津軽じょんがら節 歌詞
○アーお国自慢のじょんがら節よ 若い衆唄えば主(あるじ)の囃子 娘踊れば稲穂も踊る

○アー今宵おいでの皆様方よ さあさこれからじょんから節を 歌いまするよ お聞きをなされ

○アー声はこの通り 塩がら声で 調子はずれのこの節廻し どこがよいやら男が惚れる

○アーお燗ついたよ 一口あがれ 酔えば貸します私の膝を 酒の肴にじょんがら節よ

○アー歌え歌えとわーばりせめる 唄の文句は数知らねども 嘘でまるめたじょんがら節よ

○アー通い通いも度重なれば 親の耳にもそろそろ入る それを聞いてはままにはならぬ

○アー西の鰺ヶ沢舞戸の橋よ 橋の袂で桶屋の娘 年は十六今咲く花よ

○アー佐渡はおけさで出雲は安来 江差追分秋田じゃおばこ 私ゃ津軽のじょんがら節よ

○アー一度別れて二度逢うまでは たとえこの身は千里の旅に 客が変われど心は同じ

○アー一度別れて二度逢うまでは たとえ南風 嵐に会おうと 濡れてみたさのこの恋心

○アー恋し懐かし皆様方よ 逢うた喜び別れる辛さ ほんに浮世はままにはならぬ

○アー春は桜かりんごの花か 蝶ももつれる津軽の国は 唄と踊りで暑さを忘れ

○アー村の祭りに櫓の上で 笛や太鼓につい誘われて 踊り明かそか豊年祭

○アー岩木お山に色づく頃は 稲穂稔るよりんごも盛り 娘十八嫁入り盛り

○アー夢で見たいよ逢いたい見たい 逢えば逢うとて人様騒ぐ 夢で逢えば浮名は立たぬ

○アー愛嬌よければ皆人さんが 我も我もと名指しであがる あげて客はどなたと聞けば

○アー奥の床の間お花で飾る 娘十八お化粧で飾る 私ゃ舞台を唄コで飾る

○アー津軽じょんがら唄ってみれば 心のどかに気も朗らかに 仕事する気に力が入る

○アーお国訛りのじょんがら節よ 三味は深山の松吹く風よ 唄は岩木の流れの音よ

○アーおらがお国で自慢のものは 米とりんごと津軽のねぶた それに津軽のじょんがら節よ



○アー春は津軽の畠一面に りんごまるめろいと花盛り 眠る蝶々と野に鳴く雲雀

○アー長い真夏の日も西に暮れ 植えた苗コも生き生き伸びて 早乙女手先に月影動く

○アー二百十日も難なく過ごし 今年ゃ豊年穂に穂が咲いて お山参詣の笛太鼓聞けば

○アー冬の夜長に囲炉裏の端で 親子揃って四方山話 米もりんごもよく出来た年



○アー雨もやんだしお山も晴れた 村はりんごで色づき初めた 姉コ頬被り気もいそいそと

○アーお山かけたよいい山かけた 岩木山からよくよく見たら 馴染み窓コでお化粧の最中

○アー岩木白雪五月に解ける そよろ吹く風緑の風に おばこ桜が薄紅散らす

○アー花を見ながら顔見に来たが 旅の燕(つばくろ)翼をとめた さほど恋しか津軽の里が

○アー逢えば別れがお名残惜しゅや 津軽土産に何持って帰る 夕べ習うたじょんがら節よ

○アー梅に鶯仲良いけれど なぜに昼来て夜また帰るのか せめて一夜もお泊まりなされ

○アー誰か来たよだ垣根の陰に 鳴いた鈴虫アリャ音を止める 思い出させるあの娘の笑顔

○アー好きで通えば千里も一夜 たとえ雨風嵐に遭おうと 濡れてみたさのこの恋心

○アー富士に劣らぬ津軽のお山 お山眺めてお城の花見 仰ぐ天守は桜の中よ

○アー子供心の幼い頃に 母の背中で覚えた唄が これが津軽のじょんがら節よ

○アー月の出端と約束したが 月が早よ出てあの山の上 恋しあの人まだ顔見せぬ

○アー恋し懐かし 我が家を離れ 逢うた喜び別れる辛さ ほんに浮世はままならぬ

