第3日目:北海道函館から道南巡り、江差、そして室蘭へ 
1994年8月9日(火)

8月9日(火)
旅の3日目。車中泊の朝は、割と早く目が開きました。今日は観光とともに、できるだけ富良野に近づくことが目的。辺りが明るくなれば目も覚めるというもの。そこで朝6:00から開く「谷地頭温泉」へ行こうと思います。まだ6:00前なので、函館公園のWCで用を足してから向かいます(笑)
道南巡り〜江差まで向かう
【谷地頭温泉】
「やちがしら」と読みます。地元の方々が多いですね。6:00a.m.前からスタンバっている人も結構いました。場所は函館山の麓のようなところで、一見体育館?のような感じ。とても広々とした温泉です。お湯は茶褐色、少し熱めかな?といったところです。少々塩味がする食塩泉?のような気がしました。ゆったりとして6:48a.m.に出ます。

【朝食〜函館朝市】
少し疲れもたまってきていますが、とにかく朝食。観光客が多く集まる朝市に行ってみることにします。場所はJR函館駅の左側です。駅横の駐車場に停めて出かけます。市場は、海産物、乾物、メロンなどの果物…と様々。目を引くのが「毛ガニ」「ウニ」「イカ」といったところ。「毛ガニ」は3,000円位から。んん…やはり手が出ないぞ(笑)

朝食は、市場内にある小さな食堂で。金もないのに、1,800円の「ウニ・ホタテ丼」。ちょっとリッチな朝食です。でも、やっぱり新鮮でおいしかった〜。
食後にお土産!ということで、「イカ(1,000円)」「ホタテ(1,000円)」「メロン(3,000円)」。これらをクール宅急便で上田へ送ります(2,500円)。
 
その後、ブラブラとしていると、目の前でイカをどんどんさばいている店があって、思わず立ち寄るってしまいました。「イカとウニのなかよしセット(1,000円)」というのが目に入り、さっき朝飯食べたのに、誘惑に負け、ついぞ注文。しかし…おいしかった〜。特にイカのあしを食べたら舌が痛い感じ。つまり…イカがまだ生きていて、その吸盤が舌に吸い付いたのです。まさに新鮮!驚いた〜!

【道南巡り】 
朝市で小一時間ほど過ごし、7:47a.m.に出ます。函館をウロウロしていると、有名な「湯の川温泉」が見えました。公衆浴場らしい建物も見えますが、さすがに素通り。さあ!道南を巡り、松前、江差をめざします。
 
まず函館を離れ西へ向かいます。かすみに浮かぶ函館山がいい感じに見えています。海岸線の道を行くと、有名な「トラピスト修道院」の看板が見えます。せっかくなので立ち寄ってみることに。
途中、「男爵資料館」もありますが、これは通り過ぎ。修道院は、とても静かな場所。しばらく過ごします。

さて、木古内、知内と通過していきます。実は、北海道民謡《江差追分》の桧山郡江差町へ向かうのに、地図上では木古内から山越えの県道を行った方が近そうなのですが、やはり民謡マニアとしては「松前江差の…」という歌詞にひかれ、やはり松前へは行ってみたかったので、知内町を通り、国道228号線を、海岸線沿いに進むことにしました。
ちなみに知内町は、北島三郎の出身地です。そして、どんどん進むと福島町。ここは、横綱・千代の富士の出身地。あちこちに「横綱の里」という看板が目に飛び込んできました。
 
福島といえば、北海道民謡《道南口説》の歌詞を歌ってしまう。
 
♪オイヤ金のすみかは 千軒岳よ 越えて下がれば 福島見える
   酔ってすぎても 白符の浜よ 情け吉岡 泊って根崎


【松前】
さて、続いて海岸線の道をどんどん進む。ようやく松前町に入る。ここでも、
◆福山城(松前城)◆
◆「松前の文化財」◆
 ♪オイヤ上り一里で 下りも一里 浜に下がれば 白神の村
   波は荒磯 荒屋をすぎて 大沢渡って 及部にかかりゃ
   ついに見えたよ 松前城下

といった気分。函館からはすでに100kmを越えています。しかし、入ったばかりの辺りは町らしいものはない。遠いな…。
 
いろいろ思っている内に、「松前温泉」の看板発見!こんな場所に温泉があれば、「二度と入れないかもしれない」と思うので、思わず入ってしまいます(笑)。
オレンジ色の瓦が印象的。広々とした浴室は気持ちがいい。ここも谷地頭温泉と似た感じの茶褐色で、塩味のする温泉でした。

