郡上踊り 歌詞
参考:「郡上おどり」「歴史でみる郡上おどり」決定盤「正調郡上踊り」(CD)歌詞カード 
《かわさき》
○郡上のナー八幡 出ていく時は(ア ソンレンセ) 
  雨も降らぬに 袖しぼる
 (袖しぼるノー袖しぼる)アソンレンセ(雨も降らぬに袖しぼる) 
※以下、唄ばやし、返し省略
○天のナーお月様 ツン丸こて丸て   丸て角のて そいよかろ
○郡上のナー殿様 自慢なものは   金の弩標(どひょう)に 七家老
○心中ナーしたげな 宗門橋(そうもんばし)で   小駄良(こだら)才平(さいべい)と 酒樽と
○金がナー出る出る 畑佐の山で  銀と鉛と 赤がねと
○向(むかい)ナー小駄良の 牛の子を見やれ 親が黒けりゃ 子も黒い
○唄もナー続くが 踊りも続く 月の明るい 夜も続く
○日照りナーしたとて 乙姫様の 滝の白糸 切れはせぬ
○郡上はナー馬どこ あの磨墨(するすみ)の 名馬出したも 気良(けら)の里
○泣いてナー分かれて 松原行けば 松の露やら 涙やら
○忘れナーまいぞえ 愛宕の桜 縁を結んだ 花じゃもの
○駒はナー売られて いななき交わす 土用七日の 毛附け市
○白いナー黒いで 自慢なものは おらが在所の 繭と炭
○東殿(とうど)ナー山から 覗いた月を 写す鏡は 吉田川
○雪のナー降る夜は 来ないでおくれ かくし切れない 下駄の跡
○咲いたナー桜に なぜ駒つなぐ 駒が勇めば 花が散る
○郡上のナー八幡 出ていく時は 三度見返(かや)す 枡形を
○天のナーお月様 かかぁ盗まれて 雲の間(あい)から かかぁかかぁと
○私ゃナー郡上の 山奥育ち 主と駒曳く 糸も引く
○嫁をナーおくれよ 戒仏(かいぶつ)薬師 小駄良三里に 無い嫁を
○思いナー出しては くれるか様も わしも忘れる ひまがない
○お国ナー自慢にゃ 肩身が広い 郡上踊りに 鮎の魚
○泣いてナー分かれて いつ逢いましょか 愛(いと)し貴方は 旅のかた
○安久田(あくだ)ナー蒟蒻(こんにゃく) 名皿部(なさらべ)牛蒡(ごんぼ) 五町大根(だいこ)に 小野茄子(なすび)
○今夜ナー逢いましょ 宮ケ瀬橋で 月の出る頃 上がる頃
○見たかナー聞いたか 阿弥陀ケ滝の 滝の高さと あの音を
○郡上にナー過ぎたは 長滝講堂 飛騨に過ぎたは 一の宮
○音頭ナー取る娘の 可愛い声で 月も踊りも 冴えてくる
○盆にゃナーおいでよ 愛(う)い孫連れて 郡上踊りも 見るように
○祭りナー見るなら 祖師野(そしの)の宮よ 人を見るなら 九頭の宮
○踊らナーまいかよ 祖師野の宮で 四本柱を 中にして
○宇山ナー通るとて 会笹(かいざき)見れば 森屋おりんが 化粧する
○愛宕ナー三月 桜で曇る 曇る桜に 人が酔う
○散るとナー心に 合点はしても 花の色香に つい迷う
○鐘がナー鳴るのか 撞木が鳴るか 鐘と撞木と 合うて鳴る
○愛宕ナー山から 吉田の流れ 眺め見飽かぬ 宮瀬橋
○西もナー東も 南もいらぬ わたしゃあなたの 北がよい
○別れナー別れて 歩いておれど いつか重なる 影法師
○花のナー愛宕に 秋葉の紅葉 月がのぞくか 吉田川
○わしがナー出しても 合わまいけれど 合わぬところは ごめなさりょ
○唄もナー続くが 踊りも続く 月の明るい 夜も続く
○娘ナー島田に 蝶々がとまる とまるはずだよ 花じゃもの
○歌いナーなされよ 向かいのお方 唄で御器量は 下がりゃせぬ
○唄でナー御器量が もしいち下がりゃ 時の相場を 上げて
○もはやナーかわさきゃ やめてもよかろ 天の川原は 西東
三 百
○ハア揃えてござれ(ホイ)小豆ょかすよに ごしょごしょと
 (ごしょごしょとノーごしょごしょと)ホイ小豆ょかすよに ごしょごしょと

○ハアヨーオイヨイコリャー
  今年はじめて三百踊り(ホイ) おかしからずよ 他所の衆が
  (他所の衆がノー他所の衆が)ホイ(おかしからずよ 他所の衆が)