○アー津軽よいとこお山が高く 水が綺麗で女がよくて 声が自慢のじょんがら節よ

○アー津軽よいとこ りんごの国よ 青いだいなか乙女の潔さ 朝日燃えてる切ない姿

○アー津軽よいとこ りんごで飾る 娘十八お化粧で飾る 岩木お山は男で飾る

○アー岩木お山のお月さんさえも 円くなるのは十五夜だけで あとは痩せたり尖ってみたり

○アーうって訪ねる東(あづま)をさして 下る道にて桑名の渡し わずかばかりの船積みゆえに

○アーさても不思議な姐コの力 碇綱でも止まらぬ船を 黒い髪の毛二三本で止めた

○アーおらが国さで自慢なものは 花のお城に十和田の眺め 赤いりんごにじょんがら節よ

○アー一度来てみよ他国の人よ おらが国さの弘前城は 桜満開で日本一よ

○アー今の世の中世は逆さまよ 嘉瀬と金木の間の川コ 小石流れて木の葉コ沈む

○アー晴れた岩木を梢に眺め 続くリンゴの緑の中は 右も左もじょんがら節よ



○アー西が吹こうが山背が吹こが 男度胸よ白浪越えて 大漁幟もしぶきに濡れる

○アードンと来る浪また乗り越えて 男一匹みよしに立てば 船にゃ万両の黄金が躍る

○アー板子一枚命にかけて 越えて乗り出す大海原に 若い船頭衆のほほえむ姿



○アー昔日本は瑞穂の国よ 米はお国の命でござる 米という字を分析すれば

○アー八十八度の手数をかけて 春は苗代種まきあげて 夏は土用まで草取りあげて

○アー秋の取り入れ俵に入れて 倉に積み上げ大黒恵比寿 汗水流したお百姓さん



○アー阿闍羅八甲田岩木の夕陽 風になびいて稲穂がそよぎゃ リンゴ畠でじょんから節よ

○アー虫もつけまい陽にやくまいと 袋かけたが気ままなリンゴ いつのまにやら袋を破る

○アーりんご可愛いや色こそ可愛い 岩木お山に生まれて育つ 私ゃ津軽のりんごの娘



○アー嫁コ貰うなら津軽においで 器量よいのはご覧の通り 唄コ上手で可愛い娘

○アー縁は異なものまた味なもの りんご畑で一目をさけて たまに逢瀬の時間がにくい

○アー嬉し恥かし二人の仲も いつか噂の広まる頃は 津軽じょんがら 二人を結ぶ

○アーおらが生まれが黒石温泉郷 冬の湯治場皆さまおいで 惚れた病もけろりと治る

○アー奥州津軽弘前在の 在さ下れば小泊村よ このや村にて色伊達男

○アー晒手拭い小肩にかけて とろりとろりと山中行けば のぼりつめたる願懇の坂

○アーここは折戸の思案の坂よ 坂に腰掛け沖眺むれば 岩木お山には雲帽子かけて



○アー裏か表か表か裏か 浮気男の心の中と こんにゃくの裏表 見分けがつかぬ

○アー露か泪か泪か露か 逢いに五六丁逢わずに一里 帰る夜道に小袖を濡らす

○アー鳥か玉子か玉子か鳥か この世に出たのがどちらが先か お釈迦様でも分からぬものよ

○アー風か嵐か嵐か風か 惚れりゃ春風別れりゃ嵐 心次第で姿が変わる



○アー国は津軽の岩木の川原 三日続きの大雨降りで そのや雨にて大川濁る

○アー国の殿様馬に乗りかけて 川原近くにお出ましなさる 里の娘は大根洗う

○アーこれを見て通る馬上の殿は 無理な難題娘にかけた そこで娘の言うこと聞けば

○アー国の殿様何言わしゃんす 川が狭いたて後ばねならぬ 石コ小さいたて歯が立つもだな

○アー山が低いたて背負われるもだな 針が細いたて飲まれだもだな 裸で野原さ寝られだもだな

○アーここの道理をよく聞き分けて おらが領分よく見て回れ 水の出ないよに百姓守れ