さて、温泉を出て、ようやく松前の中心街に着きます。やはり松前城のある公園へ寄ります。ここは別名・福山城ともいい、北方警備の拠点であり、松前町はその城下町でありました。そして民謡《松前追分》《松前三下り》、民俗芸能「松前神楽」といった文化、そして《江差追分》では、「松前江差の 津花の浜でヤンサノエ」と歌われた土地。松前城内は、各地の城跡公園と同じように、いろいろな歴史に関わる展示がありました。また「松前の文化財」といった資料集も買い求めます。
 
さて、松前町内の「北洋銀行」のキャッシュコーナーへ。また観光物産センターでは「松前漬」を買おうかなと思いつつ、となりにあった「追分漬」にしてみました。
 
【江差】
さて、いよいよ江差へ向かいます。やはりずっとご機嫌な海岸沿いの道路。とてもきれいで青い海が続きます。雰囲気としては佐渡や能登の日本海側といった感じです。走っていると、この道は「追分ソーランライン」というのだそうです。本には載っていましたが、本当にそう呼ぶんだね。よく言ったものです!
 
天気もよく、ご機嫌でドライブしていますが、家々もなく、かなり寂しげなところではあります。途中でガソリンを入れるためにスタンドへ。胸をすくような広々とした海を目の前にしたところにあるスタンド。これが冬だったら、この辺の人たちはどんな生活なんだろ?と考えてしまいました。スタンドのおばさんと会話します。
 「旅行ですか?」
 「長野からです!」
 「へ〜。今日はどこまで行かれるのですか?」
 「特に決めてないです。行けるところまで行きます」
 「いいですね〜。私もそんな旅をしてみたいですね」
本当にこんな旅はなかなかできるものではないですね。「お気をつけて」の声に送られて、北上します。
 
更に進むと、上ノ国町。「上国寺」へ立ち寄ります。北海道ではあまりお寺を見かけないな…などと思いつつ、やはり歴史の古い道南だけありますね。

さて、いよいよ江差町市街地へ。「江差の五月は江戸にもない」と言われた江差。やはり、それまでの風景と比べるとにぎやかな感じがします。海岸沿いの道を進むと、何やら笛や太鼓の音が聞こえるではないですか。そして目に入ったのが山車!今日は何とお祭りなのです。何でも「姥神大神宮」の例祭で、ちょうどある町内の山車が止まっており、お囃子を演奏しているところでした。あわててVTRを取り出し、撮影!北の町で見る、祭りの風景。いいものです。

桧山郡江差町。函館から実に180kmの道のり。しかし!民謡ファンにとって興奮してしまう場所です。街中をうろついていたところ、先ほどの「姥神大神宮例祭」の山車が巡行しています。昼食もまだだったので、街中を外して進みます。すると!出た!「江差追分会館」の看板。冷めやらぬ興奮を抑えつつ、行ってみることにします。
 
会館の前には「れすとらん江差家」がありました。昼食がまだだったので、まずここで腹ごしらえ。函館でもイカは食べましたが、もう一度「イカ刺し定食」を注文。ところが…これが絶品。新鮮なイカは歯ごたえがあり、甘みもあります。長野で見るイカとは色がちがって、透き通っているぞ(笑)。ここで、追分の解説やカセットテープを買います。そしていよいよ会館へ向かうことに。

【江差追分会館】
◆江差追分会館◆
この会館では長時間になりそうなので、「胡弓」を受付にあずけて入館。受付に来たら、いきなり「初代浜田喜一師」の写真と解説が出むかえてくれます。さすが「追分の浜田」です。
まず2階の展示コーナーへ。追分の歴史に関わる写真や解説、古いレコード、歌詞集を展示。その中には、視聴できるコーナーもあり、長野県民謡《信濃追分》《小室節》、新潟県民謡《越後追分》等々、何でも聴けるように準備されていました。ゆっくり聴きたいが、時間も気になるので、急いでまわります。
 
1階には追分関連の文献コーナーがあり、村杉弘先生の著書もありました。ショップではいろいろ売られていましたが、追分の「譜」を買います。
すると、おばさんが「兄さん!追分の師匠に習っていけば!」と声をかけられました。いつでも名人がおられて、教えてくれるんだそうな。いいシステムだが、今回は遠慮してしまいました…。
それから今日は、特別に3:00p.m.から追分の実演があるとのこと。普段は11:00a.m.と1:00p.m.の2回なのだそうですが、今日は姥神大神宮の祭りのため、3:00p.m.の回が特別にあったのです。現在2:40p.m.なので、これは聴ける!そこで、その間の20分間で、鴎島へ行ってくることにしました。


