石川県珠洲市正院町・須受八幡宮/
  9月14日 20:00〜26:00 キリコ巡行/9月15日 15:00〜18:00  奴振り       

◆須受八幡宮境内に集まるキリコ◆
◆提灯に灯りが入るキリコ◆

能登のまつりの代表格は、やはり「キリコ」。夏祭りとして、広く親しまれているキリコとは「切子灯籠(きりこどうろう)」を略した言い方であるそうです。いわゆる巨大な「御神燈」であり、山車のように曳き廻されるのが特徴です。

歴史はよく分かりませんが、室町以降の京都の風流系芸能としての「風流燈籠」が、能登らしく、彫刻に金箔を施したり、漆で仕上げられた胴体には墨書の文字や様々な絵が描かれたり、提灯などの飾りが設えられる華麗なものになったのは、江戸時代のようです。

◆各地区内から須受八幡宮に向かうキリコ◆

珠洲市正院町は、珠洲市東部、海辺に近い場所です。その須受(すず)八幡宮の秋祭りに「キリコ」と「奴振り」が出ることで知られています。特に「キリコ」は9基(立町西浜東浜八幡三社口大町御城今町神明町)が出されてきました。

祭りは、9月14日の夕刻までに須受八幡宮へキリコが集まります。そして修祓を受け、その後、20:00から明け方の2:00頃まで、町内を巡行します。


楽器は篠笛と太鼓です。賑やかに打ち込まれる太鼓は、大きめの平丸の鋲留め太鼓で、キリコには宙吊りのようにして取り付けられます。そうした囃子を奏しながら、鈴を着けた若衆によってキリコが担がれ、「ソレ イヤサカサ〜」といったかけ声とともに曳き廻されます。ゆさゆさと揺らしながら進んでいくのも特徴的です。

翌日の9月15日は、15:00から、「奴振り」が演じられます。これは、大名行列を模したお練り行列で、カラフルなどてらを着て、前掛けを着け、手にはシャンガと呼ばれる毛槍を持って進みます。ゆったりとした木遣り風の歌と威勢のいいかけ声とともに、優雅で荘厳な雰囲気で練り歩くのだそうです。

この須受八幡宮は、前田利家公の崇敬が厚く、神領寄進、能舞台再建をしたということです。この神事能開催にあたり、能大夫と警固人を派遣されるとき、その迎送のために、「奴振り」を行ったものといいます。

キリコを出す町内
立 町 西 浜 東 浜 八 幡 三社口 大 町 御 城 今 町 神明町

わたくしが正院町へ訪ねたのは、2008年9月14日の夕刻のみ。翌日9月15日に行われる「奴振り」はまだ見ていません。キリコの方は、わずかな時間でしたが、夕闇のなか、うっすらと明るくなった提灯の灯りが何とも幻想的であったという印象です。