<長野県佐久市望月春日宮の入>
根神社/4月29日


長野県佐久市望月は、長野県東部の丘陵地帯です。南には蓼科山が望める静かなところです。
その望月町でも鹿曲川沿いに南部へ行った春日地区宮の入にある根神(ねのかみ)社の春季例祭に、古式ゆかしい「式三番」が奏演されます。

この神社の祭神は「国常立命(くにとこたちのみこと)」です。しかし、拝殿に掲げられている額には「根神(ねのかみ)大権現」と書かれており、かつての修験道の影響を残していることが分かります。

まつりは現在、4月29日「みどりの日」に行われています(かつては4月15日でした)。

午後1:00から拝殿内で、神官による祭典が挙行されます。それが終了したところで、場所を拝殿から下りた、境内に建てられている神楽殿で「式三番」が行われます

この神楽殿には古い引き幕が目に入ります。かなり古いものだと地元の方々がおっしゃっておられました。

さて「式三番」です。これは中央の「能楽」の《翁》と同じような形態の芸能です。《翁》の原型は「父尉(ちちのじょう)」=釈尊、「翁」=文殊、「三番」=弥勒をかたどったものといいます。

現在、登場人物は露払いとしての「千歳」、白い翁面をかける「翁」(白色尉)、素面で登場し、途中で黒い面をかける「三番叟」(黒色尉)の3人です。民俗芸能化したこの種の芸能は、民間信仰を取り入れた呪術性のようなものを感じさせます。

面箱を持ち、独特な鼓のリズムに乗って諸役が登場します。その露払い役が「千歳」です。
その後、「翁」が登場し、「とうとうたらり たらりあがり たらりとう」という謎めいた?謡が始まります。そして白色の面をかけて「あげまきや どうんどうんや」と謡い、舞います。
やがて大皷(おおかわ)が登場したあと、「三番叟」の<揉の段><鈴の段>となります。そして「千歳」との対話をし、最後は黒色の面をかけて、呪術的な所作の舞をします。舞が一通り終わると、神楽殿から餅投げがあってまつりは終了となります。

山里に中央の「翁芸」が伝えられていることは大変意味の深いところです。前述の通り、修験道の色彩を感じる芸能が脈々と伝承されていることの素晴らしさを感じます。