<長野県下伊那郡阿南町新野>
諏訪神社〜伊豆神社/1月13・14・15日

新野は、長野県下伊那郡阿南町。峠を越えれば愛知県豊根村で、長野県でも南端の場所です。 

新野の雪祭は、夏の盆踊りとともに民俗学研究では知らない人のないまつり。折口信夫博士が紹介したことで知られています。
このまつりの、芸能の分類は「田楽」。雪祭とは折口博士の命名と言われており、地元では「二善寺の御神事」とか「田楽祭」などと呼ばれていたそうです。

毎年1月14日の午後から翌15日にかけて伊豆神社で行われる部分がよく知られていますが、実際は1月1日の「門開きの式」に始まり、いくつかの行事が続くといいます。現在は、13日の「お下り」で、摂社・諏訪神社例祭、14日の「お上り」から伊豆神社の例祭の部分を主にさしています。
まつりを行う人々は、神職の他に、内輪衆、上手衆といった集団です。また氏子の中から「平(ひら)」、奇数年齢の少年の「後立(ごだつ)」、奇数年齢の少女の「市子」といった役割があります。

中心となる14日の前日の13日は、諏訪神社まで「お下り」をし、「お滝入り」といった禊ぎをして、諏訪神社で役を決め準備をします。
そして14日の当日は、夕刻に諏訪神社を「お上り」の行列出ます。途中、笛と太鼓で囃しながら新野の町中を進み、伊豆神社へ向かいます。

伊豆神社ではまつりの準備も進み、先回りしていた鬼役の3人の迎えで、行列は境内に到着します。この時、やはり先回りしていた人たちで、神楽殿で「ササラ舞」が行われています。

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その後、まず「神楽殿の儀」。「ササラ舞」から「順(ずん)の舞」まで、まつりに関わる人たちが舞います。

その後、庭では消防団を中心にして、大たいまつを立てる行事があります。
次に「本殿の儀」になりますが、それにさきだって「伽藍神のまつり」があります。社殿のうしろの「伽藍神」とは、伊豆権現鎮座以前からおられるという地元の神様のことで、ここで「宣明」「順の舞」を舞い、するとようやく本殿の扉が開き、修祓式が行われます。

その後、御参宮、代参りが庭で行われてから本殿で、「中啓の舞」等が繰り広げられます。
その時に、松明の点火の準備が行われます。そして、本殿の「順の舞」が終わると、いよいよ点火です。神々の面が納められている「庁屋」の前では、消防団により「乱声(らんじょう)」が行われ、神のお出ましをうながします。
そして燈明の火を載せた「宝船」を三三九度に操って、綱を伝って点火します。

これからいよいよ「庭の儀」、夜田楽の始まりです。笹を持って庭開きをすると、最初の神「サイホウ」が飛び出します。
以下、「鎮めと獅子」まで延々と芸能が繰り広げられます。

そして夜も明けきって「鎮めと獅子」が終わると、最後の「鍛冶」。これはその場でくじで役が決まり、アドリブたっぷりの楽しい演目が行われます。そして同時に「田遊び」が大松明前でひっそりと行われます。

こうして15時間以上もかかるまつりが、15日の午前9:00から10:00位の間の時間に終わります。午前1:00過ぎの「サイホウ」や「競馬」といった人気の舞の頃は、境内も人がいっぱいになりますが、だんだん人も少なくなり、最後の「鍛冶」「田遊び」の頃は、見物人も少なくなります。本当に静かに終わります。



わたくしがはじめて新野を訪ねたのが大学4年生の時。それ以来、成人の日の前日という行きやすさもあって、10年以上通っています。
ところが
2000年からは、成人の日がハッピーマンデーという意味のない祭日になってしまいました。が、この「雪祭」は1月1日の大正月から15日の小正月にかけての正月儀礼であるので、1月14〜15日のまつりの意味があるので、新野ではこの日程を守り、学校も休みになるそうです。

このまつりは、屋外の行事も多く、とにかく「眠い、寒い、煙い」まつりですが、どうしても足を運びたくなるのです。体力のある限り、おじゃましたいものです。


 
次第 主な行事・演目 場所 およその時刻
    お上り 諏訪神社 16:00
神楽殿の儀 ササラ舞 伊豆神社神楽殿 17:00〜21:00
論舞
万歳楽
宣命
順の舞
(庭の行事) 祝儀締め松明立て 21:00〜
本殿の儀 修祓式 伊豆神社本殿 23:00〜24:00
伽藍神の祭り 伽藍様
万歳楽 伊豆神社拝殿
御参宮・代参り
中啓の舞(仏の舞) 伊豆神社拝殿
宣命
順の舞
庭の儀 乱声(らんじょう) 庁屋 0:30〜1:00
松明点火(お船渡し) 1:00〜
庭開き
サイホウ 1:00〜2:30
モドキ 2:30〜3:30
競馬 3:30〜4:00
お牛 4:00〜4:30
4:30〜5:30
松影
正直切 5:30〜6:00
海道下り 6:00〜6:30
神婆 6:30〜7:00
天狗(鬼様) 7:00〜7:30
八幡と駒 7:30〜8:00
鎮めと獅子 8:00〜8:30
鍛冶 8:30〜
田遊び 9:00〜9:30
                              参考:桜井弘人「新野の雪祭について−サイホウを中心として−」