越中おわら節 歌詞
<歌われよーわしゃ囃す>

○八尾よいとこ おわらの本場 <キタサノサードッコイサノサ> 二百十日を オワラ 出て踊る 
   
                                    ※…<  >内は唄ばやし 以下省略

○来たる春風 氷が解ける うれしや気ままに オワラ 開く梅

○私ゃあなたに あげたいものは 金の成る木と オワラ 卵酒

○虎は千里の藪さえ越すに 障子一重が オワラ ままならぬ

○仇やおろかで 添われるならば 神にご苦労は オワラ かけやせぬ

○恋の病も なおしてくれる 粋な富山の オワラ 薬売り

○そっと打たんせ 踊りの太鼓 米の成る木の オワラ 花が散る

○見たさ逢いたさ 思いが募る 恋の八尾は オワラ 雪の中

○狭いようでも 広いは袂 海山書いたる オワラ 文の宿

○話するなら 小松原の下で 松の葉の様に オワラ こまごまと

○おわら踊りの 笠着てござれ 忍ぶ夜道は オワラ 月明かり

○お風邪召すなと 耳まで着せて 聞かせともなや オワラ 明けの鐘

○待てど出てこず 出る時ゃ会えず ほんにしんきな オワラ 蜃気楼

○蛍こいこい 八尾の盆に 夜の流しの オワラ 道照らせ

○鳴くなこおろぎ 淋しゅうてならぬ お前一人の オワラ 秋じゃなし

○私ゃ野山の 兎じゃないが 月夜月夜に オワラ 会いにくる

○手っ甲脚絆に 紅緒の襷 可愛いやな早乙女 オワラ 風の盆

○唄で濡れたか 夜露を着たか 鬢がほつれた オワラ 風の盆

○唄で知られた 八尾の町は 盆が二度来る オワラ 風の盆

○唄の町だよ 八尾の町は 唄で糸取る オワラ 桑も摘む

○花や紅葉は 時節で色む 私ゃ常盤の オワラ 松の色

○花も実もない 枯木の枝に とまる鳥こそ オワラ しんの鳥

○軒端雀が また来て覗く 今日も糸引きゃ オワラ 手につかぬ

○白歯染めさせ 又落とさせて わしが思いを オワラ 二度させた

○私ゃ朝顔 朝寝の人に 丸い笑顔は オワラ 見せやせぬ


○あなた今着て 早お帰りか 浅黄染めとは オワラ 藍足らぬ

○八尾おわらを しみじみ聞けば むかし山風 オワラ 草の声

○鹿が鳴こうが 紅葉が散ろうが 私ゃあなたに オワラ 秋(飽き)がない

○城ヶ山から 礫を投げた  恋の思案の オワラ 紙礫

○城ヶ島から 白帆が見える 白帆かくれて オワラ 松の風

○城ヶ島から 白帆が見える 二つ三つ四つ オワラ 有磯海

○お前来るかと 待たせておいて どこへそれたか オワラ 夏の雨

○来るか来るかと 待たせておいて 何処へそれたか オワラ 夏の雨

○八尾よいとこ 蚕の都 秋は野山も オワラ 唐錦

○八尾八尾と 皆行きたがる おわらよいとこ おわら 唄の里

○烏勘三郎の 嫁さの供は 柿の提灯 オワラ 下げてきた