                                                      ※以下、唄ばやし、返し省略

○誰もどなたも 揃えてござれ 小豆ょかすよに ごしょごしょと
○おらが若い時ゃ チョチョラメてチョメて やかんかけるとて 魚籠(びく)かけた
○越前歩荷(ぼっか)の荷なら そこに下すな 鯖くさい
○今の音頭さは どんまいとこはねた おらもそこらと 思ていた
○何もかも仲間 なすび汁煮りゃ なお仲間
○買うておくれよ 朝鮮ベッコウのかんざしを 村でささぬは わしゃ一人
○泥鰌(どじょう)すいてきたに おかかなすびの ほぞとりゃれ
○どっこいしょと 堀越を越えて 行けば宮代 一夜とる
○寝たか寝なんだか まくらに問やれ まくら正直 寝たと言うた
○思い出しては くれるか様も わしも忘れる 暇がない
○切れてしまえば バラバラ扇子 風のたよりも 更にない
○土京(どきょう)鹿倉(かくら)のどんびき踊り 一つとんでは 目をくます
○てっかりてっかりてっかりと 金のようらく 下げたよな
○竹の切り株ちゃ 酒呑童子の小便桶(しょんべんけ) 澄まず濁らず 出ずいらず
○猫がねずみ取りゃ いたちが笑う いたち笑うな われも取る
○禿げた頭を やかんじゃと思て 番茶つまんで 叱られた
○後家とやもめと 座頭(ざっと)の子と瞽女と 禅宗坊様と お比丘尼と
○暑い寒いの 挨拶よりも 味噌の百匁も くれりゃよい
○泣いて別れて 清水橋越えて 五町のせば岩で けつ叩く
○今年ゃ何でもかんでも 嫁入りせにゃならぬ 同じすること 楽にする
○嫁入りしたけど しやわせわるて へそが出べそで 帰された
○川の瀬でさえ 七瀬も八瀬も 思い切る瀬も 切らぬ瀬も
○わしが出しても 合わまいけれど 合わぬところは 御免なさりょ
○盆が来たなら するぞえかかま 箱の宝の 繻子の帯
○面白い時ゃ お前さと二人 苦労する時ゃ わし一人
○田地買おうか 褌買うか どちらも倅の ためになる
○昔馴染みと 蹴つまずく石は 憎いながらも 後を見る
○様となら行く わしゃどこまでも 枝垂れ柳の 裏までも
○井戸の蛙と そしらばそしれ 花も散り込む 月も差す
○蕾が花よと 言うたは道理 開きゃ嵐に 誘われる
○よせばいいのに 舌切り雀 ちょっと舐めたが 身のつまり
○声がかれたに 水くりょと言うたら くんでくれたよ 砂糖水を
○恋に焦がれて 鳴く蝉よりも 鳴かぬ蛍が 身を焦がす
○娘したがる 親させたがる 箱の宝の 繻子の帯
○お前二十一 私は十九 四十仲良く 暮らしたい
○姉がさすなら 妹もさしゃれ 同じ蛇の目の 唐傘を
○同じ蛇の目の 唐傘をさせば どちが姉やら 妹やら
○音頭取りめが 取りくだぶれて さいた刀を 杖につく
《げんげんばらばら》
○ハァー
 げんげんばらばら何事じゃ 親もないが子もないが(アードッコイショ)
 一人貰うた男の児 鷹に取られて今日七日(アードッコイショ)
 七日と思えば四十九日 四十九日の墓参り 叔母所(おばんところ)へ一寸寄りて(アードッコイショ)
 羽織と袴を貸しとくれ あるものないとて貸せなんだ(アードッコイショ)
 おっぱら立ちや腹立ちや 腹立ち川へ水汲みに(アードッコイショ)
 上ではとんびがつつくやら 下ではからすがつつくやら 助けておくれよ長兵衛さん(アードッコイショ)
 助けてあげるが何くれる 千でも万でもあげまする(ハイヤマカサッサイ ヤットコセ)

                                                                        ※以下、唄ばやし、省略
○ハァー
 私ゃ紀の国みかんの性(たち)よ 青いうちから見初められ 赤くなるのを待ちかねて かきおとされて拾われて
 小さな箱へと入れられて 千石船に乗せられて 遠い他国に送られて 肴や店にて晒されて 
 近所あたりの子ども衆に 一文二文と買い取られ 爪たてられて皮むかれ 甘いかすいかと味みられ
 わしほど因果なものはない

○ハァー 

 立つ立つづくしで申すなら 一月門には松が立つ 二月初午稲荷で幟立つ 三月節句に雛が立つ
 四月八日に釈迦が立つ 五月節句に幟立つ 六月祇園で祭り立つ 七月郡上で踊り立つ
 八月九月のことなれば 秋風吹いてほこり立つ 十月出雲で神が立つ 十一月のことなれば
 こたつが立ってまらが立つ 十二月のことなれば 借金とりが門に立つ 余り催促厳ししゅうて 内のかかあ腹が立つ
○ハァー
 駕篭で行くのはお軽じゃないか 私ゃ売られていくわいな 主のためならいとやせぬ しのび泣く音は加茂川か
 花の祇園は涙雨 金が仇(かたき)の世の中か 縞の財布に五十両 先へとぼとぼ与市兵衛
 後からつけ行く定九郎 提灯バッサリ闇の中 山崎街道の夜の嵐 勘平鉄砲は二つ玉 

○ハァー 
 器量がよいとてけん高ぶるな 男がようて金持ちで それで女が惚れるなら 奥州仙台陸奥の守
 陸奥の守の若殿に なぜに高尾が惚れなんだ
○ハァー
 田舎育ちの鶯が初めて東へ下るとき 一夜の宿をとりそこね 西を向いても宿はなし 東を向いても宿はなし 梅のこずえを宿として
 花の蕾を枕として落つる木の葉を夜具として 月星眺めて法華経読む
○ハァー
 おぼこ育ちのいとしさは しめた帯からたすきから ほんのりこぼれる紅の色 燃える想いの恋心
 かわいがられた片えくぼ 恥ずかしいやらうれしいやら うっとり貴男の眼の中で 私ゃ夢見るすねてみる

○ハァー
 びんのほつれをかきあげながら 涙でうるむふるい声 私ゃお前があるがゆえ ほうばい衆や親方に
 いらぬ気兼ねや憂き苦労 それもいとわず忍び逢い 無理に工面もしようもの 横に車を押さずとも
 いやならいやじゃと言やしゃんせ 相談づくのことなれば 切れても愛想はつかしゃせぬ
 酒じゃあるまいその無理は 外に言わせる人がある

○ハァー
 髪は文金高島田 私ゃ花嫁器量よし 赤いてがらはよいけれど 物が言えない差し向かい
 貴男と呼ぶも口の内 皆さん覗いちゃ嫌ですよ

○ハァー
 十四の春から通わせおいて 今更嫌とは何事じゃ 東が切りょか夜が明けようが お寺の坊さん鐘撞こうが
 向かいのでっちが庭掃こが 隣のばあさん火を焚こうが 枕屏風に陽はさそが

