〜福岡県福岡市〜
 ◆櫛田神社◆

福岡を代表する民謡といえば《黒田節》と《正調博多節》でしょう。
福岡市内を流れる那珂川の西の福岡では、黒田藩五十二万石の城下町で《黒田節》が歌われ、東の町人の町・博多ではこの《正調博多節》が、花柳界を中心に歌われてきました。

「正調」がつかない《博多節》は、明治初年頃、島根県石見地方で歌われていた《ドッコイショ》という唄であったといいますが、「ドッコイショ」といった俗っぽさや、「ハイ今晩は」が門付け芸ではないかということで、博多では馴染まなかったようです。

そんな折りに、山口県下関あたりで歌われていた《天狗さま》という唄を母胎として

◆櫛田神社〜飾り山笠◆

、新しい《博多節》を作ることになります。《天狗さま》は、
○鼻と鼻とがお邪魔になって 口も吸えない天狗さま

といった歌詞で、俗曲のようなものであったようです。

これを下関の芸者・お秀が覚え、大正時代に博多の水茶屋からお座敷に出て歌ったといいます。また、博多相生町の清元延玉師匠が三味線伴奏の曲として、今日の原型のようなものを完成させたといいます。


やがて大正10(1921)年、「博多節試演会」が開かれ、福岡日日新聞と九州日報に新歌詞の募集をしたといいます。また福岡日日新聞社社長・三隅雲濤が《正調博多節》と命名し、お秀らを中心として以来有名になっていったといいます。

従いまして、この「正調」とは古い《博多節》に対して、新しく作られたものであることになります。古い《博多節》も面白い曲ではありますが、今日でも「正調」ほどは盛んに歌われてはいないです。


この《正調博多節》は、お座敷唄としては大変難しい曲の一つです。原型をまとめたのが清元の師匠であったこともあり、かなり洗練されたものになっています。また、三味線も唄に付かず離れずといった感じで弾かれるもので、唄も三味線も分かっていないと歌えないような難しい間の曲です。