらーヨーオイ妹やら
○ハァー年は取りても まだ気が若い 流行り小唄のーヨーオイ節ょ習う
○ハァー夕べ夜這いが 二階から落ちて 猫の鳴き真似ーヨーオイして失せた
○ハァー立てば芍薬 座れば牡丹 後ろ姿はーヨーオイ百合の花
○ハァー桜三月 あやめは五月 菊は九月のーヨーオイ末に咲く
○ハァー唄わまいかよ 道行く人の 立ちて止まりてーヨーオイ聞くほどに
○ハァー明かり障子に 梅の木描いて 春は鶯ーヨーオイ来て止まれ
○ハァー桑の中から 小唄がもれる 小唄聞きたやーヨーオイ顔見たや