○アー津軽浅瀬石名の出たところ 過ぎし昔は慶長二年 津軽為信大軍向けて

○アー城主政氏討死になさる 時に神宗寺常椽(じょうえん)和尚 先祖代々位牌を背負い

○アー城の崖から身を躍らせて 恨みは常椽河原淵 いつか春過ぎ真夏となりて

○アー村の子どもら水浴びすれば 砂の中から哀れな姿 村人手厚く葬りて ここに生まれたじょんから節よ


○アー津軽じょんがら長くて困る(数々あれど) よせという声かからぬ内に まずはここいらで止めおきまする

津軽よされ節 歌詞
○アー調子替わりのよされ節 ヨサレソラヨイヤー  (各唄の冒頭に歌う)

○アー恋し懐かし 我が家を離れ
  アー私深山で炭を焼く 山小屋暮らしも幾月ぞ 指折り数えて早六月
  アー空行く雲の色見ても 谷間流れる水見ても 秋の深さを思わせる
  アー里は今頃何してる 稲やりんごの取り入れか 吾が子思えば寝もやらず
   一人眺める 峰の月 ヨサレソラヨイヤー

○アー津軽よいとこ おいらの国よ
  アー春は桜の弘前に 盃片手に眺むれば 霞に浮かぶ津軽富士
  アー夏はそよ風波静か 大渡瀬(おおどせ)深浦浅虫よ 中でも際立つ十和田湖や
  アー黒石在は秋の頃 続くりんごの紅園に 流れる乙女の 国の唄
  アー冬はスキーの阿闇羅山 日本一の名も高い 麓に大鰐湯の町よ
    右も左も よされ節 ヨサレソラヨイヤー

○アー浜の松風 夜毎に聞いて
  アー待てど来ぬ人焦がれ船 どこの港に居るのやら 山背吹き出しゃ寝付かれぬ
  アー私ゃおきざり鴎鳥 夢の通い路白波に 未練月夜に濡れて泣く
  アー逢うが別れの運命(さだめ)なら いつか逢う日も巡りくる 船は潮路の風次第
    早く聞きたや 舟唄を ヨサレソラヨイヤー

○アーおらが津軽に 一度はござれ
  アーどこの村にも湯の煙 一度入れば雪の肌 どんな女も惚れてくる
  アー米は名代の津軽米 粘り強くて艶ようて 津軽ならでは味わえぬ
  アー津軽りんごの味のよさ 一度食べたら忘られぬ 袈裟や衣の坊主でも
    色と香りで 迷わせる ヨサレソラヨイヤー

○アー右に下北 左に津軽
  アー中に抱かれた陸奥の海 前に鴎が舞い遊ぶ 出船入船大漁船
  アー遠く霞むは恐山 山の麓に立つ煙 あれは炭焼く煙かや
  アー青函航路は波静か 明日は小樽か札幌か 夢も楽しい波枕 ヨサレソラヨイヤー

○アー父は高嶺の津軽の富士よ
  アー母は岩木の川水よ 中に生まれて色づいた りんご娘の紺絣
  アー色のつくのを待ちかねて 母の膝からもぎ取られ 泣く泣く箱に入れられて
  アー知らぬ他国で皮剥かれ 味のある内しゃぶられて 芯が細れば捨てられる
     津軽の夢見て 泣いている ヨサレソラヨイヤー

○アー花が咲いたり燕が来たり
  アー春を待つやら水車 水の飛沫に濡れながら 日にち毎日くるくると
  アー巡る浮世のはかなさよ 水音瀬音に夢のせて 誰の思いで廻るやら
  アー道行く車は輪が二つ 夫婦車ではなれない 水車あわれや輪が一つ
    一人暮らしで 世を送る ヨサレソラヨイヤー

○アー酒は天下の 宝の水よ
  アー汗を流した一日は 熱いお酒の一杯は 喉を通ればついホロリ
  アー祝儀の酒なら格別よ 重ねるごとに気が踊る 弾む手拍子唄がとぶ
  アー踊るよされの晴れ姿 じょんがら節よあいや節 座敷賑わう酒の味
     酒の善し悪し 飲み次第 ヨサレソラヨイヤー

