〜長野県飯田市下栗〜
独特な景観の下栗集落

長野県飯田市、旧上村・下栗は山また山に囲まれた遠山谷でもさらに奥まった場所です。上村の中心地・上町から細くくねくねとした道をひたすら登ります。するとパッと南アルプスが目に飛び込んできますが、まだ集落は見えてきません。やがて山の斜面に貼り付くように点在する家並み。ここ下栗は、本当に高い場所です。本当に高い村。日本中で一番高いのではないか…と思わせる場所です。山間の集落というよりは山岳地帯といった景観です。

ここには、古くからの生活習慣が残され、急傾斜の地には、土が落ちないように下から上へと耕すという畑で、そこには下栗独特の野菜が作られているといいます。また冬の霜月祭や夏のかけ踊りといった民俗芸能、そして貴重な民謡の数々が伝承されてきました。


中でも結婚式での唄が注目されます。ここ下栗では独特な民謡によって進められてきました。また、流行歌も保存されていました。

〜婚礼の唄〜
《高砂》
 
謡曲にも同名の曲がありますが、目出度い唄。盃ごとに一番、二番、三番と歌われます。
一番は、儀式の進行をつとめる「仲座」が、<引き取り渡しの盃>のときに歌います。二番は、花嫁と親に対し、仲人が<親子盃>のときに歌います。三番は、花嫁と親類に対し、「仲座」と一般の人々が<親類盃>のときに歌います。


《盞替り唄》《玉の院の謡》《伊勢音頭》 
仲人や仲座が酌をしながら、祝う唄を数々歌います。

《目出度》《叶のた》《盞替り》 
これらは参会者によって歌われる祝いの唄
。盞を替えるとは、盃を大きくしていくと言う意味で、末広がりを表します

《千秋楽の謡》 
千秋楽は文字通り、酒盛りの最後に歌われるもの。

もちろんこのような唄を歌いながらの結婚式は現在では考えられませんが、唄を残そうということから、地元・下栗でこれらの唄をCDに収録し、また結婚式の進め方を冊子にまとめられました。