<新潟県糸魚川市一の宮>
4月10〜11日

糸魚川市は新潟県でも南西で、富山県よりの海と山の町。天津神社は海に近い一の宮にあり、周辺は市民会館、図書館、歴史民俗資料館などが立ち並んでいます。ここに古くから伝わる、稚児を中心とした舞楽を奏演する春の大祭が4月に行われています。「けんか祭り」「糸魚川祭り」などと親しまれています。

このまつりは、4月10日の大祭で押上地区と寺町地区の御輿が境内を渡御します。大人数が集まり、担ぎ手だけでなくトリジ、獅子頭、錫杖を持った金棒引等、そして肩車をされた稚児も行列に加わります。舞楽については、やはり大阪四天王寺の舞楽を習得したとか、飴屋の老婆の記憶をたどって復活したものなどという口伝があります。

祭りは、4月10日の朝、8:30には押上、寺町の人々が登社。その後、海でみそぎがあるようです。10:00頃、両地区が鳥居前から境内へ行ってきます。舞台で神事を行い、青竹の先導によりそれぞれの地区の席へ移動します。《三拍子》を奏して、御輿の渡御になる。稚児が舞台に入り、押上、寺町の青竹がそれぞれの桟敷に運ばれ取り付けられると、いよいよ押し合い、もみ合いの「喧嘩(けんか)御輿」になります。押上が勝つと豊漁、寺町が勝つと豊作だそうな…。そして、両地区の代表者が舞台上で、幣を振るとお走りとなります。

舞楽は、午後から立派な石舞台で奏演されますが、昔の写真を見ると能生と同じく屋根付きの舞台でしたが、現在は屋根無しで、四方に四神を置くなど、本格的な舞楽舞台になっています。
1日目(4月10日)はとにかくきらびやかな衣装です。いわゆる「舞楽衣装」や「舞楽面」を仕立てたようです。2日目(4月11日)は神事や御輿はなく、舞楽のみの奏演になります(雨天の場合は中止)。この日の衣装や面はは古いものを使うとのこと。比較して見学すると面白いです。
(最近は、両日とも同じらしい…?)

全12演目ですが、能生白山神社舞楽とは雰囲気が違います。笛のメロディも太鼓のリズムも共通する要素はありません。なお、舞楽のあるまつりは糸魚川が4月10日、能生が4月24日で丁度2週間違います。地元では「糸魚川まつり」が晴れなら「能生まつり」は雨と云われています。これが結構当たったりします…。

都の香り高い舞楽がこうして頸城の地に伝わっているのは興味が尽きません。

演目 舞について
振鉾(えんぶ) 稚児2人の舞。鉾を持って舞う。
安摩(あま) 稚児1人の舞。能面風の面を着ける。2日目は着けない。
鶏冠(けいかん) 稚児4人の舞。花を持ち、羽根をつける。
抜頭(ばとう) 大人1人の舞。抜頭面を着けるが、2日目は古い面を着けて舞う。
破魔弓(はまゆみ) 稚児4人の舞。弓矢を持って舞う。
児納蘇利(ちごなそり) 稚児2人の舞。能面風の面を着ける。
能抜頭(のうばとう) 大人1人の舞。いわゆる抜頭面ではない面を着て舞う。
華籠(けこ) 稚児4人の舞。牡丹を供えた仏具、散花皿を持って舞う。
大納蘇利(おおなそり) 大人2人の舞。青い納曽利面を着けて舞う。
太平楽(たいへいらく) 稚児4人の舞。太刀、矢を背負い、手には鉾、後半は抜刀して舞う。
久宝楽(きゅうほうらく) 稚児2人の舞。太平楽から続いて舞われる。2人は楯を持ち直し、太刀とともに舞う。
陵王(りょうおう) 大人1人の舞。中央の陵王のスタイルである。