○アー深山育ちの 藪鶯が
  アー花に誘われ谷を出て 里の一声よされ節 声の調べも乱れがち
  アーまだ春浅きひなどりの 親に抱かれてホーホケキョ 唄もこの世にままならぬ
  アー海山越えて旅の空 遠くきらめく一つ星 故郷(ふるさと)恋しや父恋し
     夜は枕に 母の夢 ヨサレソラヨイヤー

○アーりんご畑で 別れてきたが
  アー顔が夜空にちらついて 思い切る気を迷わせる 未練月夜は薄曇り
  アー意地は女のうわべだけ 胸に涙のやるせなさ 呼べど帰らぬ恋の夢
  アー渡り鳥でもまた戻る 春は過ぎてもまた巡る 二度と帰らぬ人の春
     夜毎夜毎に すすり泣き ヨサレソラヨイヤー

○アー津軽よいとこ 一度はござれ
  アー四季に見あかぬ津軽富士 花は弘前おうよう園 港青森人の波
  アー若い娘コの紅の袖 波止場あたりにチラチラと 誰を待つやらもの思い
  アー一夜泊まりの旅の衆 煙残して行く船も 津軽恋しゅうてまた戻る 
    住めば人情の 厚いとこ ヨサレソラヨイヤー

○アー津軽よいとこ 住みよいところ
  アー厚い人情のあるところ 旅の鳥でも一休み 一夜泊まりが七八日(ななようか)
  アー四方(よも)の山々花盛り 招く姉コは片えくぼ 心あかした薄化粧
  アーりんご見たさに来た人が りんご作りや子を作り 末は津軽の人となる
    一度来てみよ 俺が国 ヨサレソラヨイヤー

○アー故郷偲んで りんごを唄う
  アーわしの生まれは弘前よ 津軽民謡を口ずさみ りんご畑を見て育つ
  アー岩木高嶺の雪解けりゃ 桜とお城に 人がよい まもなくりんご 咲き誇る
  アー津軽娘が手入れして 人工交配袋掛け 枝もたわわに実を結ぶ
    色つや味良く 世界一 ヨサレソラヨイヤー

○アー土堤にあやめの花咲く頃は
  アー村の社の宵祭り 朝から聞こえる笛太鼓 若い娘の胸躍る
  アー今夜踊ろよ盆踊り 派手な浴衣に帯締めて 月にほんのり白い雲
  アーあふれるような晴れ姿 お月様さえだまされる 私もあの娘にだまされた
     情け豊かな 村娘 ヨサレソラヨイヤー

○アーさても見事な揃いの衣装
  アー津軽リンゴの染め模様 方に大中玉かんよ 腰にデリシャスゴールデンよ
  アー裾に千成雪の下 お国自慢の新柄で 可愛いあの娘によく似合う
  アーリンゴ祭りのお祝いに 津軽乙女の意気見せて 踊る連中の身を飾る
     揃い衣装の はなやかさヨサレソラヨイヤー

○アー父は高嶺の津軽の富士よ
  アー母は岩木の川水よ 中に生まれて色づいた りんご娘の紺絣
  アー色のつくのを待ちかねて 母の膝からもぎ取られ 泣く泣く箱に入れられて
  アー知らぬ他国で川むかれ 味のあるうちしゃぶられて 芯が細れば捨てられる
    津軽の夢見て 泣いているヨサレソラヨイヤー

○アー東下りの左衛門殿が
  アー腰掛け茶屋にて腰おろし こんにゃく肴で酒飲んで こんにゃく刺をば喉にさす
  アー申しそこ通る姐さんよ 刺取る薬を知らないか 刺取る薬を教えましょう
  アー浜辺に生えた竹の子と 山家深山の蛤と 六月土用に降る雪と 三品煎じて飲んだなら
    どんな刺でも すぐ取れるヨサレソラヨイヤー

(高橋祐次郎 作詩)
○アー津軽よいとこ 一度はござれ
  アー春は桜の弘前城 花に戯る人の顔 よされ節も艶やかに
  アー夏はねぶたの笛太鼓 躍る跳人(はねと)も身も軽く 灯りが揺れてる人の波
  アー秋は十和田の綾錦 りんごもぎする乙女等の ホーハイ節もほろほろと
     岩木お山も 雪化粧 ヨサレソラヨイヤー