○可愛い鳥だよ 鶫(つぐみ)の鳥は 柿をつついて オワラ 紅つけた

○月が隠れりゃ また手をつなぐ 揺れる釣橋 オワラ 恋の橋

○月は満月 夜はよいけれど 主に逢わなきゃ オワラ 真の闇

○月に焦がれる すすきの花は 枯れてしおれて オワラ また招く

○雪の立山 ほのぼの開けて 越の野山は オワラ 花盛り

○磨け磨けど ねは鉄のよう ついと浮気の オワラ 錆が出る

○針の穴から 浮名がもれる 逢うて逢われぬ オワラ 人の口

○粋な小唄で 桑摘む主の お顔見たさに オワラ 回り道

○別れが辛いと 小声で言えば しめる博多の オワラ 帯がなく

○仇な色香に 迷いはせねど 実と情けにゃ オワラ つい迷う

○瀬戸の桐山 烏のお宿 桐の枯葉を オワラ 着て泊まる

<古謡>
○あいや可愛いや いつ来て見ても たすき投げやる オワラ 暇がない

○たすき投げやる 暇あるけれど あなた忘れる オワラ 暇がない

○歌うて通るに なぜ出て逢わぬ つねにきく声 オワラ 忘れたか

○つねにきく声 忘れはせぬが 親の前では オワラ 籠の鳥

○調子替わりは いつでもよいが 心がわりは オワラ いつもいや

○姉ま何升目 三升目の釜 後の四升目で オワラ 日が暮れる

○姉まどこへ行く 三升樽下げて 嫁の在所へ オワラ 孫抱きに

○姉まどこへ行く 餅草摘みに 俺も行きたや オワラ びく下げて

○殿まと旅すりゃ 月日を忘れ 鶯鳴くそな おわら 春じゃそな 

○あなた百まで わしゃ九十九まで ともに白髪の オワラ 生えるまで

○おらっちゃ姉まの 山行き帰り 桐山焼き餅 おわら 三つ貰うた

○二百十日に 風さえ吹かにゃ 早稲の米喰うて オワラ 踊ります

○山へ登れば 茨が止める 茨離しゃれ オワラ 日が暮れる

○お前一人か 連衆はないか 連衆ぁ後から オワラ 駕籠で来る

○ホッと溜息 小枠を眺め こうも糸嵩(いとかさ) オワラ ないものか

○盆が近うなりゃ 紺屋へ急ぐ 盆の帷子 オワラ 白で着しょう

○唄うて通るに なぜ出て会わぬ 常に聞く声 オワラ 忘れたか

○常に聞く声 忘れはせねど 親の前では オワラ 籠の鳥

○咲いた桜に なぜ駒つなぐ 駒が勇めば オワラ 花が散る

○竹に雀は 品よくとまる とめてとまらぬ オワラ 恋の道

○おらっちゃ若い時ゃ 田んぼのギャワス 人に踏まれて オワラ ぎゃくぎゃくと

○向こう小坂の 仔牛を見れば 親も黒けりゃ オワラ 子も黒い

○飲めや大黒 踊れや恵比寿 亀の座敷に オワラ 鶴の声

<八尾四季>
○揺らぐ吊り橋 手に手を取りて 渡る井田川 オワラ 春の風  
(春)

○富山あたりか あのともしびは 飛んでいきたや オワラ 灯とり虫 (夏)

○八尾坂道 別れてくれば 露か時雨か オワラ ハラハラと 
(秋)

○もしや来るかと 窓押し開けて 見れば立山 オワラ 雪ばかり
 (冬)

