〜鹿児島県串木野市〜

九州・鹿児島県の港町・串木野で歌われてきた「串木野さのさ」。
「さのさ」というと、俗曲の<さのさ>を思い起こしますが、その源流は長崎であるといいます。
鎖国時代の日本にあって、唯一国外の出入りの許されていた出島のあった長崎では、中国からの音楽を楽しんでいました。特に月琴を伴奏の中心にして演奏されてきた歌われてきた「明清楽」は、長崎で流行した異国風な音楽です。時代的には、文化・文政といいますので、1804〜1829年の頃、清の金琴江が伝えたものといいます。

中でも「九連環(くれんかん)」という曲があり、これが日本語で「ホーカイ節」として歌われるように、それが大流行して「さのさ」になったといいます。
各地に流行した「さのさ」が民謡として位置付いたのが、長崎では「五島さのさ」、鹿児島では「串木野さのさ」として現在でも歌われています。

詩型は5・7・5・7・5・7・5・7・5調で最後に「さのさ」で締めくくられます。
「串木野さのさ」は、座敷唄ではありますが、座興的な賑やかなものというよりは、しみじみとした情緒のあるもので、しっとりと聴かせます。

串木野は鰹漁に従事する者が多く、「五島さのさ」を持ち帰り、「串木野さのさ」として定着します。時代的には幕末から明治初期にかけてといった頃でしょうか。古調という歌い方も残されていますが、現在では歌いやすくアレンジされたものが歌われています。また座敷唄らしく、あんこに「追分」をはさむ歌い方もあります。