〜愛媛県上浮穴郡久万高原町・松山市〜

愛媛県松山から高知県へ抜ける国道33号線が開通するまでは、久万(くま)街道が重要な交通路であったといいます。また、かつての四国霊場八十八ヶ所の遍路道としても利用されていたという松山市坂本地区へ出る道を含め、かなりの悪路であったようです。中でも三坂峠は往復に一昼夜かかり、久万街道最大の難所であったところ。久万産の木材を馬に乗せ松山城下に向かい、生活物資を代わりに戻ってくる、三坂峠越えの馬子達(久万山馬子、明神馬子)が歌ってきたのが《三坂馬子唄》です。

この唄は七七七五調の馬子唄です。西日本ではいわゆる「馬子唄」はそれほど多くないと思います。これは西物の馬子唄の中では大変美しいメロディのものです。
歌詞が分かりやすく、
○むごいもんぞや 久万山馬子は 三坂夜出て 夜戻る
などは、三坂峠がいかに難所であったかが偲ばれるものです。


わたくし自身、初めて聴いたときからのお気に入りの一曲です。ただ、手許にはあまり音源がなく資料もありません。
また同じ《三坂馬子唄》でも2通りのメロディがあるようです。
どちらとも大変いいメロディですので、もっともっと音源が増えるといいなと思わせる、馬子唄の絶品の一つです。