〜茨城県潮来市〜

茨城県の南部、銚子から35キロ利根川をのぼったあたりに位置する港町・潮来は、奥州からの米の中継地として栄えたところでした。
その花柳界で歌われてきたお座敷唄が《潮来音頭》と《潮来甚句》でした。

《潮来音頭》




上の句を音頭が歌い、下の句を他の人が歌い、更に返しを付けるといった歌い方をすることから「音頭」といわれているようです。ただ最後に「ションガイー」を付けるところから「ションガイ節」とか「潮来節」と呼ばれる唄であったようです。利根川流域で「浄観節」といった同種の盆踊り唄があるといいますし、「越後いたこ」といった盆踊り唄が新潟県に残っていることから、この《潮来音頭》も、もともとは盆踊り唄であったようです。


《潮来甚句》




これは牛深ハイヤ節を源流とする「ハイヤ節」が元であるといいます。潮来は、奥州仙台藩から江戸へ送る米を千石船に積んで送られてきた場所であって、宮城県の騒ぎ唄である《塩釜甚句》が潮来にも持ち込まれ、潮来化したものと言われます。本来の「ハイヤ節」のような「ハイヤー」という歌い出しは失われていますが、もともとの威勢よさや、賑やかな唄ばやしがつくあたりは、「ハイヤ節」の名残は伝わっています。

これらの《潮来音頭》と《潮来甚句》はそれぞれ別に歌われることが多いのですが、続けて組唄のように演奏される場合、《潮来あやめ踊り》として演奏されます。その場合、《潮来音頭》の最後の歌詞を、
 ○さらばこれよりションガイ節(音頭)をやめて 次の甚句に移りましょ
として、返しを付けずに甚句に移ります。

また、三味線の調子は《潮来音頭》が二上りで、《潮来甚句》が本調子ですので、音頭が終わると途中で、三味線の調子を変えて続けて演奏します。

どちらも潮来ならではの雰囲気を醸し出す唄に仕上げられ、しかも個性ある音頭と甚句を続けることで、音楽的にも面白い構成となっています。