平成15年2月9日(日) 新潟県長岡市朝日 朝日酒造

コンクリート打ち放しのしゃれた外観
「朝日山」「久保田」「越州」「越乃かぎろひ」の酒蔵として知られる「朝日酒造」見学という企画を知って、喜んで申し込み。酒飲みのわたくしですが、実は蔵見学をしたことがありませんでしたので、期待して参加しました。


平成15年2月9日。例年になく大雪であった今シーズンですが、ウチを出るときは雪はなし。
集合場所から大型バスに乗って、一路越後路へ!


冬の新潟は久しぶり。「大雪だったらどうしよう?」という心配もよそに、新潟も雪は降っていませんでした。一面に広がる越後平野は一面の銀世界ではありますが、道路には雪は残ってはいませんでした。



ようやく朝日酒造に到着します。わたくし自身は、ここの小売店やお土産コーナー、また仕込み水である朝日神社宝水などへは行ったことがありました。しかし、蔵へは行ったことはありませんでした。まず目に入るのは、大変大きな建物。コンクリート打ち放しのしゃれた外観の蔵です。


受付を済ませるためにイベント会場へ向かいますが、大変な人数。全国から370人の参加があるのだそうです。

さていくつかのグループに分かれて、見学コースへ出発です。


まず最初に精米棟へ。酒造りは米が基本ですが、造られる酒の種類によって、米の種類が違います。酒造は酵母から造られるのですが、すべていろいろな種類の米(もちろん酒の適合米です…)が選ばれます。そして、造りによって精米の割合も違います。


さて、次ぎにいよいよ蔵の中へ案内していただきます。
わたくしたちが入ったのは、<一号蔵>。4階もある大きな場所です。
酵母をふりかける前の蒸米

まず入り口で、頭髪が落ちないための紙の帽子、物を落とさないためのジャンパーが用意されており、着用してから入ります。


エレベータで一気に最上階へ。ここでまず<浸漬蒸し>の工程に。精米された米を水に浸して水分を与え、蒸していきます。蒸す道具は、「甑(こしき)」といい、一般家庭でいう「蒸籠(せいろ)」の親分のようなものでした。しかし現在では、大型機械のようになっていました。

そして次には酒のもととなる「酒母」を造るための麹造りになります。
この部屋は、暖かく温度管理されています。汗をにじませた蔵人さんの姿が印象的でした。

大きな桶のようなところに、蒸米が入れられています。そこに酵母を振りかけるのだそうです。
ふわっとした物で、黒っぽい緑色でした。

そしていよいよ<酒母(しゅぼ>造りです。いわゆる<もと>で、麹と蒸米に水を加えて培養されます。
ブクブクと泡立つ酒母


わたくしたちが覗いても、ぱっと分かるほどブクブクと泡立つ様子が分かりました。ここでアルコールが出来てきて、炭酸ガスも発生し、泡立つのだそうです。


わたくしたちが見学したときは3つの容器があって、酒母の出来具合の変化がよく分かりました。徐々に泡の立ち方が活発になっていきます。どんどんと酵母が増殖していくことになります。

それにしても<酒母>とはよく言ったものだと思います。これがまさに酒の母。これからいよいよ仕込みになっていくのです。



仕込み
日本酒の仕込みは「三段仕込み」という独特なもの。<初添え><中添え><留添え>といい、麹、蒸米、水を3回に分けて仕込みます。<留添え>の前には休みを入れるのですが、それを「踊り」というそうですが、酒造の言葉には味のあるものがあります。

言葉と言えば、酒造には「船」に関係ある言葉を見つけられますが、この仕込みのための道具も「櫂」と呼びますね。


昔の酒造の絵を見ると、大きな樽に人が上って、櫂を入れている様子をイメージします。この仕込みの様子を見ても分かるように、床の下にタンクがあるという作りになっています。ですからそのフロアーは、床に口が見えるだけで、あとはただ広い部屋のような感じです。しかし、その足下には生きている酒のもとがいるんだな、と思うとワクワクしてしまいます。