 家から親たちゃ連れにこが そのわけ聞かねばいのきゃせぬ
○ハァー
 娘十八嫁入り盛り 箪笥長持はさみ箱 これほど持たせてやるからは 必ず帰ると思うなよ 申しかかさんそりゃ無理よ
 西が曇れば雨となり 東が曇れば風となる 千石積んだ船でさえ 追い手が変われば出て戻る
○ハァー
 筑紫の国からはるばると 父を訪ねて紀伊の国 石童丸はただ一人 母の仰せを被りて かむろの宿で名も高き
 玉屋与平を宿として 九百九十の寺々を 訪ねさがせど分からない それほど恋しい父上を
 墨染め衣にしてくれた ぜんたい高野が分からない

○ハァー
 郡上八幡かいしょう社 十七、八の小娘が 晒しの手拭い肩にかけ こぬか袋を手に持ちて
 風呂屋はどこよとたずねたら 風呂屋の番頭の言うことにゃ 風呂はただ今抜きました
 抜かれたあなたは良いけれど 抜かれたわたしの身が立たぬ

さわぎ
○ハァー呑めよ騒げよ一寸先ゃ闇よ(コラサ) 今朝も裸の下戸が来た※以下、唄ばやし、省略
○ハァー花が蝶々か蝶々が花か 来てはちらちら迷わせる
○ハァー水させ水させ薄くはならぬ 煎じつめたる仲じゃもの
○ハァーさいた盃中見てあがれ 中にゃ鶴亀五葉の松
○ハァー私ゃ唄好き 念仏嫌い 死出の山路は唄で越す
○ハァー若い娘と新木(あらき)の船は 人が見たがる乗るたがる
○ハァー今年ゃうろ年うろたえました 腹におる子の親がない
○ハァー鶯鳥でも初音はよいに 様と初寝はなおよかろ
○ハァー向かい小山に 日はさいたれど 嫁の朝寝は起こしゃせぬ
○ハァー一夜寝てみて寝肌がよけりゃ 妻となされよいつまでも
○ハァー泣いて別れて松原行けば 松の露やら涙やら
○ハァー今宵一夜は浦島太郎 開けて口惜しや玉手箱
○ハァー思い出いてはくれるか様も わしも忘れる暇がない
○ハァー明日はお立ちかお名残惜しや 雨の十日も降ればよい
○ハァー親の意見と茄子の花は 千に一つの無駄がない
○ハァーへちまの野郎がめっぽう太り 育てた垣根を突き倒す
○ハァー無理になびけと言うのは野暮よ 柳と女は風次第
○ハァー姉は破れ笠させそでさせん 妹日傘で昼させる
○ハァー若い内じゃも一度や二度は 親も目長にしておくれ
○ハァー梅の匂いを桜に持たせ 枝垂れ柳に咲かせたい
○ハァー梅も嫌いよ桜も嫌だ 桃とももとの合いが好き
○ハァー色の小白い別嬪さん惚れて 烏みたよな苦労する
○ハァーついておいでよこの提灯に 消して苦労はさせはせぬ
○ハァー三味の糸ほどキュックラキューと締めて 撥の当たるほど寝てみたい
○ハァー鶯でさえ初音はよいが あなたと初寝はなおよかろ
○ハァー月のあかりで山道越えて 唄で郡上へ駒買いに
○ハァー様はよい声細谷川の 鶯の声面白い
○ハァー惚れてくれるなわしゃ弟じゃに 連れて行くにも家がない
○ハァー西も嫌いよ東も嫌だ わたしゃあなたの北がよい
○ハァー浮気男と茶釜の水は わくも早いがさめやすい
○ハァー惚れていれども好かれておらず 磯の鮑の片思い
○ハァー今夜寝にくる寝床はどこじゃ 東枕に窓の下
○ハァー東枕に窓とは言うたが どちが西やら東やら

<字余り>
○ハァー竹に雀は あちらの藪からこちらの藪まで チュンチュンバタバタ羽交を揃えて 品よくとまる
  止めて止まらぬ色の道

○ハァー娘島田を 根っからボックリ切って 男のへそにたたきつけ それでも浮気の止まない時には
  宗十郎の芝居じゃないが 行灯の陰から ヒューヒュラヒュッと化けて出る

○ハァー雨はしょぼしょぼ降る 蛇の目の唐傘 小田原提灯 ガラガラピッシャンドッコイ姉さんこんばんは
  誰かと思ったら主さんが 
○ハァー竹の一本橋 すべりそうでころがりそうで危ないけれど 蛇の目の唐傘 お手手をつないで 主となら渡る
  落ちて死んでも二人連れ

○ハァー竹になりたや 大阪天満の天神様の お庭の竹に
  元は尺八中は笛 裏は大阪天満の天神様の文を書く 法名を書く筆の軸
○ハァー摺り鉢を伏せ眺める三国一の 味噌をするのが富士の山
○ハァーござるたんびに ぼた餅かい餅うどんにそうめんそば切りやないで
  なすび漬け喰ってお茶まいれ
○ハァー郡上八幡 来年来るやら又来ないやら 来ても逢えるやら逢えぬやら
○ハァー竹の切り株に なみなみたっぷり溜まりし水は 澄まず濁らず出ず入らず
○ハァー瀬田の唐橋 膳所(ぜぜ)の鍛冶屋と大津の鍛冶屋が 朝から晩まで飲まずに食わずにトッテンカッテン 叩いて伸ばして
  持って来てかぶせた唐金擬宝珠(ぎぼし) それに映るは膳所の城
○ハァー朝顔の花の 花によく似たこの杯は 今日もさけさけ 明日もさけ
○ハァー十二本梯子を 一挺二挺三挺四挺五六挺かけても 届かぬ様は お天道様じゃとあきらめた
○ハァーあまりしたさに 前に鏡立て中よく見れば  中は紺ちゃん黒茶のエリマキシャーリング らしややしょじょひの立烏帽子
○ハァー声が出ない時ゃ 干支じゃないけど ネウシトラウタツミの隣のどん馬のけつを ギュッギュらくわえてチュッチュラチュとすやれ
  馬のけつから声が出る