<鏡四季>

○恋の礫か 窓打つ霰 明けりゃ身に染む オワラ 夜半の風

○積もる思いも 角間の雪よ 解けて嬉しい オワラ 梅の花

○主の心は あの釣橋よ 人に押されて オワラ ゆらゆらと

○八尾坂道 降り積む雪も 解けて流れる オワラ おわら節



<五文字冠り>
○雁金の 翼欲しいや 海山越えて 私ゃ逢いたい オワラ 人がある

○桜山 桜咲さねば ありゃただの山 人は実がなきゃ オワラ ただの人

○菊水の 花は枯れても 香りは残る 清き流れの オワラ 湊川

○滝の水 岩に打たれて 一度は切れて 流れ行く末 オワラ また一つ

○隅田川 清き流れの 私の心 濁らすもそなたの オワラ 胸の中

○ポンと出た 別荘山から 出た出た月が おわら踊りに オワラ 浮かれ出た

○色に咲く あやめ切ろうとて 袂をくわえ 文(ふみ)を落とすな オワラ 水の上

○奥山の 滝に打たれて あの岩の穴 いつほれたともなく オワラ 深くなる

○白金の ひかり波立つ 海原遠く 里は黄金の オワラ 稲の波

○枯芝に 止まる蝶々は ありゃ二心 他に青葉を オワラ 持ちながら

○朝顔に 釣瓶とられて わしゃ貰い水 どうしてこの手を オワラ 放さりょか

○月の出の 坂を抜け行く 涼風夜風 盆が近いと オワラ 言うて吹く

○逢えば泣く 逢わにゃなお泣く 泣かせる人に 何で泣くほど オワラ 逢いたかろ

○色に咲く 菖蒲切ろうとて 袂をくわえ 文を落とすな オワラ 水の上

○長閑なる 春の夜道に 手を引き合うて 主に心を オワラ つくづくし

○露冴えて 野辺の千草に 色持つ頃は 月も焦がれて オワラ 夜を更かす

○十五夜の お月様でも あてにはならぬ 四五日逢わなきゃ オワラ 角が立つ

○奥山の 一人米搗く あの水車 誰を待つやら オワラ くるくると

○久々で 逢うて嬉しや 別れの辛さ 逢うて別れが オワラ なけりゃよい

○ほのぼのと 磯に映りし あのお月様 深い仲だが オワラ とまりゃせん

○花咲いて 幾度眺めた あの海山の 色に迷わぬ オワラ 人はない

○元旦に 鶴の声する あの井戸の音 亀に組み込む オワラ 若の水

○諏訪様の 宮の立石 主かと思うて ものも言わずに オワラ 抱きついた

○唐傘の 骨はちらばら 紙はがれても 離れまいとの オワラ 千鳥がけ

○今返し 道の半丁も 行かない内に こうも逢いたく オワラ なるものか

○今しばし 闇を忍べよ 山ほととぎす 月の出るのを オワラ 楽しみに

○三味線の 一の糸から 二の糸かけて 三の糸から オワラ 唄が出る



<字余り>

○梅干しの 種じゃからとて いやしましゃんすな 昔は花よ
  鴬とめて鳴かせた オワラ こともある

○竹になりたや 茶の湯 座敷の柄杓の柄の竹に
  いとし殿御に 持たれて汲まれて 一口 オワラ 飲まれたや

○這えば立て 立てば歩めと育てたる二親様を
  忘れて殿御に オワラ 命がけ

○二間梯子を 一丁二丁三丁四丁五六丁掛けても 届かぬ主は
  どうせ天の星じゃと オワラ あきらめた

○綾錦 綸子 羽二重 塩瀬 縮緬 郡内 緞子の重ね着よりも
  辛苦に仕上げたる 固い手織りの木綿は オワラ 末のため

○ふくら雀に 文(ふみ)ことづけて 道で落とすな 開いてみるな
  可愛い殿御の オワラ 手に渡せ

○三十六 十八 三十八 二十四の 恋しい主と 共に前厄 オワラ 案じます

○青海の波に浮かべし宝船には ありとあらゆる宝を積んで
  恵比寿 大黒 布袋に 毘沙門 弁天 寿老人 オワラ 福禄寿

○硯引き寄せ 巻紙手に取り 細筆くわえてさてその次は 
  どうしてどう書きゃ真実誠が届いていつまたどう返事が オワラ 来るのやら

○三越路の 中の越路で見せたいものは 黒部 立山 蜃気楼 蛍烏賊
  余所で聴けないものは 本場八尾のおわらの オワラ 節のあや