津軽おはら節 歌詞
○サーサ ダシタガヨイヤー
○マタモ ダシタガヨイヤー   
(各唄の冒頭にどちらかを歌う)


○アーりんごなる木も冬の日は 雪に埋もれて一休み やがて芽の出る時を待つ
  アー春は身軽に枝切られ くすりの化粧で若返り 年に一度の花が咲く
  アー花に無駄なく実を結び りんご可愛いとかけられて 袋の中にて夏を越す
  アー秋が来たかと顔出せば 色が付くつく赤々と 色より味は更によい
     津軽りんごと オハラ名も高い

○アーお山晴れたよ朝霧晴れた 裾野桔梗は花盛り 谷の向こうで馬草刈る
  アー赤い頬被りひらひらと あの娘よい娘だどこの娘だ 草刈り上手で声がよい ホーハイ節がほろほろと
  アー今夜踊ろよ盆踊り 可愛いあの娘の手を取りて 踊り明かそよカオカオと
     夜明け烏の オハラ鳴くまでも

○アー哀れ浮世の習いとて 人の運命(さだめ)は常ならず 栄華誇りし平家とて はかなき夢と滅びたり
  アー三日見ぬ間の桜花 月に影さす群雲や 小野小町の身の果ては 雪の野末で吹きさらす
  アー暗い夜空の流れ星 キラっと輝き消えていく 私の思いもあのように 燃えて短いひとときよ
     ほんに切ない オハラ 恋心

○アーここにおいでの皆様方よ お顔見たさに遙々と 故郷の津軽を後にして 雨や嵐にさらされて
  アー幾年月の歌ごろも 疲れし声をば張り上げて 咲くも花なら散るも花 一枝あげよう咲かせてよ
     お聞きなされよ オハラ 末永く

○アー函館出て行きゃ大沼よ 遠く霞むは蝦夷が富士 森は静かに黄昏れて 夢に小樽の人恋し
  アーしばし休んだ定山渓 後に眺めて右左 行けば札幌よいところ 揺れるポプラの並木道
  アー固い心も岩見沢 末は瀬となる滝川の 縁も浅いが深川よ 誉れ輝く旭川
     響く声は オハラ 勇ましく

○アーわしとお前は津軽丸 盆の踊りが縁となる 好いて好かれて世帯持ち
  アー都離れて山住まい 竹の柱に笹の屋根 訪ねる人もなけれども
  アー朝夕野山に鳥の声 清く流れる谷川の 花も咲きます月も出る
     草鞋履いても オハラ 共稼ぎ

○アー津軽リンゴと箱入り娘 荒い風にもあてぬ様に 顔出しゃ虫もつくからと 袋かけられ育てられ
  アー風にも日にもあたらねば 顔も青くて時を待つ 恋風さそう時期来れば 袋破って顔を出す
  アー風や太陽にあたる頃 程よく色気もついてきて 津軽娘の頬の様に 色もよければ味もよい
     津軽リンゴと オハラ ほめられる

○アー春はうららな岩木山 山の麓は花霞 霞の中から唄の声 声は一節津軽節
  アー夏は涼しい十三の湖(うみ) 秋は紅葉の十和田湖や 冬はスキーの阿闍羅山 一度来て見よおらが国
  アー旅の鳥でも一休み りんご娘の唄声は 立つに立たれぬ青森の 波止場あたりが涙雨
     津軽よいとこ オハラ 夢の国

○アー山の頂き日が染めりゃ ふもとの里は紫に くれて流れる唄の声 津軽姉コの心意気
  アーリンゴ作りの娘なら リンゴ作りの婿取って リンゴ畑で共稼ぎ これが津軽のお国柄
  アー袖は筒袖紺がすり えくぼ隠した頬被り 黒い瞳が夢を見る 姉コ十九の女ぶり
     誰に見せよか オハラ 薄化粧

○アー春は桜の弘前城 夏は緑の岩木山 秋は十和田の紅葉狩り 冬は大鰐湯の香り
  アー津軽の富士のそよ風に 岩木の川のせせらぎに めぐみ豊かな山川の 情けに育つ津軽唄
  アー唄の一筋三味の音に のせて女の心意気 思い通わすおはら節
     津軽よいとこ オハラ 唄どころ