春 駒
(七両三分の春駒春駒)
○(ホイ)郡上は馬どこ(ホイ) あの磨墨の 名馬(ホイ) 出したも ササ気良の里(七両三分の春駒春駒)

                                                                              ※以下、唄ばやし、省略
○私ゃ郡上の 山奥育ち 主と馬曳く ササ糸も引く
○金の弩標(どひょう)は 馬術のほまれ 江戸じゃ赤鞘(あかざや) ササ郡上藩
○駒は売られて いななき交わす 土用七日の ササ毛附け市
○なんと若い衆よ 頼みがござる 今宵一夜は ササ夜明けまで
○日照りしたとて 乙姫様の 滝の白糸 ササ切れはせぬ
○村じゃ一番 お庄屋様の 小町娘の ササ器量のよさ
○踊り子が来た 大門先へ 繻子(しゅす)の帯して ササ浴衣着て
○二十五日は 天神祭り ござれ小瀬子の ササ茶屋で待つ
○東殿(とうど)山から 覗いた月を 映す鏡が ササ吉田川
○様が三夜の 三日月様を 宵にちらりと ササ見たばかり
○親のない子に 髪結うてやれば 親が喜ぶ ササ極楽で
○様が様なら 私じゃとても かわる私じゃ ササないわいな
○様は三夜の 三日月様よ 宵にちらりと ササ見たばかり
○親の意見と 茄子(なすび)の花は 千に一つの ササ無駄はない
○郡上の殿様 自慢なものは 金の弩標(どひょう)に ササ七家老
○揃た揃たよ 踊り子が揃た 二番すぐりの ササ麻の様に
○踊り上手で 身上持ちようて 赤い襷の ササ切れるまで
○踊り踊って 嫁の口なけりゃ 一生後家でも ササ構やせぬ
○踊り助平が 踊りの夢で 音頭寝言に ササ取っている
○踊り助平が 今来たわいな わしも仲間に ササしておくれ
○向かい小山に 日はさいたれど 嫁の朝寝は ササ起こしゃせぬ
○人は一代 名は末代と およしゃお城の ササ人柱
○馬は三才 馬方二十歳 着けたつづらの ササ品のよさ
○音頭取りめが 橋から落ちて 橋の下でも ササ音頭取る
○遠く離れて 咲く花待てば 散りはせぬかと ササ気は紅葉
○思うことさえ 言われぬ口で 嘘がつかれる ササはずがない
○島田娘と 白地の浴衣 ちょっとしたまに ササ色が着く
○からむ朝顔 ふり切りかねて 身をばまかせた ササ垣の竹
○肩を叩くは 孝行息子 すねをかじるは ササどら息子
○嫌な雪じゃと はね返しても 義理が積もれば ササ折れる竹
○花は咲いても わしゃ山吹の ほんに実になる ササ人はない
○愛宕山から 春風吹けば 花の郡上は ササちらほらと
○咲いた桜に なぜ駒つなぐ 駒が勇めば ササ花が散る
○今日は日がよて 朝からようて 思う殿まに ササ二度会うた
○声はすれども 姿は見えぬ 様は草場の ササきりぎりす
○様が草場の きりぎりすなら わたしゃ野山の ササほととぎす
○音頭取りめが 取りくだぶれて さいた刀を ササ杖につく
ヤッチク
(アラヤッチクサッサイ)
○私がちょいと出てべんこそなけれど(アラヤッチクサッサイ) 私ゃ郡上の山中家(さんちゅうや)に住めば(アラヤッチクサッサイ)
 お見かけ通りの若輩なれば(アラヤッチクサッサイ) 声も立たぬがよ文句やも下手よ(アラヤッチクサッサイ)
 下手なながらも一つは口説く(アラヤッチクサッサイ) 口説くに先立ち頼みがござる(アラヤッチクサッサイ)
 とかくお寺は檀家衆が頼り(アラヤッチクサッサイ) やせ畑作りは肥やしが頼り(アラヤッチクサッサイ)
 村の娘達ゃ若い衆が頼り(アラヤッチクサッサイ) そして又若い衆は娘さんが頼り(アラヤッチクサッサイ)
 下手な音頭取りゃおはやし頼り(アラヤッチクサッサイ) ヤッチクヤッチクさとおはやし頼む(アラヤッチクサッサイ)
 調子揃えば文句やにかかる(アラヤッチクサッサイ)
※以下、唄ばやし同様
<郡上義民伝>上の巻
○これは過ぎにしその物語 聞くも哀れな義民の話
 時は宝暦五年の春よ 所は濃州(のうしゅう)郡上の藩に
 領地三万八千石の その名金森出雲の守は
 時の幕府のお奏者(そうじゃ)役で 派手な勤めにその身を忘れ
 すべて政治は家老に任せ 今日も明日もと栄華にふける
 金が敵か浮世の習い お国家老の粥川(かゆかわ)仁兵衛
 お江戸家老と心を合わせ ここに悪事の企ていたす
 哀れなるかな民百姓は あれもこれもと課税が増える
 わけて年貢の取りたてこそは いやが上にも厳しい詮議
 下(しも)の難儀は一方(ひとかた)ならず かかる難儀に甚助殿は
 上(かみ)の噂をしたとの科(とが)で すぐに捕らわれ水牢の責め苦
 責めた挙げ句が穀見ケ原(こくみがはら)で 哀れなるかな仕置きと決まる
 かくて苦しむ百姓衆を 見るに見かねた名主の者が
 名をば連ねて願い出すれど 叶うどころか詮議は荒く
 火責め水責め算盤(そろばん)責めに 悶え苦しむ七十余人
 餓え死にする者日に増すばかり 最早堪忍これまでなりと
 誰が出したか回状が廻る 廻る回状が何よと問えば
 北濃(ほくのう)一なるアノ那留ケ野(なるがの)に 心ある衆皆集まれと

