〜愛媛県南宇和郡愛南町深浦〜
南宇和郡は愛媛県最南端、その愛南町はすぐ東側が高知県は宿毛になります。愛媛県では唯一という鰹の水揚げ港である深浦港は、旧城辺町。明治から昭和にかけて活気づいた四国最大の鰹の町であったそうです。その深浦漁港では、鰹漁船が帰港すると、鰹節製造の女性達が「納屋」と呼ばれる工場で魚をさばくのでした。鰹節製造行程は、調理、煮熱、骨抜、修繕、乾燥、削り、黴附等の作業があるのだそうです。その仕事の疲れをまぎらわせるために歌ったのが《骨抜き(ばらぬき)唄》です。
深浦の風景(南宇和郡愛南町深浦)
※ポチさんより画像拝借

作業は夜明け前から。半身にした鰹を釜で煮たあと、冷ました身を手に乗せて、骨を抜くのだそうです。道具は大きな毛抜きを使います。作業自体は単純ですが、煮た鰹を載せたせいろを釜からですときは、熱気が増し、熱いのだそうです。水揚げした鰹は早くさばかないと売り物にならないといい、大変な作業であったそうです。

曲調は七七七五調の甚句風なものです。単純なメロディではありますが、大変いい曲です。一口で歌えるようなもので、大勢で「ヨーイヨイ」とかけ声で囃し合います。

現在では、こうした唄を歌いながらの作業は消えましたが、かつて作業していた女性達によって楽しみに歌われることはあるようです。
また、ステージ民謡として、伴奏をつけて賑やかに歌われることも多くなりました。

同系の唄としては高知県にも伝承されています。土佐清水市あたりで《鰹節造り唄》として、民謡番組にのったことがあります。やはり似たような旋律ですので、何らかのつながりややりとりがあったものと思われます。

わたくしが初めて聴いたのは、四国民謡界の川崎雅彦師の唄でした。その後、藤田かおり師によるテイクのカセットテープが発売されています。三味線や鳴り物が入る賑やかな雰囲気の曲に仕上がっています。しかし、何ともほのぼのとした旋律線、労作唄ではあるのですが、美しいメロディの曲だなというのが印象でした。もっともっと広く歌われるといいなと思う一曲です。

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