○アー春の乾いた野や山と 女心は燃えたがる 若い同士の山遊び 吸いがら一つが火事の元
  アー爺さまと婆さまがさし向かい とかく炬燵は火事の元 嫁を睨める暇あらば 孫の火遊び止めなされ
  アー煙突掃除もほどほどに 焚き火は終えたらふたをする 家倉残らず灰にする 嫁の役目は務まらぬ
     気をつけましょうよ オハラ 火の用心

○アー岩木山からそよ吹く風は 匂う若葉の里越えて 今年も豊年つげる風
  アー一夜泊まりが又一夜 花の弘前城下町 まねく湯の香は大鰐よ
  アー波にキラキラ七色花火 ねぶた囃子を遠くに聞いて そっと寄り添う影二つ
     港青森 オハラ 恋の街

○アー港青森出た汽車は 津軽新城通り越え 鶴ケ坂にて一休み トンネルくぐれば大釈迦よ
  アー浪岡 常盤 川部行き 黒石線に五能線 乗り換えいたせばすぐ発車 間もなく通って弘前よ
  アー弘前城下のあの岩木山 眺めて進めば石川よ 大鰐名産あじゃらもち 温泉伝えて世に響く
  アー黒石在は秋の頃 続くリンゴの紅園に 流れる乙女の国の唄 よされ じょんがら 小原節
     碇ヶ関が オハラ 目に見える

○アー女に生まれたばっかりに 命も体も恋のため 今じゃ貴方に差し上げて 辛い思いもせにゃならぬ
  アー貴方と一緒になるときは か弱い私を抱きしめて 浮気せぬよと手を握り 固い約束したでしょう
  アー言うた言葉はどこへやら 今じゃ明け暮れ浮気して 出て行け暇をやるからと 責められ叩かれ死ぬ思い
     ほんに女は オハラ 弱いもの

○アー野越え山越え深山越え あの山越えれば紅葉山 紅葉の下には鹿がおる
  アー鹿がホロホロ泣いている なぜに鹿さん泣いている わしの泣くのは他じゃない
  アー遙か向こうの木の陰に 六尺余りの狩人が 五尺二寸の鉄砲担ぎ
  アー前に赤毛の犬を連れ 後ろに黒毛の犬連れて あれに撃たれて死んだなら
  アー死するこの身はいとわねど 後に残りし妻や子が どうして月日を送るやら
     思えば涙が オハラ 先に出る

○アー津軽名物あの七不思議 世にも珍し不思議なことよ 西海岸は北金ケ沢 ここの名物銀杏の幹は
  アー幾星霜の今の世に 神のお授けお乳が出るよ 同じ郡の十三村は 夏冬通して雪囲い
  アー雨が降っても草履履き 北の郡の金木の町は 嘉瀬と金木の間の川コ 小石流れて 木の葉が沈む
  アーここの隣の長富堤 春秋変わらぬ浮島がござる 芦に節なし黄金芦
  アー南津軽の猿賀村 猿賀神社の池の雑魚 何の罰やらめっこだにぼろだ
  アー同じ郡の越館の 大日如来の萩桂 萩か桂か見分けがつかぬ
  アー津軽富士の中腹に 黒坊の沼というところ 沼の周りはわずかに四五丁
  アー沼の真中に浮島ありて 風の吹きよで西東 流れ歩く不思議島
     一度来て見よ オハラ 四方の君

(高橋祐次郎 作詩)
○アーここにおいでの皆様よ 私の生まれは青森の 津軽育ちのうたうたい
  アー今日は東か明日は西 海山越える唄の旅 人の情けの嬉しさに
  アー三味が冴えれば太鼓が響く 負け手なるかと越え張り上げて 男勝負の見せどころ
     意地と根性の オハラ 津軽節


<浪曲「壺坂霊験記」入り>
○アー夫の眼病治さんと 三七日の願掛ける 女房お里の真心を
  アー知るや知らずの沢市は 他に男のあるように 夜毎日毎のあて言葉 たまりかねてか女房は お前の眼病治さんと
  アー壺坂寺に願掛ける 私の心も知らずして 疑るお前がわしゃ憎い
  アー聞いた沢市今更に 己が心が恥ずかしく 見えぬ眼に涙して そんなら二人でお詣りと