 事の次第が記してござる
<郡上義民伝>中の巻
○時が来かよ三千余人 蓆旗(むしろばた)や竹槍下げて
 百姓ばかりが雲霞のごとく 既にお城へ寄せんず時に
 待った待ったと人押し分けて 中に立ったは明方村の
 気良(けら)じゃ名主の総代勤め 人に知られた善右衛門(ぜんねもん)殿で
 江戸に下り手将軍様に 直訴駕籠訴(かごそ)を致さんものと
 皆に図れば大勢の衆が 我も我もと心は一つ
 わけて気強い三十余人 道の難所と日数を重ね
 やがてついたが品川面(しながわおもて) されど哀れや御用の縄は
 疲れ果てたるその人々を 一人残らず獄舎に繋ぐ
 聞くも涙よ語るも涙 ここに哀れな孝女の話
 名主善右衛門に一人の娘 年は十七その名はおせき
 父はお江戸で牢屋の責め苦 助け出すのは親への孝行
 そっと忍んで家出をいたし 長の道中もか弱い身とて
 ごまの蠅やら悪者どもに 既に命も危ういところ
 通り合わした天下の力士 花も実もある松山関と
 江戸屋親分幸七殿が 力合わせて娘を助け
 江戸に連れ行き時節を待てば 神の力か仏の業(わざ)か
 幸か不幸か牢屋が焼ける それに紛れて善右衛門殿は
 逃れ逃れて墨田の土手で 巡り会うのも親子の縁よ
 時節到来御老中様が 千代田城にと御登城と聞いて
 名主善右衛門はじめといたし 同じ願いに五人の者は
 芝で名代の将監橋で 恐れながらと駕籠訴いたす
 かくて五人はその場を去らず 不浄縄にといましめられて
 長井間の牢屋の住まい 待てど暮らせど吟味はあらず
 もはや最後の箱訴なりと 城下離れし市島村の
 庄屋孫兵衛一味の者は 江戸に下りて将軍様に
 箱訴なさんと出で立つ間際

<郡上義民伝>下の巻
○話かわりて孫兵衛宅の 妹お滝は利発な生まれ
 年は十六つぼみの花を 水仕奉公と事偽りて
 二年前から間者の苦労 今日も今日とて秘密を探り
 家老屋敷をこっそり抜けて 家へ戻って語るを聞けば
 下る道中太田の渡し そこに大勢待ち伏せなして
 一人残らず捕らえるたくみ そこで孫兵衛にっこり笑い
 でかした妹この後とても 秘密探りて知らせてくれよ
 言うてその夜に出立いたす 道の方角からりと変えて
 伊勢路回りで桑名の渡し 宮の宿から船にと乗りて
 江戸に着いたは三月半ば 桃の節句はのどかに晴れる
 四月三日に箱訴いたし すぐにお裁き難なく終わり
 悪政露見で金森様は ついにお家も断絶いたす
 それに連なる重役達も 重いお仕置きまた島流し
 名主お庄屋その他の者は 願い主とて皆打ち首と

 ここに騒動も一段落し 宝暦九年は青葉の頃に
 郡上藩へは丹後の宮津 宮津城主の青山様が
 御高四万八千石で 御入城とは夢見る心地
 政治万端天地の変わり 長の苦しみ一時に消えて
 いつものどかに郡上の里
 めでためでたの若松様か 枝も栄える葉も茂る
 これぞ義民の賜ぞとて ともに忘るなその勲し(いさおし)を
 ともに伝えん義民の誉れ
  
《甚 句
○櫓ヨー太鼓に ふと目を覚まし(トコドッコイドッコイ)
 明日はヨーどの手で コイツァ投げてやる(トコドッコイドッコイ)

