〜石川県七尾市〜

◆石崎港◆
(石川県七尾市)

石川県は能登半島も、口能登と呼ばれる七尾あたりで歌われてきた舟唄が《能登舟漕ぎ唄》です。七尾市古い港町で、8月の奉燈祭で広く知られた石崎や穴水町あたりの内浦の辺で歌われてきました。また、この内浦では同様の唄がいくつか歌われていたようです。

このあたりでは、商人たちが陸路を使わず小舟を仕立てて、夫が船を漕ぎ、褄が品物を売ったといいます。この船を漕ぐときに歌われていたものといわれます。

朗々と歌われるメロディは大変美しいもので、尺八伴奏の竹物の民謡としてはよく知られた唄です。元々は、能登の盆踊り唄《青田もどき》であるとも、「木遣り唄」であったともいいます。そうした類の唄が、舟漕ぎという単調な場面で歌われるようになったのでしょうか。

歌詞の詞型は七七七五調とは限らず、自由な感じです。

よく知られた《能登舟漕ぎ唄》は、地元・七尾の詩吟の師匠、前浜新太郎が歌ったものが《舟漕ぎ唄》で、昭和37年に放送され、やがて《七尾艪漕ぎ唄》と改名されたといいます。そして昭和42年に、北陸民謡界の大御所・中村晴悦が《能登舟漕ぎ唄》の名で歌い始めて、広まっていったそうです。

またこれとは別に、石崎で中西孫左衛門が歌っていたものを《石崎舟漕ぎ唄》と呼んでいましたが、こちらは《正調能登舟漕ぎ唄》として呼ばれています。メロディは大体似た感じではありますが、出だしの「アー」がなかったり、「サイカ」といったリフレインが挿入されるなど、微妙なちがいがあります。

能登の海を目の当たりにして、このメロディを口ずさむと、能登の暮らしぶりを思い浮かんでくるようです。舟唄の名曲の1つだと思います。