(灘の酒造り唄)
〜兵庫県篠山市〜

日本の中でも酒処として古くから知られた灘。ここは「灘五郷」と呼ばれ、今津郷、西宮郷、魚崎郷、御影郷、西郷と海岸線に沿って、酒蔵が並びます。ここは六甲山系を背負い、芦屋川、住吉川といった川の水を使って水車による精米が出来、海沿いの蔵からは、かつて「樽廻船」といった船を使って、灘の酒は江戸へ大量に運搬したことが知られています。

灘の酒造の歴史は、寛永年間(1624〜43)に伊丹の雑喉屋文右衛門が西宮で始めたのが最初と言われています。また灘の酒で忘れられないのが「宮水」。この水は江戸時代末期、山邑太左衛門(やまむらたざえもん)によって発見されたといいます。

このように地形や自然環境、海上輸送、そして「山田錦」といった酒米、そして素晴らしい技術を持った杜氏、蔵人集団の存在によって、丹波の酒は日本酒の一大生産地となったのでした。

そんな蔵の中では、酒造り唄が歌われてきました。特に灘では、山を越えた北部の篠山を中心とする丹波杜氏等が酒を造り、歌ってきたといいます。もちろん手作りをする時代ではありませんので、唄を歌いながらの作業は昔の話になってしまいました。しかし酒造り唄には大変魅力的なメロディが多いです。

この「酒造り唄」は丹波杜氏によって歌われるのですが、灘の酒蔵で歌われるという意味で《灘の酒造り唄》という曲名でステージに乗ることも多いです。また灘の銘酒<大関>(兵庫県西宮市)には、「酒造り唄保存会」があると聞きます。

丹波杜氏の唄としては、《秋洗い唄》《山卸しもとすり唄》《もと掻き唄》《仕舞唄》《風呂上り唄》《三本櫂》。全国各地にも同様の酒造り唄の源流とも言われるように、古い唄を残しています。

わたくしも初めて聴いたのは《秋洗い唄》と《三本櫂》でした。《秋洗い唄》は泣かせる唄だと思います。歌詞もなかなかいいです。このページで流れているmidiは《三本櫂》ですが、これまた調子がよく、飽きない曲です。

こうした唄を聴きながら、日本酒をいただくのもいいのではないでしょうか!