      ※以下、唄ばやし省略
○角力(すもう)にゃエー負けても 怪我さえなけりゃ たまにゃヨー私も コイツァ負けてやる 
○思うヨー様なら 竹よとかけて 水でヨー便りが コイツァして見たい
○角力にゃエー投げられ 女郎(おやま)さんにゃふられ どこでヨー立つ瀬が コイツァわしが身は
○夜明けヨーましたら 起こしておくれ お前ヨー頼りで コイツァ居るわいな
○角力ナー取りじゃの 道楽じゃのと 言うてヨー育てた コイツァ親はない
○今年ゃヨーこうでも また来年は こうもヨーあるまい コイツァなよ殿ま
○歌うてエー出たぞえ お庭の鳥が いつにヨー変わらぬ コイツァ良い声で
○嫁をエーおくれよ 戒仏薬師 小駄良ヨー三里に コイツァない嫁を
○白いヨー黒いで 自慢なものは おらがヨー在所の コイツァ繭と炭
○小田のエーかわずは 身にあやまりが あるかヨー両手を コイツァついて鳴く
○ついてヨー行きたい 送りに出たい せめてヨー御番の コイツァ札所まで
○どうせヨーこうなら 二足の草鞋 ともにヨー履いたり コイツァ履かせたり
○信州エー信濃の新蕎麦よりも わたしゃヨーあなたの コイツァそばがよい
○絞りヨー浴衣に かんざし添えて 毛付けヨー土産と コイツァ投げ込んだ
○馬じゃヨー摺墨(するすみ) 粥川鰻 響くヨー那留石 コイツァ宗祇水
○盆のエー十四日にゃ お寺の前で 切り子ヨー行燈を コイツァ中にして
○よそのエー若い衆か よう来てくれた 裾がヨー濡れつら コイツァ豆の葉で
○盆じゃヨー盆じゃと 待つ内ゃ盆よ 盆がヨーすんだら コイツァ何を待つ
○お前ヨー一人か 連れ衆はないか 連れ衆ヨーあとから コイツァ駕籠で来る
○小那比エー松茸 前谷山葵 気良じゃヨー馬のこ コイツァ坪佐炭
○天気エーよければ 天王様の 宮のヨー太鼓の コイツァ音のよさ
○ここのヨーお庭に 茗荷と蕗と 御冥加ヨー栄える コイツァ富貴繁盛
○お前ヨー松虫 わしゃきりぎりす 障子ヨー一重で コイツァ鳴き明かす
○八重のエー山吹 派手には咲けど 末はヨー実のない コイツァことばかり
○せかずとお待ちよ 時節がくれば 咲いてヨーみせます コイツァ床の梅
○上をエー思えば 限りがないと 下をヨー見て咲く コイツァ百合の花
○いやなエーお方の 親切よりも 好きなヨーお方の コイツァ野暮がよい
○惚れりゃエー千里も 一里じゃなどと 虎のヨー尾につく コイツァ古狐
○紺のヨー暖簾に 松葉の散らし まつにヨーこんとは コイツァ気にかかる
○ついてヨーおいでよ この提灯に けしてヨー苦労は コイツァさせはせぬ
○姉とヨー言うたれど 妹をおくれ 姉はヨー丙の コイツァ午の年
○姉はヨー丙の 午年なれど 妹ヨー庚の コイツァ申の年
○郡上はエーよいとこ 住みよいところ 水もヨー良ければ コイツァ人もよい 
<野口雨情作詩>
○踊りエー踊ろうとて 人さまよせて 一目ヨー逢いたい コイツァ人がある
○今夜エー逢いましょう 宮ケ瀬橋で 月のヨー出る頃 コイツァ昇る頃
○山にエー春雨 野に茅花(つばな) いねのヨー陰から コイツァつばくらめ
○青いエーすすきに 蛍の虫は 夜のヨー細道 コイツァ通て来る
○狸エー出てきて お月さんに化けな 今夜ヨー闇夜で コイツァ道ぁ暗い
○踊りエー踊るのに 下うつむいて 誰にヨー気兼ねを コイツァするのやら
○秋のエー夜長を 夜もすがら 空にヨーまんまる コイツァ月の影
○谷のエー木陰に 降る雪は 笹にヨーそばえて コイツァ夜を明かす
○雲のエー行き来に また山隠す 郡上はヨー山又 コイツァ山の中
古調かわさき》
○郡上のナー八幡 コラ出ていく時は(ア ソンレンセ) 
  三度見かやす枡形(ますがた)を
 (枡形をノー枡形を)アソンレンセ(三度見かやす枡形を)
※以下、唄ばやし、返し省略
○天のナーお月様 コラかか盗まれて 雲の間(あい)から かかァかかァと
○どんなナーことにも コラよう別れんと 様も一口ゃ 言うておくれ
○踊りナーつかれて コラはや夜が明けた 何の話も できなんだ
○わしのナー殿まは コラこの川上の 水の流れを 見て暮らす
○婆さナー枕元 コラ箱根の番所 通り抜けたも 知らなんだ
○思いナー出しては コラくれるか様も わしも忘れる 暇がない
○夜明けナーましたら コラ起こしておくれ お前頼りで いるわいな
○今年ゃナーこうでも コラまた来年は こうもあろまい なよ殿ま
○声のナー良い衆は コラその身の徳じゃ 諸国諸人に 思われる
○昔ゃナー 侍 コラ今世に落ちて 小笹まざりの 草を刈る
○盆のナー十四日にゃ コラ蓮の葉となりて 一夜もまれて 捨てられた
○何がナー何でも コラお前さでなけりゃ 東ゃ切れても 夜は明けぬ
○桑もナーよく咲け コラお蚕も良かれ 若い糸引きょ 頼まずに
○坊主ナー山道 コラ破れし衣 行きも帰りも 木にかかる
○今宵ナー一夜は コラ浦島太郎 明けて悔しや 玉手箱
○親のナーない子の コラ髪結うてやれば 親が喜ぶ 極楽で
○おらがナー若い時ゃ 五尺の袖で 道の小草も なびかせた
○二十ナー五日は コラ天神祭 ござれ小瀬子の 茶屋で待つ
○天気ナー良ければ コラ大垣様の 城の太鼓の 音の良さよ
○天のナー星ほど コラ夜妻あれど 月と守るは 主一人
○思うナーようなら コラ竹どよかけて 水で便りが してみたい
○咲いてナー悔しや コラ千本桜 鳥も通わぬ 奥山に
○泣いてナー別れて コラ松原行けば 松の露やら 涙やら
○泣いてナー別れて コラいつ逢いましょか いとしあなたは 旅の人
○明日はナーお発ちか コラお名残惜しや 雨の十日も 降ればよい
○高いナー山には コラ霞がかかる 若い娘にゃ 気がかかる
○郡上はナーよいとこ コラよい茶ができる 娘やりたや お茶摘みに
○お前ナー二十一 コラわたしは十九 四十仲良く 暮らしたい
○植えてナーおくれよ コラ畦にも田にも 畦はかかまの しんがいに
○今日のナー田植えは コラ春三月の 桜花かよ ちらちらと
○那比のナー字留良や コラのう亀尾島も 住めば都じゃ のや殿ま
○泥でナー咲かした コラこのかきつばた 活けて根じめが 見てほしい
○気だてナーよけりゃと コラ言うたことぁ言うたが されどご器量が 気にかかる
○人をナー泣かせりゃ コラまた泣かされる ともに泣いたり 泣かせたり
○歌はナー唄やれ コラ話はおきゃれ 話ゃ仕事の 邪魔になる
○わしとナーあなたと コラ草刈る山に 藪や茨が なけりゃよい
○藪やナー茨が コラありゃこそよかれ 藪の木陰も のや殿ま 
○もはやナーかわさきゃ コラやめてもよかろ 天の川原は 西東
○天のナー川原は コラ西東でも 今宵一夜は 夜明けまで

