〜富山県魚津市〜

富山県にはリズミカルな面白い唄が残されています。
県の東部、蜃気楼で知られた魚津市には《せり込み蝶六》という踊り唄が残されています。

◆せり込み蝶六踊り(富山県民謡民舞まつり)◆

伝説では六百年ほど前、浄土真宗の念仏踊りとして発生したものといい、極楽蝶が舞うかのようである踊りから「蝶六」と付けられたといいます。実際のところ、「せり込み」は「口速や」の意味、「蝶六」は「ちょろける」といった意味のようで、願人坊主の歌う「ちょぼくれ」が訛ったものかも知れません。

実際の踊りや演奏を見たことがないので詳しく分からないのですが、現在演奏される形式は、いくつかの唄を組み合わせているようです。また「せり込み蝶六」というネーミングも「せり込み」+「蝶六」であって、命名は町田嘉章だったようです。

前半の部分は、北陸によく見られる「ちょんがり節」です。この新川郡一帯ではこの「ちょんがり節」を「ハネソ(羽根曽)」と言い、これが主流の盆踊り唄であるそうです。また「ハネソ」とは鳥取県あたりの「盆踊り唄」であったといいます。
そして後半の「おらがサーヨー…」の部分が、越後の瞽女唄として流行ってきた「古代神」=「新保広大寺」です。

こうした構成の歌い方は滑川の《新川古代神》も同じです。 レコードやCDなどの演奏では収録されていませんが、《せり込み蝶六》の「チョンガリ」入りバージョンは、《新川古代神》とよく似ています。

また、「ちょんがり」+「古代神」というパターンだけでなくて、「熨斗川崎」「流し川崎」が入ったり、「大道音頭」「盆踊り音頭」「舞台音頭」等、様々な形の盆踊りや流し踊り、そして舞台用の唄としての構成が組まれているようです。


詩の内容は、長編を語る「口説」です。浄土真宗の盛んな土地柄だけに仏教色の濃いものが多いのも特徴と言えそうです。もっともよく歌われる<二十八日口説>は、浄土真宗の和讃からの引用といい、一向宗カラーがよく出ています。

演奏は三味線、太鼓といった鳴り物、そして胡弓が入ります。延々と語られますが、よく耳にするのは<二十八日口説>が多いようです。