〜宮崎県東臼杵郡椎葉村〜

熊本県にほど近い宮崎県の西北部に位置する椎葉村は、九州山脈に抱かれた山村です。
ここ椎葉は、かつて焼畑農業をし、狩猟を行ってきたといいます。自然〜山の神への信仰といった、まさに自然とともに生活をしてきたところであったようです。

そんな山村では豊かな民謡や芸能が数多く残されています。よく知られている民俗芸能としては、臼太鼓踊り、そして神楽、そして大変よく知られている民謡がこの《ひえつき節》です。

そもそも焼畑の稗畑から収穫した稗の穂先を、木の臼で搗いて脱穀する作業が「稗搗き」で、その時の作業唄として歌われました。

季節は冬。6人1組で稗を搗くのですが、大変リズミカルな唄になっています。地元では集落ごとに歌われているのだそうです。

一方、観光用にこの唄を広めようとして、宮崎市観光課長・大友勝美による節回しを確立、那須の大八、鶴富姫の恋物語の歌詞を作り、それが昭和28年に、照菊によるレコード吹き込みによって大ヒットしました。

これとは別に、宮ア民謡界の奈須美静(稔)による節回しがあります。
昭和13年、地元椎葉村の椎葉耕之助の節を覚えて、確立したものがあります。その後、昭和28年に奈須稔(美静)は、大矢美保子と歌ったレコードが出されます。これが「奈須節」と呼ばれるもので、伴奏に三味線、尺八に、箏が入れられます。

以上のように、《ひえつき節》は、椎葉村の無伴奏による「正調」、大友勝美〜照菊による「大友節」、奈須稔(美静)による「奈須節」があります。また同じ奈須稔には、テンポが速く、伴奏に三味線、尺八に鳴り物を加える「早調」という歌い方の吹き込みもあります。

また「正調ひえつき節」というと、「地元の節」といった意味合いからか、いわゆる「奈須節」を歌って「正調」としているテイクが多いようです。