  「妻は夫をいたわりつ 夫は妻を慕いつつ 頃は六月仲の頃 夏とは言えど片田舎 木立の森もいと涼し 
   小田の早苗も青々と  蛙の鳴く声ここかしこ 聞くも涙の夫婦連れ ようよう登る壺坂山 
   この夜に限り雲一点あるでなし 名月や あさぎに銀の一ツ紋 
   置いたる如くさしこみし 葉越しの月を拝みつつ 壷坂山の狼谷」

  アー夫婦の心が通じてか 嬉しや沢市眼が開いた 夢かと二人は喜んで 心にかかる雲もなく 空は晴れたよ朝ぼらけ
   笑顔明るく オハラ 射す朝日


津軽あいや節 歌詞
○アイヤーナー
  アイヤ佐渡の島から 新潟見れば 心新潟にソレモヨイヤ 身は佐渡に

○アイヤーナー
  アイヤ新潟の 川の真ん中で 菖蒲咲くとは ソレモヨイヤ しおらしや

○アイヤーナー
  アイヤもやくや 煙草の煙 次第次第に ソレモヨイヤ 薄くなる

○アイヤーナー
  アイヤわしとお前は 野原の薄 枯れて落ちても ソレモヨイヤ 炭俵

○アイヤーナー
  アイヤ唄が聞こえる 津軽の(お国の)唄が よされじょんがら ソレモヨイヤ あいや節

○アイヤーナー
  アイヤ鳴くな鶏 まだ夜が明けぬ 明けりゃお寺の ソレモヨイヤ 鐘が鳴る

○アイヤーナー
  アイヤ娘振り袖 色よく染めた 牡丹に絡まる ソレモヨイヤ 藤の花

○アイヤーナー
  アイヤ姿尊き(麗し) 岩木の山は おらが津軽の(津軽平野の) ソレモヨイヤ 守り神

○アイヤーナー
  アイヤりんご花咲きゃ 野山が霞む 唄う娘コの ソレモヨイヤ 声の良さ

○アイヤーナー
  アイヤりんご作りに 惚れたが因果 私ゃ紅さす ソレモヨイヤ 暇もない

○アイヤーナー
  アイヤえくぼ可愛いや 津軽の姉コ 赤いほっぺに ソレモヨイヤ 紺絣

○アイヤーナー
  アイヤ私ゃ深山の 蕾の百合よ 人に折られて ソレモヨイヤ 花咲かす

○アイヤーナー
  アイヤ十七娘コに 蝶々がとまる とまるはずだよ ソレモヨイヤ 花じゃもの

○アイヤーナー
  アイヤ今宵目出度い 花嫁姿 親も見とれて ソレモヨイヤ うれし泣き

○アイヤーナー
  アイヤどうせ帰るなら 闇夜になされ 姿見せずに ソレモヨイヤ 泣かせずに

○アイヤーナー
  アイヤ差した盃 中見てあがれ 中に鶴亀 ソレモヨイヤ 五葉の松

○アイヤーナー
  アイヤ破れ障子に 鶯かいて 寒さこらえて ソレモヨイヤ 春を待つ

○アイヤーナー
  アイヤ花はよけれど あの木は高い どうかこの手の ソレモヨイヤ 届くよに

○アイヤーナー
  アイヤ岩木ほほえむ りんごの園に 絣姉コの ソレモヨイヤ 袋かけ

○アイヤーナー
  アイヤあなた函館 わたしは津軽 便りつくたび ソレモヨイヤ 船便り

○アイヤーナー
  アイヤりんご乙女の 歌声聞けば 鶯さえも ソレモヨイヤ 聞き惚れる

○アイヤーナー
  アイヤ年に一度は 必ず来てね 逢わなきゃ私の ソレモヨイヤ 身が細る

○アイヤーナー
  アイヤ北と南に 別れていても 固い約束 ソレモヨイヤ 忘れずに

○アイヤーナー
  アイヤ岩に松さえ 生えるじゃないか 添えて添われぬ ソレモヨイヤ ことはない
 
○アイヤーナー
  アイヤ遠く離れて 気をもむよりも 浮気されても ソレモヨイヤ そばがよい

