長野県大町市社宮本/3月15日(定日)  13:00〜14:00

長野県北部、大町市街地から南部の丘陵地の社字宮本に歴史の古い仁科神明宮があります。5m級の杉の古木に覆われた社叢は古式を感じさせる神聖な地。西方は田園地帯が広がり、雄大な北アルプス連山を望む風光明媚な地です。この神明宮は「仁科御厨(みくりや)」(伊勢の神宮の神領)鎮護の為に勧請されたといいます。その創始の年代は明らかではありません。かつては古族・仁科氏による式年造営が行われたといいます。現在の社殿は寛永13年、松本藩主松平直政が藩士池田吉久を奉行とし、大工金原周防に造らせた神明造りの最古のものといいます。社殿は本殿と中門、それを連絡する釣屋とで構成、本殿は桁行三間、梁間二間で、破風板がそのまま延びて千木となり、妻には棟持柱があるなど、伊勢神宮正殿の古法を踏まえています。古くから信仰を集め、仁科六十六郷の総社として、穂高神社、若一王子神社と共に仁科三大社の一つに数えられます。

この仁科神明宮の春の祭り、年占いの神事として、伊勢神宮の祈年祭にならって行われてきたのが、この古式作始め神事です。かつては、旧暦2月9日の祈年祭に実施していましたが、明治6年(1873)以降は3月15日となり、現在に至っています。

13:00より本殿前で神官による神事があります。そして修祓があり、神官によりお祓いが行われます。10分ほどして、中門右脇にある神楽殿でお祓いが済むと、神事が始まります。

演目は下記の通り。

1)耕人 2)小鍬持廻り 3)水揚げ 4)万鍬掻き 5)水止め 6)畦塗り  7)水揚げ 8)水止め 9)刈敷蒔き 10)土竜追い 11)万鍬掻き 12)水揚げ 13)水止め
14)苗代しめ 15)水揚げ 16)鳥追い 17)水止め 18)種量り 19)占い 20)種蒔き 21)水揚げ 22)鳥追い 23)歌上げ 24)胴上げ 25)茅投げ





神事は、神楽殿内を田んぼに見立て、坪の広さに仕切った中で行われます。二人で組になって上記のような農耕ののしぐさをパントマイムのように行います。太鼓や笛による囃子はありません。

この神事は、その年の農作業がよい出来であるようにという豊作の予祝です。なかでも稲の作柄として早生、中生、晩生のどれが良いかについて、神のお告げを神官によってうかがいます。種籾を桶に入れ、宮司がとなえごとをして、台面に打ち付けます。早生、中生、晩生と3回行い、その音のよしあしで豊凶を占うのです。

最後の「茅投げ」では、小鍬、茅(かや)、斎串(いぐし)を授けられます。参詣者は競ってこれを拾って帰宅します。小鍬はモグラ除け、茅は箸として稚蚕の掃立・管理に使い、斎串は田畑に立てると虫除けになるといわれています。
長野県内ではここ大町市仁科神明宮と、東筑摩郡筑北村刈谷沢神明宮に作始め神事が伝わっています。ともに伊勢神宮に関わる祈念祭りであり、春を呼ぶ祭りです。