「胡弓」は、日本で唯一の擦弦楽器です。

◆マイ・胡弓◆



「胡弓」というと、中国の「二胡」のイメージが思い浮かびがちですが、ここでは日本の胡弓です。字面のイメージと、日本の楽器の割に、実際に目に触れることが少ないこともあって、同じものをさしてるように思われがちですが、全く違う楽器です。


形からすると、三味線をそのまま小さくしたような形で、弦が3本(4弦の胡弓も存在)、弓で擦奏します。バイオリンなどとは違い、指で調節しながら毛を張っては弾きます。また、弓の位置を動かすのではなく、楽器本体を動かすのも特徴です。


胡弓を使う音楽というと、日本の伝統音楽の世界では、明治以前の三曲の合奏でしょう。現在は三絃・箏・尺八ですが、江戸時代までは尺八ではなく胡弓であったそうです。現在でも、地歌の世界では《千鳥の曲》《八千代獅子》といった名曲に使われることもありますし、胡弓の独奏曲として《鶴の巣籠》なども聴くことができます。


一方、民俗音楽の世界では、北陸の民謡に多く使われています。代表的なものといえば、富山・越中八尾の「風の盆」で歌い踊られる《越中おわら節》の伴奏でしょう。いまや「おわら」に胡弓はなくてはならない楽器といえます。
また富山県内に数々残る「願念坊踊」などにも使われます。他にも、富山県では《麦や節》等の五箇山民謡にも使われています。


あるいは京都・宮津市の《松阪踊り》、鳥取県の《因幡大黒舞》といった日本海沿岸の民謡に多いような感じです。また三重県の古い《古調伊勢音頭》、大分県の《鶴崎踊り》など、あげることが出来ます。

普段、あまり生の音を耳にすることはありません。富山・八尾へは「風の盆」には行ったことはないのですが、ホテルで「おわら」を鑑賞できました。やはり生で聴いた胡弓の音色は、しみじみと染みいる音色でした。