【鴎島】
◆初代浜田喜一像◆

ここには来たいわけがありました。実際に来てみると海水浴客がたくさん。それを横目に過ぎると、まず、ビックリ!「瓶子岩」です!初めて買った民謡のEPレコードの「江差追分」(キングレコード/唄:浜田喜一)のタイトルの写真にあった岩。こんなところにいきなりあるんだ…としみじみと通り過ぎます。そして島に上がる坂道を行こうとすると、今度は、追分名人・青坂満師の「追分道場」があって、またビックリ!そして島の上まで上がります。3:00p.m.までには戻りたいので、忙しく走っていきます。観光客もほとんどいない、静かな広場へ向かいます。
あった!初代浜田喜一師の銅像だ!来た甲斐がありました。まわりには雑木を刈るおじさん、オートキャンプの人たちくらいで、本当に静かな場所。袴姿で細身の初代さんの像がしっかり立っていました。ここで写真やVTRを撮って、またあわてて追分会館へ引き返します。

【再び、江差追分会館】
◆本場の江差追分の演唱と踊り◆
ぎりぎり3:00p.m.に着く。1階の演示室で鑑賞します。ちなみにこの場所は、「江差追分全国大会」の会場になるところです。そして、ここの緞帳は初代さんが寄贈されたものだそうです。
本日の演唱は、浜塚良幸師。本場の追分の生演奏をしばし鑑賞。アイヌ風の厚司姿の女性の踊りつきで、前唄、本唄、後唄を通して全曲聴きます。浜塚師匠の声は、キラキラとした輝く声というより、潮風に乗せられたしみじみとした声だと思いました。こういうところが追分の特徴を形作っているところでしょうか。とても満足なひとときでした。
その後はご当地の民謡ということで、《道南ナット節》と《江差ソーラン節》を聴くことができました。
本当はもっと滞在していたかった江差町。しかし、明日までに富良野に着かなければならないため、後ろ髪引かれる思いで、3:24p.m.に江差を後にします。




本日の宿はどこ?
さて、今日は小樽まで行くつもりでしたが、とても無理。ではどこまで行こう?単純に小樽がだめなら室蘭だ!(…特に、根拠はない・笑)ということで、江差からとにかく東側へ出なければならない!と、まず乙部町へ向かいます。そのために厚沢部町から県道に入り、渡島半島の東部へ向かうことにしました。さすが北海道の道だな〜とご機嫌で進んでいきます。が、途中から、どうしたわけか未舗装になってしまいましたた。ガタガタ道を苦労して行くと、ようやく乙部町。更に北上すると長万部町です。

ここ長万部では「カニの町」という文字が目に入ります。こういうのに弱い信州人…「北海亭」で「カニめし弁当(950円)」をいただきます。
さて長万部町を、5:41p.m.に出て、室蘭へ向けてグングン進みます。途中、おもしろいperformanceするバイクの人が、自分の目の前を行きます。すれ違うバイクの人たちに思い切り手を上げたり、バイ
◆有珠善光寺の御朱印◆
クに立ち上がってみたり…その動きが、あまりにもオーバーアクションなので、運転している自分も飽きずによかった(笑)。
 
さて、伊達市に入ります。ここは有珠山のふもと。市内を走っていると「善光寺」の文字が目に入ります。「何?善光寺?」長野から来た自分にとって、あまりになつかしい感じがしたので、時間は遅くなってしまいましたが、自動車を引き返し、有珠善光寺へ行ってみることに。
 
境内に入ると、長野のような金堂ではないものの、茅葺きの立派なお堂がありました。境内は結構広々としていた。御本尊は、慈覚大師が自ら彫ったという阿弥陀如来だそうです。せっかく寄ったので、ここでも御朱印をいただく。ちなみに、後で分かったのだが、ここには「円空仏」があったのです。時間も遅くなってしまったので、あわてていたとはいえ、気付かなかったとはもったいないことをしました…。

【室蘭へ】
さて早く室蘭に行きたいので、伊達I.C.から道央道に乗り、室蘭I.C.まで一気に進んでいきました。室蘭市は港町、そして鉄の街。静かな感じの街でした。夕べは車中泊だったので、今日は布団で寝たいな…と、駅前をめざしてホテルを探します。ウロウロしていたら「室蘭プラザホテル」を見つけ、チェックイン!時刻は8:30p.m.になってしまいました。走行距離は函館から397km。
 
北海道とはいえ、8月の室蘭は結構暑かった。そして、何とこのホテルには展望風呂があったので、まず汗を流します。そしてコインランドリーもあったので、3日分の洗濯をすることができた!その後、ようやく夕食。ホテル2階にある和風レストラン「両国」で生ビール!なかなかハードな3日目の旅を終えました。