〜岐阜県郡上市白鳥町〜

郡上市白鳥町に伝わる「白鳥おどり」は、7〜8月を中心に、町内の各地区を移動しながら、踊られます。特に盆の8月13、14、15日の3日間は徹夜おどりとなります。また、神社境内の板張りの拝殿で、下駄を鳴らしながら踊る拝殿踊というスタイルも残されており、これに対して町踊りなどとも呼ばれています。

曲は、《源助さん》《シッチョイ》《八ツ坂》《猫の子》《神代》《老坂》《世栄》の7曲。それぞれ特色のある唄です。特徴のある《八ツ坂》《神代》《老坂》《世栄》の曲名は、昭和22年に保存会で命名されたものだそうです。また拝殿踊などで踊られた《さのさ》も最後に踊られることがあります。


《源助さん》 
 白鳥おどりの7曲の中では比較的新しいものであるといいます。七七七五調の歌詞で歌われ、御座敷唄であったようです。愛知、岐阜、福井あたりまで歌われているそうです。郡上郡一帯でも歌われていましたが、盆踊りとしては、白鳥町と高鷲村のみで踊られており、郡上八幡では禁止され、現在では踊られていないのだそうです。内容は、美男子・源助とお小夜との恋物語を歌っているものです。踊りの振りは、割合単純で、初心者向き!?また郡上おどりのヤッチクに似ています。

《シッチョイ》
 白山を中心に、福井・奥越から岐阜では白鳥で歌われているもの。七七調を延々と繰り返していく口説形式であり、お寺づくしの歌詞から「おまむ小源次」の恋物語の口説がよく歌われています。

《八ツ坂》
 もとは石搗きの作業の唄であったとも、女工達の糸引きの唄であったともいいます。やはり福井・奥越から岐阜では白鳥から武儀郡板取村まで歌われているもので、もとは「ヤッサカ」といったものを、昭和22年に保存会が「八ツ坂」という曲名にしたといいます。やはり七七調を延々と繰り返していく口説形式であり、はじめに「炭焼き口説」から始まって、「宝暦郡上義民伝」が歌われます。郡上おどりの《ヤッチク》と似た感じです。

《猫の子》
 これは福井・石川でよく歌われている盆踊り唄ですが、郡上付近でも何か所かで歌われているようです。郡上おどりにも残されています。石徹白では作業唄として残っているといい、即興性のある唄です。振りは猫が鞠をすくい取るような感じのかわいらしいものです。信州・安曇あたりから新潟・糸魚川あたりの盆踊り唄にも似た感じの唄があるような気がします。

《神代》
  「ドッコイサ」という唄ばやしが特徴のこの唄は、田植唄のような労作唄が踊り唄になったものといいます。同系の唄は白山山麓や郡上一円に歌われているといいます。この踊りは、隣の踊り手の肩に手を乗せる振りがあり、日本の民踊には珍しいものです。保存会では、この唄は古くから伝承されているものということで、神代(かみよ)=じんだいというネーミングにしたとか。踊りは、ターンが多く、レベルの高い振りです。覚えるまでは、すぐ隣の人とぶつかってしまいます。

《老坂》
 これも白山山麓ではよく聴くもので、七七調を延々と繰り返していく「口説」形式です。はじめに「花づくし口説」から始まって、平井権八口説などの物語が歌われます。もとは「アラヨーイサッサ」であったのが、「アラヨッサカサッサ」さらに「アラヨイサカサッサ」と訛り、曲名は「老坂(おいさか)」という字を保存会が当てました。若い人たちは、下駄を鳴らしながら、跳びはねて駆け抜けるように踊ります。

《世栄》
 これも白山山麓ではよく聴くもので、七七調を延々と繰り返していく口説形式です。内容は心中話を題材にした歌詞が歌われています。唄ばやしは、現行では「ハドッコイドッコイドッコイサー ドッコイサーノドッコイショ」でしたが、本来は「ハエッサエッサエッサッサーエッサッサーノドッコイショ」でした。同系統の唄は、近隣にもあるようです。踊りは、やはり手を組んでの踊りであったといいますが、現在はステップの多いもので、ほとんど走り抜けるように踊られます。テンポも実際の踊りでは大変アップします。唄の途中で「ここらあたりで調子を速め…」という文句が入ると更に倍速以上のテンポになります。若い人たちは、この曲でも下駄を鳴らしながら、跳びはねて駆け抜けるように踊ります。《世栄》も保存会のネーミングです。踊りの特徴として、2拍目、4拍目といったいわゆる弱拍に下駄を踏むので、ビートがかなり躍動感あふれる雰囲気になります。

 《源助さん》と《猫の子》以外は、いわゆる口説の歌詞で、物語を延々と語っていくタイプです。心中物や郡上一揆の物語等が歌われています。実際に踊ってみると、下駄を鳴らしながらのステップが多く、自然な打楽器のようでした。また、《世栄》はCDなどで聴くよりもずっとテンポが速く、足がもつれてしまいました。
 よく、八幡町の郡上おどりと比較されますが、全般に白鳥の方がテンポが速く、踊りも走ったり、ステップが多かったりして、やや激しいかな、といった印象です。

◆徹夜おどりの3日間には「おどり免許」がもらえます
白鳥踊りや奥美濃民謡集などのCD、白鳥おどりの三味線譜トなどは、地元白鳥町の上田楽器店から買えます。