○アイヤーナー
  アイヤ未練残して 別れてみたが 遠く離れて ソレモヨイヤ 気にかかる

○アイヤーナー
  アイヤ咲いた牡丹の あの艶姿 咲けば万花の ソレモヨイヤ 一となる

○アイヤーナー
  アイヤ咲いて一なる 牡丹でさえも 冬は菰(こも)着て ソレモヨイヤ 寒しのぐ

○アイヤーナー
  アイヤ浜の浜茄子 可憐な花よ 礒の潮風 ソレモヨイヤ 晴を待つ

○アイヤーナー
  アイヤ津軽名物 数々あれど 男迷わす ソレモヨイヤ りんご酒

○アイヤーナー
 アイヤ浮名立てられ 添わぬも恥よ 二人寄り添う ソレモヨイヤ 影法師

○アイヤーナー
  アイヤ月の出頃は 友呼ぶ千鳥 顔が見たさに ソレモヨイヤ すすり泣く

○アイヤーナー
  アイヤ鴎泣かせる 出船の煙 思い切れとて ソレモヨイヤ 薄くなる

○アイヤーナー
  アイヤあいの風吹く 船来ぬ不思議 荷物ないのか ソレモヨイヤ 船止めか

○アイヤーナー
  アイヤ沖で吹く風 頭(かしら)が笑う 千両万両を ソレモヨイヤ 運ぶ風

○アイヤーナー
  アイヤあまり長いも あいやが疲れ まずはよいとこ ソレモヨイヤ 変わりましょう


<字余り>
○アイヤーナー
  アイヤ岩木お山は 高嶺の雪を 水にとかしてお化粧させて 清い体で嫁入るからは
  必ず帰ると思うじゃないよ 今日より人の妻として 固く正しく麗しく 山の姿をそのままに
  祝い重ねて ソレモヨイヤ 千代八千代

○アイヤーナー
  アイヤ竹の一本橋 細くて長くて しおしおするよで 危ないけれど
  渡って落ちても ソレモヨイヤ いとやせぬ

○アイヤーナー
  アイヤ波は千鳥に 千鳥は波に 後を追うたり追われたり 別れともない 行きともないが 悲しやこの身は 旅の鳥
  山背風だと あきらめしゃんせ 今宵一夜は 皆様の 暑い情けを 胸に抱いて 泣いて別れる ソレモヨイヤ 浜千鳥


○アイヤーナー
  アイヤ咲きも揃うたよ 色とりどりに
  いずれ劣らぬ花あやめ 娘振り袖 色よく染めた 牡丹に絡まる アリャ藤の花 色も薄うけりゃ 香りも薄い
  咲いて恥ずかし ソレモヨイヤ かきつばた


○アイヤーナー
  アイヤ雀の親子が あちらの沢からこちらの沢まで チュンチュンパタパタ金節広げて 品良く飛ぶよネ
  止めて止まらぬ ソレモヨイヤ 恋の道


(高橋つや作詞) 
○アイヤーナー
  アイヤ青森県は陸奥の国 南津軽郡は大鰐町の 細川料理屋の 姐さん方は
  お伊勢参りに のどが乾いて 貰うた茶碗が長い茶碗で 
  水の四五杯も飲んだら それで声が出ないならば 子丑寅卯辰巳の
  隣の午の尻より ソレモヨイヤ 声が出る


津軽三下り 歌詞
○アー逢いたい見たいは しゃくの種だよ 見たいは病い
  アー顔見りゃ落ち着く 胸のしゃく

○アー竹なれば割ってみせたい 私の心
  アー中に曇りの ない私

○アー奥山で 小鳥千羽の 鳴く声聞けば
  アー親を呼ぶ鳥 鳩ばかり

○アーあきらめて 余念ないのに また顔見せて
  アー二度の思いを させるのか

○アー棄てて行く 父を恨んで くれるじゃないよ
  アー血を吐く思いの ほととぎす

(高橋祐次郎 作詞)
○アー人の世に 生きる喜び かみしめ乍ら
  アー謡いかたるも 三下り