《猫の子
○ヤアヨーホーイヤーヨーイ
 猫の子がよかろ(猫の子がよかろ)
 猫でしやわせ コラねずみょ取る
 (ねずみょ取るノーねずみょ取る 猫でしやわせ コラねずみょ取る)
※以下、唄ばやし、返し省略
○猫がねずみ取りゃ いたちが笑う いたち笑うな コラわれも取る
○誰もどなたも 猫の子にしょうまいか 猫でしやわせ コラねずみょ取る
○てっかりてっかりてっかりと 金のようらく コラ下げた様な
○親の意見と茄子の花は 千に一つの コラ無駄がない
○よせばいいのに 舌切り雀 ちょいとなめたが コラ身のつまり
○坊主山道 破れし衣 行きも帰りも コラ気にかかる
○大笹原で 誰か寝たよな コラ跡がある
○寝たか寝なんだか 枕に問やれ 枕正直 コラ寝たと言うた
○婆さ枕元 箱根の番所 通り抜けたも コラ知らなんだ
○越前歩荷(ぼっか)の荷なら そこで下ろすな コラ鯖くさい
○破れ褌 将棋の駒よ 角と思えば コラ金が出た
○夕んべ夜這人(よばいにん)が 猫踏みころいた 猫で返しゃれ コラ熊笹で
○夕んべ夜這人(よばいと)が 二階から落ちて 猫の鳴き真似 コラして逃げた
○様と三日月ゃ 宵にばかござる いつかござれよ コラ有明に
○来るか来るかと 待つ夜は来ずに 待たぬ夜に来て コラ門に立つ
○門に立ったる 西国巡礼 住まい名乗れよ コラ婿に取る
○住まい名乗れば 恥ずかしょござる 旧の目とりの コラ子でござる
○坊主だまいて 金取ろまいか せんぶまんぶの コラお経の金
○鶯鳥でも 初音は良いに 様と初寝は コラなお良かろ
○様の親切 たばこの煙 次第次第に コラ薄くなる
○色で身を売る 西瓜でさえも 中にゃ苦労の コラ種がある
○元まで入れて 中で折れたら コラどうなさる
○一夜寝てみて 寝肌が良けりゃ 妻となされよ コラ末までも
○一夜ござれと 言いたいけれど まんだ嬶まの コラ傍で寝る
○何と若い衆よ じゃけらはおきゃれ じゃけらしてから コラ子ができた
○姉と言うたれど 妹をおくれ 姉は丙の コラ午の年
○夜は何時じゃ しのべ九つ コラ夜は七つ
○切れてしまえば バラバラ扇子 風の便りも コラ更にない
○昔馴染みと 蹴つまづいた石は 憎いながらも コラ後を見る
○小野の娘と 馴染みになれば 日焼けなすびを コラただくれる
○竹に雀は 品よく止まる 止めて止まらぬ コラ色の道
○よそへ踏み出し はばかりながら 音頭とります コラ御免なさりょ
○桑の中から 小唄がもれる 小唄聴きたや コラ顔見たや
○おもて四角で 心は丸い 人は見かけに コラよらぬもの
○けちで助平で 間抜けで馬鹿で お先煙草で コラ屁をたれる
○好きと嫌いと 一度に来たら 箒建てたり コラ倒したり
○腰のひねりで きが行くなれば 筏流しは コラ棹ささぬ
○よそで陽気な 三味線聞いて 内で陰気な コラ小言聞く
○金が持ちたい 持ちたい金が 持てば飲みたい コラ着てみたい
○よくもつけたよ 名を紙入れと ほんにあるのは コラ付けばかり
○思うて通えば 千里も一里 障子一重も コラ来にゃ遠い
○嫌と言うのに 無理押し込んで 入れて鳴かせる コラ籠の鳥
○どっこいしょと 堀越こえて 行けば宮代 コラ一夜とる
○一合の酒も 口で移せば コラ二合となる
○門に立ったる 西国巡礼 住まい名乗れよ コラ婿に取る
○住まい名乗れば 恥ずかしょござる 臼の目とりの コラ子でござる
○一つ事ばか 面白ないで 品を替えては コラやろまいか

まつさか
○ヨーホーイモヒトツショ(オーサーテ合点ショー)
○合点と声がかかるなら(コライコライ) これから文句に掛かりましょ(ア ヨイヤナ ヤートセ)
  すべてお寺は檀家(だんけ)から(コライコライ) 痩せ畑作りはこやしから(ア ヨイヤナ ヤートセ)
  下手な音頭も囃しから(コライコライ) お囃子頼む総輪様(そうわさま)(ア ヨイヤナ ヤートセ)
以下、唄ばやし省略
<名所案内>
○鵜舟の篝火赤々と 世にも名高き長良川
 その水上(みなかみ)の越美線(えつみせん) 郡上八幡名にしおう
 三百年の昔より 士農工商おしなべて
 泰平祝う夏祭り 音頭手拍子面白く
 唄い楽しむ盆踊り 郡上の八幡出る時は
 雨も降らぬに袖しぼる これぞまことのにこの里の
 人の心をそのままに いつしか唄となりにかる
 山は秀でて水清く 春は桜の花に酔い
 秋はもみじ葉茸狩り 夏は緑の涼風や
 冬また雪の遊戯(たわむれ)と 名所の多き郡(こおり)とて
 訪ねる人の数々に いざや探らん道しるべ
 大日ケ岳仰ぎつつ 阿弥陀ケ滝をおとなえば
 六十丈の虹吐いて 夏よせつけぬ滝の音
 滝の白糸長々と 一千年の昔より
 由緒(いわれ)は深き長瀧に 今も睦月の六つの日を
 喜び菊の花祭り 人は浮かれてくるす野の
 宮居に匂う桜花 緑萌え出る楊柳寺(ようりゅうじ)
 のどかなる野の那留(なる)石の その名は高く世に響く
 宗祇の流れ今もなお 汲みてこそ知れ白雲(しらくも)の
 絶えせぬ水の末かけて 積もる翠(みどり)の山の上(え)に
 霞ケ城の天守閣 朝日に映る金の鯱(しゃち)
 昔を偲ぶ東殿(とうでん)の 山の端出づる月影に
 匂う愛宕のすみぞめや 彼岸桜や山桜
 訪(と)い来る人の絶え間なく 杖ひくからぬ稚児の峰
 卯山(うやま)おろしの風穴に いでそよそよと立ちし名の
 浮きて流るるあさが滝 深き思いを叶(かなえ)橋
 行き交う人は深草の 小町にちなむ小野の里
 契りはかたき石の面(も)に 写りまします管公(かんこう)の
 冠ならぬ烏帽子岳 麓続きの村里は
 寿永の名馬磨墨(するすみ)の 出し所と言い伝う
 名も高光にゆかりある 高賀の山の星の宮
 矢納ケ淵(やとがふち)や粥川に 振り返りつつ蓬莱の
 岩間流るる長良川 河鹿の声のおちこちに
 ひかれて舟に棹させば 浮世の塵もいつしかに
 洗い捨てたる心地する 水の都か花の里
 郡上の八幡出る時は 雨も降らぬに袖しぼる
 踊りと唄とで町の名も 広く聞こえて栄ゆく
 里の皆衆も他所の衆も 音頭手拍子うちそろえ