また、ただのフロアーとはいえ、温度管理等の施設はきちんとあります。かと思うと「松尾様」が神棚に祭られています。そして、すべての工程で次へのゴーサインを出すのは杜氏だという説明をお聞きして、あらためて杜氏の役割の重さを感じました。


その後の工程としては仕込まれた「もろみ」が、更にアルコール発酵するのを待って、「絞り=圧搾」になっていくわけです。



出来たて!の原酒をいただく
ところで、わたくしたちが見学させていただいた蔵で造られていたのは、朝日酒造でも代表的銘柄の<久保田>〜萬寿でした。
主に見学させていただいた<一号蔵>の出口では、その萬寿の原酒を味わうことができました。


蔵人さんがタンクから汲み出して下さった原酒を「利き猪口」でいただきます。原酒ですので、ピリッとした炭酸ガスを感じます。熟成をさせる前の酒ということで「若さ」を感じます。

また、原酒ということでアルコール度数もいくらか高めでした(何度かは…喜んで飲みまくっていましたので、聞き逃しました)。


しかし一般に出回らない萬寿の原酒を飲めるなんてことは、もうないでしょう。感激の中、蔵人さんのすすめてくださる原酒・萬寿を、2杯3杯と飲むことができました。

すっかりご機嫌になりました。また幾分暖かい日ではありましたが、それでも季節は冬。寒い中でいただいたお酒は、効きました。
体の内側から、ポーッとなってきました。

ちょっぴり名残惜しい感じもありましたが!ここで<久保田>〜萬寿を醸す<一号蔵>を後にしました。



全国へ出荷されるのを待つお酒

この後は、この日は稼働してませんでしたが、<瓶詰>の工場を通り抜けました。
そして圧巻の、新しく造られた新製品倉庫へ案内していただきました。何でも昨年出来たばかりの倉庫だそうです。

やはり温度管理、虫対策、紫外線等、様々な条件をクリアできるような、それはそれはすごい倉庫でした。
幾分ひやっとする室内に入れていただきました。

ここで、<久保田>をはじめとするお酒達が、出荷を待っているのでした。また生酒用の0度に保たれた冷蔵室もありました。
ここまできちんと管理されて、私たちにおいしくいただけるお酒を送って頂いているんだ!とまたまた感動でした。


こうして、酒蔵見学は終わりました。


その後は、イベント会場に戻って、蔵の皆さんが用意して下さった、お楽しみコーナーでしばし過ごしました。

やはり飲んべえは、真っ先に<利き酒>コーナーへ。しかし、利き酒どころか、ただ味見で飲んでいるだけ?といった感じになっていましたが…。

また<酒造唄>というコーナーでは、半纏に前掛けといったスタイルに変身、仕込みのようなスタイルで、インスタントカメラで写して頂きました。

他にも、粕汁や甘酒、こちらの仕込み水<宝水>で入れたお茶とかのサービスに大満足のひとときでした。


さて、その後は、会場を長岡市へ替えて、蔵人さんたちとの懇親会という企画に参加しました。

蔵人の皆さんが歌う<酒造唄>

社長のご挨拶に始まり、朝日酒造の皆さんが各テーブルにお越しになって、おしゃべりをしながら、<久保田><越州>などを飲み交わしながら、お料理をいただきました。

この見学会は、東京や四国、九州からもお集まりであったとのこと、さまざまなアトラクションも用意され、楽しいひとときを過ごしました。

中でも、蔵人さん達がステージに上がられて、杜氏の音頭で<酒造唄>を歌って下さったのには、これまた感激でした。

先のイベント会場で、酒造唄の写真を撮って頂いたとき、お近くにいた方にお聞きしましたが、今となっては<酒造唄>を歌いながらの作業というのは、見られなくなったとのこと。

でも、若い蔵人さんも含めて、こうした昔ながらの<酒造唄>がまだ歌われるというのは、正直ビックリしました。

朝日酒造では地元・越路杜氏がお見えということですが、越路の<酒造唄>を生で聴くことが出来たのでした。

酒は文化ですが、酒造も文化だと思います。世界にはいろいろな酒がありますが、「三段仕込み」を初めとして、独特な方法で醸造して、こうした日本酒ができているんだな…ということを再認識出来た見学会でした。
<2003年2月9日>
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