〜青森県三戸郡下〜 |
青森県東部の旧南部領、八戸、三戸郡下の農村地帯で、正月になると「福俵積」「福俵」「俵転がし」と呼ばれる祝福芸人が歌ってきた祝い唄が、この《南部俵つみ唄》です。
これらの芸人は、普段は農業従事者で、正月になると2〜3人1組となって三戸郡下の家々を廻ったといいます。大黒頭巾を被り、小型の米俵の模型に紅白の綱を付けて、それを座敷で積んだり転がしたりして、お目出度い歌詞の唄を歌ったといいます。その内容は、座敷褒め、蔵褒め、厩褒め等があり、お家繁盛を祈る芸をしては、返礼として米や餅をもらっていく門付けをして廻ったようです。
館松栄喜演唱の「正調俵つみ唄」 レコード キングレコード BS 5608 |
こうした芸は、もともと地口風の唱えごとであって、節らしいものもなく七五調の言葉を述べていくものが多かったようです。
三戸では、同郡三戸町の「俵積み」の大村仁蔵がその言葉を伝えており、それに水梨末治が節をつけ、昭和31(1956)年、岩手青森芸能コンクールに出場して準優勝したといいます。また八戸市の水梨勉が覚え、NHKのど自慢大会に出場したところ、三味線の山道巧が目をつけ、《タント節》風の三味線伴奏を付け、昭和37(1962)年、八戸市で行われた「南部芸能大会」で、中村孝志の歌、山道巧の三味線で発表されたといいます。
その後、水梨勉の師匠・館松栄喜が広く歌い、レコーディングも行い、全国的に知られるようになっていきます。
リズミカルで歌いやすく、調子もいいので、人気のある南部民謡となっています。
わたくしが子どものころ買ったキングレコードの「民謡をたずねて」シリーズに、館松栄喜演唱のドーナッツ盤があります。このシリーズの民謡の録音は大体3分前後なのですが、これは5分26秒で5番までの歌詞が収められていました(伴奏は、三味線:久保正幸 尺八:米谷威和男 鳴り物:山田鶴三 山田鶴助)。
米谷威和男さんのかなり若い頃の尺八が聴けます。