<新潟県糸魚川市根知山寺>
8月31日〜9月1日

根知山寺とは、糸魚川から松本へ向かう、塩の道と呼ばれた「千国街道」から、雨飾山へ向かう根知谷にある集落です。現在は国道148号線を長野県方面に向かい、根小屋から左折、根知川に沿って進むと、左の対岸に山寺地区があります。「おててこの里」の看板が目印になります。

このまつりは、「延年」と言われるようになりましたが、地元では「おててこ舞」の名で知られています。大きく分けて、8月31日の「宵祭」と9月1日の「本祭」に分けられます。

<宵祭>
日吉神社で行われます。夜の8:30に拝殿で神事が行われ、9:00位から芸能になります。こちらはいわゆる神楽で、この地方では「太夫舞」と呼ばれています。ここらでは神職の方を「太夫さん(たゆうさん、たいさん)」と言います。笛のメロディや太鼓のリズムも、上越地方の「太夫舞」や長野県北部の「太々神楽」などと似ています。

その後、深夜まで盆踊りが踊られます。曲は《ヨーホイ節》と《甚句》の2曲。神社境内の舞台の回りで楽しそうに踊られます。
演目 舞について
悪魔払い 大人1人の舞。獅子舞である。
さんばの舞 大人1人の舞。いわゆる「三番叟」である。
とびらの舞 大人1人の舞。幣で舞ってから、後半はとびらを取るしぐさ、すなわち天の岩戸開きである。
てんとの舞 稚児1人の舞。天冠を被り、扇を持って舞う。本祭の「花の舞」と似た、稚児舞楽のようである。
狩護 青年2人の舞。弓を持って舞う。
魔法切り 青年2人の舞。最初幣を持ち、後半刀を持って舞う。
えまき 大人1人の舞。三方を持ち、紙片を蒔く。2番あとの鯛釣りの餌を蒔くから「えまき」というようである。
盆の舞 大人1人の舞。両手に盆を持ち、アクロバティックな動きを見せる人気の舞。
鯛釣り舞 大人1人の舞。いわゆるエビスの舞で、釣り竿と扇を持って舞い、最後には鯛を釣り上げる。

<本祭>
9月1日の朝10:00から日吉神社で神事があります。直会などを済ませて約2時間後、宮司と参拝者は下の観音堂に移ります。一方、山寺地区入口にある金蔵院には行道の準備が始まります。また、庫裏では化粧や飾り付けが行われます。こうして本祭は、金蔵院から日吉神社までの行道があります。行道は、午後1:00頃、金蔵院参道で《くるい》からスタート。一舞の後、金棒引き(錫杖のこと)、法螺貝、露払い、獅子、鳥面、幟、稚児、楽人、笛、太鼓、狂拍子、踊大将、踊児、飾稚児、世話役と続きます。

途中の観音堂では、日吉神社から下ってきた宮司により、神事があり、観音堂内にある2基の御輿に神様を乗せて、《おいで》の楽で、再び行道がスタートします。ここらは、いわゆる「神仏混淆」の時代の様子が大変よく分かります。

やがて日吉神社前まで行道が続きます。神社の鳥居に来ると、再び《くるい》が舞われ、行道は終了。御輿は石段を登って境内へ。楽人や踊り手は楽屋へと入ります。その後、境内の行道は、けんか神輿のようなにぎやかさになるのです。これは天津神社などと同じです。

そして、いよいよ《おててこ舞》の始まりです。演目は下の通りですが、《おててこ舞》は風流の小歌踊り、《花の舞》《鉾の舞》は稚児舞楽、その他は神楽のようです。多種多様な芸能が集まり、演じられるところから「延年」と学者が呼んだものでしょう。ですが、日本の芸能のあり方をよく示したものだと思います。


演目 舞について
くるいの舞 子供2人の舞。金蔵院参道、日吉神社鳥居下と舞台の3回舞われる。太鼓を打ちながら舞う。
おててこ舞   踊大将(青年4人)と子供4人の8人の舞。《露の踊》《若衆踊》《扇車》《四節踊》《三国踊》《百六》がある。
鏡の舞 子供2人の舞。4〜5歳の子供で、手には鏡を持つ。終わると「稚児祝い」として“ご褒美”が投げ込まれる。
花の舞 稚児2人の舞。盆を持ち、切紙を蒔く。
弓の舞 少年2人の舞。弓矢を持って舞う。
鉾の舞 稚児4人の舞。鉾を持って舞う。
種蒔き 青年2人の舞。とっつぁとかかさによる農作業の所作の舞。
しめの舞 大人 1人の舞。手に小さな注連縄(シメ)を持って舞う。素戔嗚乎尊(すさのおのみこと)であるという。
万才の舞 壮年2人の舞。太夫と才蔵によるもので、いわゆる神楽芸の一つだろう。
獅子舞 大人2人。獅子1人、才蔵1人のからみによるものである。

地元・根知山寺にお住まいの としおさんのページ には、地元ならではの写真があります。