「ゴッタン」という楽器をご存じでしょうか。

◆マイ・ゴッタン◆



「箱三線(はこさんせん)」とか「板三線(いたさんせん)」とも呼ばれる、南九州に伝わる民俗楽器です。形は三味線を少し小さめにしたようなもので、主に杉を材料としています。見ての通り、三味線で猫や犬の革を貼るところを、ゴッタンではすべて木で覆います。また三味線特有の「サワリ」もありません。


演奏は、撥を使わずに指で弾きます。旧薩摩藩では、一向宗(浄土真宗)を禁制としたために、念仏がわりに歌う唄の伴奏楽器として、広く民衆に愛好されてきたものだそうです。



このゴッタンのルーツはナゾでした。猫革や犬革の代わりにしたという見方もできそうですが、鹿児島や宮崎あたりでも、いわゆる三味線の伝統があって、ゴッタンが三味線の代用品とは考えにくいようでした。


宮崎県の鳥集忠男氏によると、中国南部の照葉樹林帯の少数民族の楽器に形や音色の似ている三弦の琵琶があり、これは「古弾(グータン)」と呼ばれているのだそうです。この中国の三弦琵琶がルーツと考えれば、ゴッタンが三味線の代用品ではなく別の楽器とも考えられます。

また、忘れられないのがゴッタン奏者・荒武タミ女史。盲目の奏者で、「薩摩瞽女」の最後の方といえましょうか。昭和53年に国立劇場で演奏されて、広く知られるところとなりました。5本指で弾く《三下り》、しみじみと聴かせる《荷方節》は「念仏唄」。こんな芸は、もう聴くことができないのでしょうか。


今ではネットでも購入できる時代になりました。