〜鹿児島県大島郡喜界町(奄美・喜界島)〜

奄美の唄…。あまり聴く機会がありませんでした。
それまで聴いたことがあったものといえば、《朝花節》《六調》くらいのものでした。それも、奄美のどこで歌われているのか、いわれは…など知らないことばかり。それどころか、歌詞もよく分かりませんでしたし…。

それが、ある時、ドライブ途中にたまたま立ち寄ったCD店(といっても群馬県でしたが…)で、目についた「奄美民謡集」のカセットテープを何となく買いました。聴きながら、ふっと気になる曲がありました。それが、この《塩道(しゅみち)長浜節》でした。

この曲、間違いなく奄美の民謡なのですが、どことなく、いわゆる「マイナー」にも聞こえる、とても新鮮な雰囲気があります。そして、どことなく切なく、迫ってくるようなメロディ。正直言って、初めて聴いたときは、歌詞は分からなかったのですが、メロディから気に入ってしまった曲の一つです。

そもそも、奄美の島唄は大きくわけて<東唄(ひぎゃうた)><笠利唄(かさんうた)>の2つに分けらるれといいます。この「塩道長浜節」は東唄、すなわち奄美大島南部の唄に分類されます。

なお、この曲のいわれは、喜界島の塩道で起こった、以下のような事件の唄であるそうです。

ある男が、「けさまつ」という美女に惚れ、長浜で想いを遂げようとしたところ、美女「けさまつ」はとっさの機転で事なきを得たといいます。ところが、「けさまつ」の馬の手綱が男の足に結いつけられ、更にその馬に引きずられて、結局男は、惨死してしまったといいます。
そのような話のために、塩道の長浜では、馬に乗るのはやめておきなさい、といった内容の唄だそうな。

とすると、「けさまつ」は何だか残忍な女性のイメージですが、実は「けさまつ」は女神のような神高い存在の人だったという見方もあります。つまり。俗人の犯すべからざる神の女のイメージという感じ…。

いずれにしても、しみじみと聴かせる、名曲の一つだと思います。わたくしは、奄美を訪れたことはありませんが、この塩道の長浜も開発によって、伝説のイメージはないのだそうです。

★奄美の民謡のこと、《塩道長浜節》のことについて、セントラル楽器さまに、いろいろ教えて頂きました。