〜福井県坂井市三国町〜

福井県坂井市三国町は、九頭竜川河口に開けた三国港は、北前船の寄港地として知られた場所。その花柳界での酒席で歌われてきたのが《三国節》です。この三国は寛永年間には船問屋が57軒も軒を連ねていたといい、出村、上町、松ヶ下といった場所を中心に花街があったといい、三国の遊女として「三国小女郎」が知られていたといいます。
 ○酒は酒屋で 濃茶は茶屋で 三国小女郎は 松ヶ下
 ○三国出村の 女郎の髪は 船頭さんには錨綱

といった歌詞は、そんな花街の様子が偲ばれるものです。

この《三国節》の由来は、宝暦(1761)年に三国神社を建てる際に、性海寺第30代陽山上人が作ったといい、敷地内の地固めの作業に集まっていた門徒達が歌った《土搗き唄》であるといいます。七七七五調の歌詞を基本として、最後の5文字を2回繰り返し、更に下の句を繰り返すパターンをとる古い甚句のような感じです。

明治期にはあまり歌われなかったといいますが、レコード吹き込みによって京阪の花柳界で歌われるようになってから、地元でも歌われるようになったといいます。現在では「三国祭り」で踊られるようになったといいます。また、「帯のまち流し」という新たな行事が企画され、《三国節》の町流しが行われています。

福井を代表する民謡として知られようになった《三国節》は、ステージ民謡としてはやや速めに演奏され、賑やかな感じです。地元ではややゆったりとしたテンポで歌われることが多いようです。また、三味線伴奏は江戸の《二上り甚句》風ですが、地元の前奏の方がやや華やかな感じで弾かれます。