〜愛知県名古屋市〜

愛知県の県庁所在地・名古屋市は、徳川御三家の一つ・尾張藩六十二万石の城下町です。
《名古屋甚句》は、この名古屋の花柳界で歌われてきたものでした。

曲は本調子の三味線伴奏に乗って歌われます。その源流は《そうじゃおまへんか節》であるといい、《おてもやん(熊本甚句)》(熊本県)、《酒田甚句》(山形県)、《宮津節》(京都府)などと同系統の唄といえます。また《相撲甚句》に新しい歌詞をつけたものともいいます。


名古屋では明治期に、新内の岡本美根太夫が《源氏節》を編み出して、これを下座にして「源氏芝居」を興行したといいます。その時にこの《名古屋甚句》を幕間に歌ったことから、大流行したといいます。

また明治中期には、大須観音裏の福田屋の名妓・かぎが登場、美声で知られるようになり、「名古屋甚句」の「かぎ」ということで、「甚鍵」と呼ばれ、評判となり、現在の《名古屋甚句》の芸風は、この「甚鍵」の流れが定着しているということです。

いずれにしても民謡の世界以外にも、端唄・俗曲のジャンルに入れらることもあり、また《安来節》などではあんこに用いられています。また、現在は聴かれなくなりましたが、長野県飯田市では《飯田名古屋甚句》として、太棹で歌われていたといいます。

現在、民謡のレコード、CDでは、本唄の「二十五丁橋」と、名古屋弁を面白可笑しく歌う「名古屋名物」を組み合わせた歌い方が定着しています。古くは「鯉の滝昇り」の前唄から入るものが基本だったようです。また新作の歌詞も揃えられ、いろいろな組み合わせのテイクもあります。

地元・名古屋では、名妓連による「名古屋甚句保存会」もあって、《正調名古屋甚句》の唄と踊りが伝承されているといいます。