 これぞ真に総輪様 永く伝わるこの里の
 郡上おどりの誉をば 万代(よろずよ)までも伝えなん

 
<歌の殿様>
〜「歌でお城を」

○お聞きなされよ皆の衆 歌の殿様常縁(つねより)が
 歌で天下に名をあげて 歌でお城を取り戻す
 平和の里にふさわしき 歌の郡上の物語
 郡上のお城の始まりは 下総東氏(とうし)が功により
 山田の庄を加えられ 承久年間胤行(たねゆき)は
 剣 阿千葉に館して 郡上東家の開祖(もと)となる
 文武すぐれしわが東家 代々にすぐれし和歌の道
 勅撰集に名を連ね その名天下に聞こえたり
 戦乱続き消えかけし 足利時代の文学(ふみ)の道
 支えしちからはわが東家 五山文学あればこそ
 殊に七代常縁は 和歌に秀でし功により
 公家将軍の歌会(うたえ)にも 常に列して名は高し
 時に関東(あづま)に乱起こり ときの将軍義政は
 常縁公に命じてぞ 東庄回復はかりたる
 常縁郡上の兵連れて 関東に転戦十余年
 その頃京は応仁の 戦乱長くうち続き
 美濃の土岐氏は山名方 郡上の東家は細川に
 昨日の友は今日の敵 争いあうぞ是非もなき
 ついに土岐氏の家臣なる 斎藤妙椿(みょうちん)大挙して
 東氏本城篠脇の 城を襲いて奪いけり
 常縁関東にこれを聞き いたく嘆きて歌一首
 亡父追善法要に ちなみて無常歌いしに
 この歌郡上に伝わりて 聞く者胸をうたれけり
 妙椿これを伝え聞き 心は通う歌の道
 敵とはいえど常縁の ゆかしき心思いやり
 関東の空に歌だより ついに一矢(いっし)も交えずに
 十首の歌と引き換えに 郡上の領地返しけり
 かくて再び常縁の 徳にうるおう郡上領
 歌の真実(まこと)のふれあいに 恩讐こえて睦み合い
 戦わずして手に入りし 歌の花咲く郡上領
 げにもゆかしき和歌の徳 歌の真実の貴さよ
 歌で開けしわが郡上 歌でお城も守られて
 歌の郡上の名も高く 平和日本ともろともに
 栄えゆくこそうれしけれ 栄えゆくこそうれしけれ
〜「宗祇水」
○歌の殿様常縁公 歌でお城を取り戻し
 いよいよ光る和歌の徳 その名天下にとどろきて
 時の帝(みかど)の召しにより 公卿将軍の師ともなり
 九十四年の生涯は ひたすら励む歌の道
 宗祇法師も都から 文明二年はるばると
 あこがれ訪い篠脇の 城に学びし古今集
 励む三年(みとせ)の功なりて ついに奥義の秘伝受け
 師弟もろとも杖をひく 郡上名所の歌の遺跡(あと)
 妙見社頭にいたりては 「神のみ山の花ざかり
 桜の匂う峰」を詠み 那比神宮に詣でては
 「神も幾世か杉の杜 みやいはなれぬほととぎす」
 文明五年秋すぎて 宗祇都に帰るとき
 常縁これを見送りて 別れを惜しむ小駄良川
 桜樹(おうじゅ)の下に憩いては 名残は尽きず「紅葉(もみじば)の
 流るる竜田白雲の 花のみよしの忘るな」と
 心を込めし餞(はなむけ)の 歌の真実は今もなお
 その名もゆかし宗祇水 清き泉はこんこんと
 平和の泉とこしえに 歌の聖のいさおしと
 奏で続けるうれしさよ 讃え続けるゆかしさよ
 
<およし物語>
○およし稲荷の物語 昔の歌の文句にも
 きじも鳴かずば撃たれまい 父は長良の人柱
 ここは郡上の八幡の 霞ケ城を造る時
 お上の評定ありけるが あまた娘のある中に
 およしといえる娘あり 里の小町とうたわれて
 年は二八か二九からぬ 人にすぐれし器量よし
 ついに選ばる人柱 聞きたる親子の驚きは
 何に例えるものはなし 親子は思案にくれ果てて
 泣くばかりなる有様も お上の御用と聞くからは
 ことわるすべもなく涙 そこでおよしはけなげにも
 心を決めて殿様や お城のためや親のため
 死んで柱にならんとて 明日とは云わず今日ここに
 進んで死出の旅支度 白の綸子(りんず)の振袖に
 白の献上の帯をしめ 薄化粧なる髪かたち
 静かに立ちし姿こそ 霜におびえぬ白菊の
 神々しくも見えにける すでに覚悟の一念に
 西に向かいて手を合わせ 南無や西方弥陀如来
 後世を救わせ給えかし また父母にいとまごい
 先立つ不幸許してと あとは言葉も泣くばかり
 これが今生のお別れと 後ろ髪をばひかれつつ
 一足行っては振り返り 二足歩いて後戻り
 親子の絆切れもせず 親も泣く泣く見送りて
 どうぞ立派な最期をと 口には云えず胸の内
 ただ手を合わすばかりなり かくて時もうつるとて
 役人衆にせかれつつ およし一言父母と 
 呼ばわる声もかすかなり 空には星の影もなく
 ただ一声のほととぎす 声を残して城山の
 露と消えゆく人柱 この世の哀れととどめける
 これぞおよしのいさおしと 伝え聞いたる人々は
 神に祈りて今もなお およし稲荷の物語