○常願寺 神通 片貝 黒部 早月 庄川 小矢部の 七つの川は
  ほんに電気の王国 お米の産地でその名も高い オワラ 富山県

○櫓太鼓の音に目覚まし 小首をかしげ 
  今日はどの手で スッテンコロリの ヨイヤさと投げるやら オワラ 投げられるやら

○ままになるなら 京の三十三間堂の 仏の数ほど手代や番頭を たくさんおいて
  そして三万三千三百三十三軒ほど 支店を設けて オワラ 暮らしたや

○竹の切り口 シコタンコタンや なみなみチョンボリ ちょいとたまり水
  澄まず濁らず オワラ 出ず入らず

○橋になりたや 京で名高き 一条二条三条四条の次なる 五条の橋に
  牛若さんのよな 不思議な殿御を連れ行き 花見に オワラ 通わせる

○熊谷さんと敦盛さんと 組み討ちなされしところは何処よと たずねてみたら
  十(とお)九の八七六五の四の三の二の オワラ 一の谷

○いろにほへと ちりぬるを わかよたれそつねつねならむ うゐのおくやま 
  けふこえて あさきゆめみし オワラ ゑひもせすん

○西新町(しんにゃしき)東新町(ひがししん)諏訪町 上新町(かみしん)鏡町(しんだち)西町 東町
  調子合わせて 今町(なかまち)下新町(したまち)天満町(こくぼ)福島で オワラ 夜が明けた




<長ばやし>
●越中で立山 加賀では白山 駿河の富士山 三国一だよ

●春風吹こうが 秋風吹こうが おわらの恋風 身についてならない

●二百十日に 夜風邪をひいたやら 毎晩おわらの 夢見てならない

●あんたもそうなら 私もそうだよ 互いにそうなら 添わなきゃなるまい

●来たよで来ぬよで 面影立つそで 出て見りゃ風だよ 笹の葉にだまされた

●きたさで飲んだ酒ゃ まだ酔いが醒めない 醒めないはずだよ あの娘の酌だもの

●五箇山育ちの 百巻熊でも 木の実がなければ 八尾へ出てくる

●三千世界の 松の木ゃ枯れても あんたと添わなきゃ 娑婆へ出た甲斐がない

●三味線が出を弾きゃ 太鼓がドンと鳴る 手拍子揃えて おわらにしょまいかいね

●手打ちにされても 八尾の蕎麦だよ ちょっとやそっとで なかなか切れない

●八尾よいとこ おわらの出たとこ 蕎麦は名物 良い紙たんと出る

●見送りましょうか 峠の茶屋まで 人目がなければ あなたの部屋まで

●おわらのご先生は あんたのことかいね その声聞かせて 私をどうする

●一人で差すときゃ 野暮だが番傘 二人で差すときゃ 蛇の目の唐傘

●しょまいかいね しょまいかいね 一服しょまいかいね 一服してからそれからまたやろかいね

●雪の立山 ほのぼの夜明けだ 里は黄金の 稲穂の波立つ

●加賀では山中 佐渡ではおけさだ 越中のおわらは 実りの唄だよ

●駒形茂兵衛さん おわらで迷うたか 恋しやお蔦さんに 会いとうてならない

●提げても軽そな 蛍の提灯 石屋の引っ越しゃ 重くて嫌だよ

●じいさんばあさん おわらに出よまいか 今年も豊年 穂に穂が下がるよ

●茶釜と茶袋は よい仲なれども 仲に立つ柄杓が 水さいてならない

●瓢箪ブラブラ 糸瓜もブラブラ ブラブラしとれど 落ちそで落ちない

●どんどと流れる 水道の水でも いつかは世に出て 主さんの飯(まま)となる

●来られた来られた ようこそ来られた 来られたけれども わがままならない

●来られた来られた ようこそ来られた 来られぬ中から ようこそ来られた

●権兵衛が種蒔きゃ 烏がほじくる 三度に一度は 追わねばなるまい

●南蛮鉄のような 豪傑さんでも あんたにかけては 青菜に塩だよ

●七合と三合は どこでも一升だよ 一升と定まりゃ 五升枡はいらない

●焼けます焼けます 三百度の高熱(たかねつ) その熱冷ますにゃ 主さんに限るよ

●見捨てちゃ嫌だよ 助けておくれよ 貴方と添わなきゃ 娑婆に出た甲斐がない

●浮いたか瓢箪 軽そうに流れる 行く先ゃ知らねど あの身になりたや    
※これが最後の囃子となる